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高校入試にも広がるか? ネット出願の大研究(1)

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高校入試にも広がるか? ネット出願の大研究(1)

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2017.06.10 
tags:ネット出願, ネット出願 佐野日大, ネット出願 國学院栃木, ネット出願 群馬, 近大 エコ出願, 近大 入試改革

志願者数4年連続日本一に輝いた近畿大学。いまその改革は受験産業界から熱いまなざしが注がれている。

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 大学入試では主流になりつつある「ネット出願」。出願はインターネット経由に一本化する動きもある。そうした中、栃木県の佐野日大高校や國学院栃木高校は昨年度から「ネット出願」を導入した。群馬県内で現時点で「ネット出願」を表明している高校はないが、全国的には広がりを見せている。「ネット出願」の今を追った。

 

■入試改革をけん引する近畿大学
 今や「大学改革」の旗手といえば、間違いなく近畿大学(大阪府東大阪市)である。
 入学式にOBのつんく♂が登場したり、「近大マグロ」をブランドとして前面に打ち出したり、話題性に事欠かない。しかし、メディアに登場する派手なニュースだけでなく、近畿大学は着実に入試の仕組みを変え、新しい入試のあり方を模索してきた。その地道な改革が実を結び、今年の志願者数は実に14万6896人にのぼった。4年連続で志願者数日本一だ。本部が首都圏にない地方私大であることを考えれば衝撃的なニュースだ。

 2007年時点での志願者数が6万人台(9位)。少子化時代にあって、志願者数を減らす大学が多い中、この伸びは驚異的だ。この10年間で志願者数を倍以上に伸ばしたことになる。前年比でみても志願者を22.5%も上積みした。

 

いくぞ近大

【写真】受験生専用サイト「いくぞ! 近大」


 東洋経済オンラインが6月9日に配信した「改革力に優れている大学103校ランキング」でも、その改革力で近畿大学は1位に選ばれた。
 この調査は、全国の2,000校の進学校の進路指導教諭による評価を基に「大学通信社」が作成した。5校連記で「改革力が高い大学」をあげてもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント、以下3、2、1ポイントを割り当てて、合計を集計し、ポイントの高い順に並べたものだ。
 現場の高校の先生の目にも近畿大学の改革は確実に伝わっている。いまや同大は名実ともに入試改革をけん引している存在といえる。


■近大はネット出願のパイオニア
 そして、「近大改革」の一つとも言われているのが、「インターネット出願」だ。同大はネット出願のパイオニアでもある。
 近大のネット出願の歴史は長い。2008年からインターネットを利用した出願方式を導入した。近大のネット出願の流れを大きく変えたのが、2013年度入試だ。インターネット出願をした受験生には、受験料を割り引く「近大エコ出願」を導入した。 

 ちなみに「エコ」には二つの「エコ」の意味が込められている。割引が適用され、「エコノミーであること」と、使用する紙の量を減らせて「エコロジーであること」だ。この「エコ出願」は同大の登録商標でもある。
 エコ出願を導入した結果、ネットでの出願率が70%に激増した。この結果を受け、翌14年度からは日本の大学では初めてインターネット出願の完全移行に踏み切った。


 近大の成功もあって、ネット出願は大学受験界では急速に広がりを見せた。2017年度入試には過半数の大学に導入された。
「2017年入試『インターネット出願』実施状況調査」(旺文社 教育情報センター調べ)によると、ネット出願の導入ついて「既に導入済み」あるいは「新規導入を決定(または予定)」と答えた私立大学は約55%だった。(私立533大学/回収率=91.2%)。
 2016年に実施された同調査での約45%(521大学の同時期集計)から10%増加しており、ネット出願は確実に広がりつつあることが分かる。紙からの完全移行は今後も進むことが予想されている。
 2017年度入試からは慶應義塾大学、早稲田大学、立教大学などが揃ってネット出願をスタートさせた。私立大学に対して遅れをとっている国公立大学も含め、ネット出願導入の流れは向こう数年は続くとみられている。


■ネット出願のメリット
 受験生にとってのネット出願のメリットは、「願書取り寄せなどの手間がない手軽さ」「手書きしなくてよい」「記入漏れやミスが防げる」「パソコンやスマホから簡単にできる」「締切日まで、いつでもどこでも出願できる」などが挙げられる。
さらには受験料のカード決済やネット出願割引、併願割引などを導入している大学もある。支払いがネットで完結するのは確かに便利だ。
 生まれた時からインターネット環境の整備された世代からすれば、ネットショッピングくらいの手軽さで出願できる。手続きの煩雑さが減る分、勉強に割り当てられる時間を増やすことも可能だ。
 一方、運営する側の大学にとってもネット出願のメリットは多い。印刷コストの削減にもつながるし、事務にさかれる労力も減らせ、人件費を節減できる。出願の手軽さから志願者増につながることも期待できるという意見もある。

 システムの開発や運用は商社系のシンクタンクが請け負っているケースが多い。したがって、一からシステムを立ち上げる必要はない。サーバーの保守管理も商社系のシンクタンクが一手に引き受けるため、セキュリティー面でのリスクも少ない。

 導入のハードルが下がる中で、ネット出願の波は高校受験界にも拡大の兆しをみせている。(つづく)

(編集部=峯岸武司)

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