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【特集】定員減の時代に(1)02世代の憂鬱

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【特集】定員減の時代に(1)02世代の憂鬱

高校入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2017.06.21 
tags:群馬県教育委員会, 群馬 公立 入試, 群馬 公立 定員, 群馬 公立 定員削減, 群馬 公立 高校再編

2002年生まれの世代は日本の教育再生のうねりの先端に立たされている。

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 現在の中3は2002年の生まれだ。奇しくも生まれた年に「ゆとり教育」がスタートし、彼らが小学校に入学した頃から、OECDの学習到達度調査の結果を受けて、ゆとり教育の見直しが行われた。学習指導要領の改定が実施されたのは、小学入学直後。「脱ゆとり」教育のスタートと軌を一にする。そして、大学入試でも大きな変革が待ち構えている。日本の教育改革の「実施第一世代」にあたる02世代。迎える高校入試でもそのうねりに巻き込まれる。
 
■定員400減の衝撃 
 「志望校、変えようかな」
 伊勢崎市内のある中学3年生は、今回の定員減のニュースを知って、ふとこう漏らした。
 志望校はマエタカ。成績的には模擬テストの成績であと一歩。これからの努力次第で、というところだが、40名の定員減を知って、弱気になった。
 今の中3は大学入試でも、センター試験が廃止され、「大学入学共通テスト」(仮称)が初めて導入される予定だ。まさに日本の教育改革のうねりの影響を直に受ける世代といえる。
 
 公立高校での400人の定員削減のニュースは教育関係者、受験生に驚きをもって受け止められた。
 数字自体を分析すると、今回の県教委の定員削減は人口減にそった妥当な措置といえる。「平成28年度 学校基本統計速報」(群馬県)によれば、現・高1の人口が19,159人。これに対して、現・中3は18,549人だ。人口減少率は前年に対して3.18%。公立高校(市立は除く)の定員は現・高1の12,240人に対して、現・中3は11,840人。400人削減されたが、こちらの減少率も3.27%で同水準だ。人口減少にそって定員も削減されたといえる。人口に対する県立高校の許容率(定員÷人口)も共に約64%と変わらない。(グラフ)
■世代人口の推移と公立定員

定員減 総数グラフ

 世代人口公立(県立)定員総数許容率
現・高119,15912,24063.9
現・中318,54911,84063.8
前年比96.896.7 
人口減少率3.183.27 
 
  今回の削減が衝撃をもって受け止められたのは、400人の定員減の数字の大きさももちろんだが、その削減が「人気校」に集中している点だ。
 前高・前女・高高・高女の定員削減率は前年比12.5%、桐高・桐女では20%、館高・館女は16.7%だ。全県で見た場合、400減は3~4%程度の削減率だが、削減の対象になった学校では非常にインパクトのある削られ方だ。

 少子化の進行に伴い、教育水準の維持・向上のため定員が削減されることはやむを得ないとしながらも、「一度に400名も減らすというのはあまりにも衝撃的だ」とナカジマ学習塾(みどり市笠懸町)の中島純子塾長は困惑する。
 大規模な定員削減は、その高校だけの問題にとどまらない。「(人気のある)進学校の定員を減らせば、結果的に実業高校や私立高校に流れる生徒も多くなるだろう」と中島塾長は予測する。

 同様のことを別の塾関係者も口にする。
 「子どもの人数を考慮して、定員削減を決めたはずだから、何とか帳尻はあうのかな」という希望的観測もあるが、「たとえば前高・前女の定員が減ることで、前南や前東の競争率にも影響が及び、さらに…といった状態になる可能性がある」。こう指摘するのは群馬学習塾協同組合の専務理事を務めるルーモ学習塾(前橋市)の糸井恵子塾長だ。
 
■懸念されるシングルマザー家庭への影響
 別の視点から、今回の定員削減のニュースを受け止めた塾関係者もいる。「母子家庭への影響を心配しますね」。匿名を条件で取材にこう応じてくれた。

 ひとり親世帯は年々増加傾向にある。育児応援サイトの「育児ログ」のデータによると両親がそろっている標準世帯収入が707万円に対して、ひとり親世帯はぐっと下がる。同じひとり親世帯でも、父子世帯と母子世帯とでは大きな断層がある。シングルマザーの家庭は経済的に厳しい状況に置かれている。おのずとかけられる教育費にも差が出てくる。前出の塾関係者は「こういう家庭は公立志向が強い」と話す。
 
 100万未満100~200万200~300万300~400万400万以上平均世帯所得
母子世帯10.826.426.915.420.5291万円
父子世帯3.18.91919.349.7455万円
標準世帯1.31.82.910.183.9707万円
 ※「標準世帯」とは4人構成
 
「教え子からの伝聞ですが、母子家庭の子は少しでも不安要素があると、トップ校に受かる力があるのに、前期入試で『鉄板の公立』を受けることはよくあると聞いています」(前出の塾関係者)
 学力が高い子は「下げる」という選択がある。私立高校の特進クラスで特待を狙いに行くという道もある。問題はシングルマザーの家庭で勉強が得意でない層だ。学費が高い私立高校を単願で進学するというのは経済的な打撃があまりにも大きい。公立削減がドミノ式に倍率上昇を引き起こせば、学力面で厳しい子にとって、志望校の選択肢はさらに狭められてしまうことになる。
 
■02世代の憂鬱
 今回の削減は中学校、学習塾、家庭とあらゆる現場での混乱が予想される。前出の中島塾長は「せめて3か年計画などを導入してほしかった」と話す。「同じ人数を削減するにしても、もう少し学校を広く取り、1校当たりの削減数を緩やかにしてほしい。でも、1クラス40人単位で減らすというのは法律か何かで決まってるんですかね」と漏らす塾関係者もいる。

 2020年の大学入試改革は確実に進んでいる。大学入試が変わるということは高校入試も変わっていくということだ。今の中3世代はその「一期生」ゆえに、先行きの見えない混沌の中で、憂鬱な状況に立たされているといえる。
 学力の二極化が指摘されて久しい。少子化にあって教育制度が変更されていくことはやむを得ないにしても、その変更が最大多数に利益をもたらすものでなければならない。シングルマザーの家庭の経済問題が社会問題となっている今だからこそ、行政には多角的な視点で改革を推進していくことを求めたい。

 中島塾長は受験生にこう警鐘を鳴らす。
「今年の中3生は今、部活の真っただ中にいますが、事の重大さを理解してほしいと思います」
 
(編集部=峯岸武司)
 
 

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