ホーム

»

学校ニュース

»

プログラム教育の未来ーDeNA創業者・南場智子さんの講演から

学校ニュース

一覧はこちら

プログラム教育の未来ーDeNA創業者・南場智子さんの講演から

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2016.05.24 
tags:DeNA, ディープラーニング, プログラミング教育, 南場智子

DeNA創業者の南場智子さん

写真を拡大

5月18日、東京ビッグサイトでIT大手のDeNa創業者の南場智子氏の講演会が行われた。南場氏は講演会の中で「プログラミング教育」の今後について語った。
 
■新しい人材像
人工知能(AI)が発達することにより将来的に約5割の職業がなくなると言われている。AIの進化は飛躍的に速くなっており、AIが自動的に学んでいく「ディープラーニング」も話題になっている。そうなると、人材という観点では、
 
①コンピュータに使われる人材
②コンピュータと競争する人材
③コンピュータにコマンド(指示)の出せる人材
 
の3つのタイプに人材は分化していくだろうと南場氏は指摘、「③の人材をいかに輩出できるかというのが国力のかなめになっていくだろう」と予測した。
 
いずれにしても、今までと仕事の範囲は変わってくることは間違いなく、どのタイプに属していくかで、収入が変わり生活のレベルも変わってくることになっていく可能性が高いそうだ。
 
■デジタルデバイドの意味が変わる?
 現在言われているデジタルデバイドも定義自体が変わってくる。南場氏によれば、ほぼ全員がIT技術を利用する世の中では「従来の〝使える〟〝使えない〟という分類ではなく〝作れる〟〝作れない〟という分類に変わっていく」という。誰かが作ったものを使うだけなのか、自らで創出できるかに大きなデバイドが生じ、作れる側に立った方が多くの自由度を手にすることができると分析した。
 
だからこそ、早期のプログラミング教育の必要性を南場氏は説く。「興味があるとかないとかではなく、ほぼ全員の子供たちがプログラム教育を受ける必要性を感じる。そういう提言も企業人として政府にも働きかけている」。
 
■DeNAの実証実験
実際、DeNAでは実証研究として、2014年秋、公立小学校3校(佐賀2校・横浜1校)でプログラミング教育の実験を行った。授業用の教材アプリはDeNAが開発。ビジュアルプログラミングと呼ばれるもので、ブロックを組み合わせることで、小学低学年でもプログラムを構築できるしくみだ。MIT(米・マサチューセッツ工科大)が開発したスクラッチというアプリに似ている。
 
このアプリを使って、小学1・2年生を対象に、DeNAのCTO(最高技術責任者)と学校の担任の先生が共同で授業を行った。まずは座学から始まり、最終的には自由創作も実施したという。佐賀県武雄市の例では合計8回の講義を組んだ。子供たちはタブレット端末を用いてプログラミングを構築。最後は子供たちによる創作作品の発表会も行ったそうだ。
 
講演会の中では、実際に行われた授業の様子を撮影したVTRも放映された。
 
授業後、行ったアンケートによると、100%の子供たちが「もっとプログラミングを学びたい」と答え、プログラミングそのものの楽しさに加え、創作中に試行錯誤できる面白さや発表して他の生徒と喜びを共有できる楽しさもアンケートには書かれていたそうだ。
 
教員側の反応も興味深い。
「最初はプログラミングと聞いて難しそうな印象を持ったが、自分でも教えられるのではないかという手ごたえを感じた。今後も実践していきたい」と回答した教諭は、異動先の学校でもプログラミング教育を実践しているという。
 
■プログラミング教育を行う意義
 プログラミング教育を通じて、「(フェースブックの)マーク・ザッカーバーグのような人材を輩出できるのはほんの一握りかもしれない。でも、少なくともプログラミングを使いこなせる人材のすそ野が広がれば、ITを通じて何ができるかという視点を持つことができるようになり、結果的に国際競争力をあげることにつながっていくのではないか」と南場氏は話す。
 
講演会の中で南場氏は「新しいうねりを創り出せるリーダー像」として、
①一つの正解をいい当てるのではなく今までにない付加価値を生み出す力
②感動や情熱を伝える力(パッション)
③文化的な背景の異なる人たちと協業できる力
の3点を挙げた。
そして、こうした人材をプログラミング教育を通じて養成していくことの必要性を力説した。
 
2020年度から小学校でのプログラミング教育の必修化を検討することが文部科学省から打ち出された。指導者の確保やどのように運用していくか、まだまだ課題は少なくない。「うまくいくはずがない」(あるプログラマー)と懐疑的な見方もあるが、南場氏が語るように「前向きに取り組む」ことの必要性を感じている実業界の声も聞く。
 
ディープラーニングの登場で、あと30年でおとずれると言われているシンギュラリティ(人工知能の能力が人の能力を超えると言われる分岐点)の足音が聞こえてきた現在、日本が国際競争力を維持していくためにもIT視点での〝教育改革〟は不可避なのかもしれない。
 
(編集部=峯岸武司)

ページのパスを確認してください

ページトップへ