【教育コラム】ラーニングピラミッド〜信憑性のある効率的な学習を目指して~(NEXTAGE SCHOOL 髙澤 典義)
皆様、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
さて、新年1回目の今回は、『ラーニングピラミッド~信憑性のある効率的な学習を目指して~』というテーマでお話をしていきたいと思います。
「長時間がんばって勉強しているのに、勉強内容がなかなか覚えられない」という経験はありませんか?
それは勉強の進め方が適切でないだけかもしれません。覚えたい内容を効率よく脳に定着させるには、誰かに強制されてダラダラ勉強するのではなく「ラーニングピラミッド」に沿ったスケジュールで能動的・積極的に学習することが有効です。自分から何度も学習に関わっていくことで勉強への興味も高まり、それまでなかなか覚えられなかったことも実践・経験を通して確実に脳に定着していくでしょう。
詳しく紹介していきます。
■ラーニングピラミッドとは
アメリカ国立訓練研究所の研究によると、学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。
学校の授業や会社の新人研修などでは、講義・実技・議論などさまざまな方法で学習を行いますが、学習時間が限られている状況では、より効率の良い方法での学習が、スムーズに学習内容を身につけることにつながります。いくら勉強してもなかなか成果が出ずに困っている人は、この学習方法を見直すだけで思わぬ効果が出るかもしれません。
ラーニングピラミッドを見ると、ピラミッドの下に行くほど定着率が高いことがわかります。
では、各段階の内容について詳しく見てみましょう。
① ラーニングピラミッドの段階1:講義を受ける(5%)
段階の1は、『講義を受ける』です。学校の授業やセミナーなどに出席している状態です。ただ席に座って先生の話を聞くだけだと、よほど興味のある内容でない限り授業内容のほとんどを忘れてしまうでしょう。講義内容を効率よく覚えるには、話を聞きながら意欲的にノートをとることや丁寧な予習・復習などが有効です。
② ラーニングピラミッドの段階2:読書をする(10%)
段階の2は、『読書をする』です。決められた参考書・課題図書などを読むか、学習内容に関係する書籍を自分で選んで読みます。自発的学習のために講義以外の時間を確保している点において、ただ講義に出るだけより能動的な行動と言えるでしょう。
ただし学習内容にあまり興味が持てない場合は、書籍の内容を漫然と目で追っていてもなかなか覚えられないでしょう。
③ ラーニングピラミッドの段階3:視聴覚【ビデオ、音声】(20%)
段階の3は、『視聴覚【ビデオ、音声】』です。講義への出席や読書に加えて、参考書の付録DVDや学習内容に関連したテレビ・ラジオ番組などを視聴します。単なる文字の羅列や静止画と比べて、動画・音声はより大きなインパクトを脳に与えます。ただ何となく聞き流すより、「覚えよう」という意欲を持って集中して聞くことでより身につきやすくなるでしょう。
④ ラーニングピラミッドの段階4:デモンストレーション(30%)
段階の4は、『デモンストレーション』です。実演を見ることであり、学習の場では「先生が行う実験を見る」「工場見学に行く」などの行為が該当します。実演内容によっては聴覚・嗅覚・触覚にも直接訴えかけられるので、解説文や動画よりもさらにインパクトが大きく記憶に残りやすくなります。また、わからないことがあればその場で質問して説明してもらえるメリットもあります。
⑤ ラーニングピラミッドの段階5:グループ討論(50%)
段階の5は、『グループ討論』です。グループ内で自由に意見を交換しあうディスカッションや、あらかじめ決められた順番・内容・役割に従って発言するディベートなどを行います。リアルタイムの会話で意見を交換するには、頭の中で筋道立てて考えを整理することと自分の口で意見を伝えることが必要です。そのため、ただ見るだけ・聞くだけよりもさらに能動的な関わりが必要になります。また、ディスカッション中の他者の発言から新たな知識を得ることもできます。
⑥ ラーニングピラミッドの段階6:自ら体験する(75%)
段階の6は、『自ら体験する』です。体育・美術・家庭科などの実技科目では、実際に自分の手や体を動かして感覚をつかむことが有効です。また、現場に出向いて自分で調査・研究を行うフィールドワークもこの段階に含まれます。国語・数学などのように実技のない科目や暗記科目を脳に記憶させるには、書き取り・音読・練習問題によって経験を積むことが有効です。
⑦ ラーニングピラミッドの段階7:他の人に教える(90%)
段階の7は、『他の人に教える』です。この段階には、これまでの学習の集大成とも言うべき研究発表や論文発表などが該当します。
物事を他人に教えるためには、自分でしっかりと内容を理解していなければなりません。
「他人が書いた文章を読み上げるだけ」「書籍・ネットの文章をツギハギしただけ」では自身の脳に与えるインパクトが足りず、また誰かから突っ込んだ質問をされると返答に詰まってしまうでしょう。いろいろな方法で何度も実践経験を積み、時には失敗も経験することで、より細やかに教えることができるでしょう。定着率の高いラーニングピラミッド下方の学習法ほど、より自発的・能動的な働きかけが必要です。
能動的に学習するためにはまず講義・自主学習などで十分に知識や興味を高め、その後議論・実践で理解を深めてから発表…というふうに、限られた時間を上手に使って学習スケジュールを立てましょう。
■まとめ
米国の研究機関が発表したラーニングピラミッドでは、学習方法ごとの平均学習定着率の違いが示されています。効率よく学習したいなら、やみくもに丸暗記するのではなく能動的・実践的な方法を積極的に取り入れるのが有効です。
近年多くの教育機関が取り入れている「アクティブラーニング」では、ラーニングピラミッド下部の能動的な学習方法「議論」「実践」「他人に教える」を重視したカリキュラムを組んでいます。
講義やテストを主体とした従来型カリキュラムに比べ、アクティブラーニングでは多くの生徒が意欲的・主体的に学習に取り組んでいます。アクティブラーニングはテストで点を取るための丸暗記ではなく物事の考え方やビジネスの手法、ひいては「生きる力」を身につけるのにも役立っています。
私たちNEXTAGE SCHOOLでは、このラーニングピラミッドの理論をできるだけ多く取り入れて子どもたちに学習をしてもらっています。
例えば、授業の事前と事後に子どもたちと教師でアサインメントを行なっています。アサインメントとは、”子どもたちと教師との間で結ばれた約束”です。何をどうやってどこまで勉強するのかを約束してから学習を進めます。そして、事後にその約束に対して結果がどうであったかを振り返ってもらっています。
こういった日々の取り組みによって主体的に、能動的に学び、学習内容の定着率向上を目指しています。ラーニングピラミッドの視点を理解し、日々の取り組みを工夫してみると、家庭でも、皆さんの持ち場でも活かせることがあるかもしれません。
上手くいった取り組みなどがありましたら、ぜひ教えてください。
主宰 髙澤 典義
大学卒業後、18年にわたり公立小、中、特別支援学校において勤務。2015年から3年間在外教育施設(ソウル日本人学校)における勤務を経験。2021年教師を辞め、桐生市にNEXTAGE SCHOOLを開校。