中学3年生の進路希望調査 群馬の公立高校倍率が「初の1倍割れ」──本当の理由はどこにあるのか
2025年12月に公表された第2回進路希望調査で、群馬県の公立高校(全日制・フレックス課程)の倍率が0.97倍となった。全体倍率が1倍を下回るのは、現行の調査方式になって以降、初めてのことだ。
この数字は、県内の教育関係者や保護者の間に少なからず波紋を広げた。「少子化の影響がついに表面化したのではないか」「公立高校離れが進んでいるのではないか」といった見方も聞かれる。
ただ、群馬県単独の数字だけで状況を判断するのは早計だ。隣接する栃木県や埼玉県では、同じ公立高校(全日制)であっても倍率は1倍を割り込んでいない。群馬県の公立高校だけがなぜ1倍を下回ったのか。その理由を探った。
■理由は「公立離れ、私立志向の高まり」だけで説明できるのか?
まず注目されたのが、私立高校への進学希望者の増加、いわゆる「公立離れ」の影響である。ある学校関係者からは、「群馬は私立高校への流出が特に多かったのではないか」という声も上がった。しかし、3県を横並びで比較すると、この見方は必ずしも数字に裏付けられていない。
私立高校への進学希望者の割合を見ると、群馬県は17.15%、栃木県は17%と、ほぼ同水準にある。さらに前年度からの変化に注目すると、私立志向の伸びは栃木県の方が大きく、群馬県は比較的緩やかな増加にとどまっている=グラフ=。それにもかかわらず、群馬県公立校(全日制)の倍率は0.97倍、栃木は1.05倍と明確な差が生じている。この食い違いは、進学志向だけでは説明がつかない。

※群馬・栃木は公立高校のみ。埼玉は国立高校含む。
(群馬・栃木・埼玉の各県教委の12月進路希望調査をもとに編集部で作成)
■鍵は「定員の置き方」にあった
倍率を大きく左右する要因は「定員」である。たとえばある高校で定員削減が行われると倍率が跳ね上がるケースがある。県によって、中学校卒業見込者に用意された「定員」の設定が異なれば、表に出る倍率は異なるはずだ。
そこでみんなの学校新聞編集部では過去3年の群馬県、栃木県、埼玉県の卒業見込者数と全日制高校(群馬県はフレックス課程含む)の定員を調査し、卒業見込者に占める全日制高校の定員の割合を算出した。全日制希望者数は各年度の12月の「進路希望調査」の数値を使った。

(群馬・栃木・埼玉の各県教委の12月進路希望調査をもとに編集部で作成)
ここで浮かび上がるのが、公立高校の「定員」に対する考え方の違いである。

群馬県では、卒業予定者総数の減少に合わせて、公立高校の定員を一定の比率になるよう調整してきた形跡が見受けられる。令和5年度から7年度にかけて卒業予定者は約900人減少しているが、卒業予定者総数に占める公立高校(全日制)定員の割合は、3年連続で約68%とほぼ変わっていない。
一方で、栃木県と埼玉県は大きく定員削減していることが分かる。
栃木県では、卒業予定者に占める公立高校の定員の割合が年々低下しており、25年度には62.5%まで下がった。3年間で1.7ポイントの減少であり、群馬県よりも明確に「定員を絞る」方向に舵を切っていることが分かる。
埼玉県に至っては、その割合は55.6%とさらに低い水準にある。卒業予定者数に対して、公立高校の定員を抑えることで、希望者が減少しても倍率は維持されやすい構造になっている。
この違いをより分かりやすくするため、仮に栃木県と埼玉県が、群馬県と同じく卒業予定者の68.7%を公立全日制定員として設定した場合を想定すると、状況は一変する。試算上の倍率は、栃木県で0.95倍、埼玉県では0.86倍となり、いずれも1倍を大きく下回る=上の表を参照=。
つまり、現在の倍率の差は各県の「定員政策の差」が生み出している面が大きい。
倍率はしばしば、高校や地域の人気を映す鏡のように語られる。しかし実際には、卒業予定者数、私立高校との役割分担、そして行政がどの程度の定員を確保するかという判断によって、大きく左右される数字だ。今回の群馬県の1倍割れは、公立高校の魅力が急速に失われた結果というよりも、人口減少に即した定員調整を続けた結果と捉える方が現実的だろう。
■定員割れは入試が「楽」だという風潮を生まないか?
受験生や保護者にとって重要なのは、「倍率が下がった」という表面的な数字だけに振り回されないことが重要だ。ある学習塾関係者は「子どもたちの学力維持を考えたら、1倍を超えた入試の方が緊張感が保ててよいのではないか。この状況が続けば、入試が『楽』だと受け止められ、3年生になってから頑張ればいいやという風潮をつくってしまう」と危惧する。
(編集部)
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