【コラム】『人生に無駄なし』(神子澤修)
私の行きつけのサロン(理美容店)でのお話です。
マスターはキリイチ(桐生第一高校)の卒業生で私の教え子です。
彼は、中3の時、調理に興味を持ち、キリイチの調理科に入学しました。
ただ、3年間調理を学んでみて「自分に調理は合わない」と判断しました。
実家でお母さんが美容室を経営されていた関係で、美容学校へ進学しました。その後、美容師の資格を取り東京で「カリスマ美容師」として活躍していました。
ところが、5年ぐらいで帰郷し、数年前に独立して自分のサロンを構え現在に至ります。
髪をカットしてもらいながら世間話を良くします。
「最近のグッドニュースは?」
「いゃー、何にもないです」
「なんかあるだろ」
「個人的な話でもいいですか?」
「ああ、何でもいいよ」
「俺、160万出してキッチンカー買ったんです」
「キッチンカー? そんなの買ってどうするの?」
「キッチンカーでスイーツを販売しようと思って」
「だってマスターは、調理が嫌でせっかく調理師免許を取ったのに、美容の世界に行ったんだろ。いまさら何?」
「先生、そうなんですけど、俺、やっぱり調理が好きみたいです。25年ぶりに実家にあった調理師免許を引っ張り出しました。今、新感覚のスィーツを試作中です」
一度は、調理の道を捨てた彼が今度は調理の道に戻るという。
「キッチンカーデビューしたら、連絡くれる?」
「もちろんです。真っ先に先生の所へ持っていきますよ」
私は、彼との会話から「人生で無駄なものは一つもない」ことを学びました。

桐生大学附属中学校 校長 神子澤 修
プロフィール
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