【集中連載】サンタはゲームをくれなかった(1)
小学生をもつ親にとって、ゲーム機を買うべきかどうかは悩みの種だ。あまり買い与えたくないけど、友達はほとんどが持っているので、輪に入れなくなったらかわいそうだ。こんな動機で子供にゲーム機を与えた親も少なくない。
親は子供とゲームにどう向き合うべきか。
「そろそろ潮時かな」。
小3の息子にゲーム機を買ってやろうかどうか。昨年の暮れから、太田市に住む利江子さんは(43・仮名)はずっと悩んでいる。
年末、息子が「サンタさんにお願い 今年こそ3DSを持ってきてください」と書いた手紙を窓に貼っていたのを見たとき、ちょっと心が揺れた。
1年前のクリスマスにも同じような手紙を書いていた。その時は別のプレゼントを枕元に置いた。朝起きたとき、部屋の片隅で息子がシクシク泣くのを見て、心が痛んだ。
クリスマスを前に利江子さんは憂鬱だった。
「ねえ、どうする?」。夫と相談した。
「まだ早いんじゃないのか? ヤツの性格から考えて、依存症みたいになっちゃうよ」と夫。
長男にゲーム機を買い与えることで、同時に3歳の弟が「ゲームデビュー」するきっかけになってしまうのも悩んでいる理由の一つだった。
「お兄ちゃんがやっていれば、下の子も絶対に加わってくる」
結局、昨年末のクリスマスも、ゲーム機は見送った。
プレゼントを置くときに、息子の枕元に手紙が置いてあった。
手に取って読んでみると、「サンタさんへ できれば3DSでお願いします」とサンタクロースに念押しする内容だった。今年もまた違うプレゼント。プレゼントを開けたときの期待から落胆に変わる息子の姿を想像して、利江子さんは辛くなった。
「まあ、世の中、なんでも望みどおりにならないってことが分かるから、いいんじゃないの?」という夫の言葉も分かる。
利江子さんがここまで意地になっているのには理由がある。スマホだ。長男にスマホを貸してくれとせがまれ、ときおり利江子さんは息子にスマホを貸す。一度触りだしたら止まらない。最近は3歳の次男も一緒になっていじっている。ゲームを買い与えたら、歯止めが利かなくなりそうで怖い。
「家族で食事に行ったりしたときに、よく別の家庭の子供たちが会話にも加わらないでゲームを個々やっている姿を見るんですけど、ああいうの嫌なんですよね」と利江子さんは言う。
3学期に入り、息子は友達と「お泊り」の約束を頻繁にするようになった。お目当てはゲームだ。友達の家ならゲームができる。
「よその家へのお泊りは気も使うし、ゲームくらい買ってやればいいのにねと言われているようで、これまたつらい」。もういっそのこと、買ってあげればすべてが楽になる気がしてきた。(つづく)
(編集部=峯岸武司)