【教育コラム】意外と知らない〝評定平均〟(NEXTAGE SCHOOL 髙澤 典義)
先日、受験生をもつ友人からこのようなことを尋ねられました。
「評定って5教科なの? 9教科なの?」と。
なぜ、このような質問が生まれるのか? それは、学校の成績の付け方が周知されていないことが要因と考えられます。親がこう聞くということは、当事者である子どももわかっていないということは明らかです。
各教科の成績の付け方については、年度初めの授業でおそらくほとんどの先生がガイダンスをしています。ですから、少なくとも子どもたちはわかっている、いやわかっているかはさておき、聞いてはいるはずです。ところが、保護者には届いていない。
私が受け持った学年については、授業参観後の懇談会等では、必ず話題にしてきましたが、全体的に見るとまだ不十分なようです。
そこで、今回は受験生が気になる評定平均についてお話していきます。受験生、そして受験生をもつ保護者の方々、成績について疑問がある方、中学1年生、2年生に向けてお話をしていきます。
■大きな課題:”目隠し状態”
先ほど紹介した友人の質問のようなものがあることは、学校教育の大きな課題であると考えます。
どういうことか?
それは、見通しをもって自分の進路について考えることができておらず、その状態は”目隠し状態”と言えます。
もう少し噛み砕きます。
受験が迫る頃にならなければ、自分の進路に関わる重要なことについて理解できていないということは、これまでの学校生活を目的意識がやや低い状態で過ごしてきてしまったと言わざるを得ません。もっとも、目の前のことには全力でぶつかってきた子もいるとは思いますが、先の見通しをもっていたら、もっと違う今が待っていたかもしれません。
でも、考えてみると、これは一概に学校のアナウンス不足とも言い切れません。切羽詰まらないと理解しようとしない本能が人間にはあるのかもしれません。ともあれ、見通しを持つことは重要で、その後の選択肢の量に大きな影響をもたらします。
よって、あらためてここで私の分かる範囲でお話させていただきます。
あくまで、一般論であり、例外もあることはご理解下さい。
■評定の出し方
小学校では3段階であった評定(≒成績)は、中学生になると5段階になります。
中学校の成績評価では、通知表の国語、社会、数学、理科、英語、保健体育、技術家庭、美術、音楽の9教科の「5」~「1」の評定の合計を「内申点」と呼んでいます。
内申点の出し方は
- 1年~3年(3年は2学期まで)の9教科の5段階評定(成績)を点数化する都道府県もあれば、
- 3年の成績のみを内申点とする都道府県がある
など、住んでいる都道府県によって変わります。
例えば、3年間の学年評定(成績)を合計して点数化する都道府県の場合、9教科の評定が
1年、2年、3年全て「5」だったとしたら、
3年 × 9教科 × 評定5 = 135点
になり、内申点は、135点となります。
【画像】写真ACより
1年時の「学年成績(9教科)」+2年時の「学年成績(9教科)」+3年の「学年成績(9教科)」=内申点となります。オール5同様に、3年間の内申点が、
オール4→評定4×9教科=36×3年分=108点
オール3→評定3×9教科=27×3年分=81点
オール2→評定2×9教科=18×3年分=54点
オール1→評定1×9教科=9×3年分=27点
となり、内申点の幅は27~135点になります。
この評定の合計「内申点」は、高校入試で合否を決める材料の一つ、試験会場に入る前にすでに決まっている各自の持ち点になるのです。ある県の高校入試の合否は、「学力検査(入試1日目)」、「学校独自検査(入試2日目)」、「内申点」で決められます。ですから、評定の合計「内申点」は、高校入試の合否を分けるとても重要な要素となるのです。これは1年時、2年時の分を後で挽回していくことができないので、早めに知っておくことが大切です。
■〝評定平均〟の出し方
続いて、〝評定平均〟という指標を耳にする人も多いと思います。この指標は、その名の通り、”評定の平均値”を表したものです。平均なので、その算出方法は、全部足して、その足した数で割る、です。
例をあげてみましょう。
例えば、国語4 数学4 英語5 理科5 社会4 音楽4 美術4 保健体育3 技術家庭4 のような学年末評定(1学期~3学期、学年を通しての評定)だった場合、
(4+4+5+5+4+4+4+3+4)÷9=4.111‥
評定平均は、4.1となります。
■最後に提案
”見通しをもつことを大事にしませんか?”。
先程も述べましたが、誰もが未来の評定を上げる努力しかできません。過去の評定は変えることができないのです。
多くの子が、土壇場になって「こんなことなら1.2年時にもっと頑張っておくべきだった…」。そう考えることになるわけです。
そうならないためには、常に受験生であるという自覚のもと、1年時、2年時も全力を尽くすことです。何も受験生という自覚のもと、1年生のうちから毎日何時間も勉強しろと言っているのではありません。きちんとポイントを抑えておくことが大切だと言っているのです。
どうしたら、そうあれるか?
それは、モチベーションを上げてくれる環境にいることです。頑張りがきくように子どもたちに適切なタイミングで、適切な声掛けをおこなうことです。まだまだ未熟な子どもたち。「自覚しろ」というだけでは難しい子が多いです。子どもたちの適性、性格を見抜いて、やる気の出る声掛けをしていくことが大切です。
■まとめ
さて、今回は、意外と知らない”評定平均”についてお話をさせていただきました。
今回の友人の疑問は、この友人の疑問に留まることではなく、世間の皆さんの疑問でもあると思います。自分たちも受験を経験しているわけで、一度は自分も通った道であっても、わからなくなってしまうものです。
また、時代が違うことによる変化もあるのではないか?と推測しがちで余計にわからなくなることでしょう。受験がすべてではありません。しかし、自己実現の第一歩として、目標を達成できるように精一杯の努力をしたい、させたいものです。すべての教育的営みが、意図をもって子どもたちの”社会で生きる力”を養うものとなるようにしていきたいものです。
主宰 髙澤 典義
大学卒業後、18年にわたり公立小、中、特別支援学校において勤務。2015年から3年間在外教育施設(ソウル日本人学校)における勤務を経験。2021年教師を辞め、桐生市にNEXTAGE SCHOOLを開校。