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公立高校入試への提言(2) 本当に採点基準は出せないか? 他県の事例紹介 

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公立高校入試への提言(2) 本当に採点基準は出せないか? 他県の事例紹介 

高校入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2017.11.12 
tags:三重県教育委員会, 埼玉県教育委員会, 採点基準の現場を歩く, 群馬 公立 入試 採点基準, 群馬 公立 入試 正答率, 群馬県教育委員会

表現力の求められる入試ではより採点基準の公開が重要だ。

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 公立入試後、群馬県教育委員会の出す模範解答(正答)表には採点基準が掲載されない。
「群馬県の場合は、記述式の問題が多く出題され、その採点も学校別の裁量にゆだねられているから、それを公表するというのは難しいんでしょうね」とある塾関係者は話す。
 たしかに、学校別の採点基準をすべて公表するようなことになれば、混乱を招くことになるだろう。その意味で、県教委が非公表にしているのはうなづける面もある。
 しかし、一方ですべてを非公表にすることに異議を唱える声もある。「記述が多いからこそ、ある程度の基準というか採点方針は知りたい」と太田市の受験生を抱える母親はこう訴える。子どもたちが過去問を演習する際にどこがポイントになるのか、ただ正答が示されているだけでは分からないというのがその理由だ。
 「全体の採点方針というか、そういうのはあると思うんです。部分点があるとかないとか…。ここが書かれていないと減点しますよといった…。それを示した上で、あとは学校判断によると示されているのであれば、たとえ非公表でもやむを得ないと思うんです」(前出の母親)。

 


 他の県の状況はどうか。たとえば、お隣・埼玉県は模範解答と一緒に「採点の上の注意」という項目を設けて、全体の基準を公にしている。記述の問題であれば、「内容・表現に応じて部分点を認める」「『本音』『苦手』のうちいずれか一語しか使われていない場合は4点を減じ、二語とも使われていない場合は点をあたえない」といったような全体の採点方針が示されている。記述量も多く、受験生による解答の幅の大きい国語の作文問題では評価の観点も示している。
 

 三重県教育委員会も同様に採点基準を公開している。各教科の模範解答に「採点基準で処理できない場合は、各校の統一見解で採点されたい」という前提条件を付けたうえで、県教委の採点基準を詳らかに公開している(下図)。
 
三重県公立入試の採点基準表
三重県

 では、採点基準を公開する意義は何か。
「それは間違いなく、その年以降の受験者のためでしょうね」。前出の塾関係者は口を開く。「中学校の先生や学習塾の先生の指導の目安になりますし、どういう観点で○がつけられているかがオープンな方が、記述などは勉強しやすくなります。最終的に学習者の利益につながります」。

 これからの入試はより表現力に軸足を移していく。そうなれば、否応なく記述問題は増えていくだろう。記述式の問題はどうしても解答の幅が大きくなる。一定の評価基準が示されることで、受験生も対策が立てやすくなる。子どもたちの表現力・記述力を引き上げていくためにも、入学試験における基準の開示は必須ともいえる。
 
 採点基準を公開する都道府県があったり、逆に群馬県のように非公開の都道府県があったりというのが現状だ。しかし、教育の機会均等という観点からすれば、これは決して望ましい状況とはいえない。極論かもしれないが、記述型の問題の増加にしたがって、指導の質の格差を生む可能性すらある。これについては、国の一定のルールがあったほうがよい。都道府県によって、基準がまちまちにならないように調整していくことも必要だろう。この部分については文部科学省に期待したい。
 取材を進める中で、群馬県教委は採点基準の公開に及び腰だという声も聞かれた。だれが得する話なのか。受益者は学習者であることは間違いない。その意味でも、採点基準を示し、公開することを、群馬県教育委員会には強く望む。
(編集部=峯岸武司)
 
 

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