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【特集】定員減の時代に(3)倍率上昇でどう動くか?

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【特集】定員減の時代に(3)倍率上昇でどう動くか?

高校入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2017.06.27 
tags:うすい学園, トップ校 定員減 群馬, 定員減の時代に, 群馬 公立 定員, 群馬 公立 定員削減, 群馬県教育委員会

トップ校の定員削減で受験生はどう動くのか。うすい学園の柴崎代表に聞いた。

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 公立高校の定員削減のニュースは教育現場や受験生に衝撃をもって受け止められた。現在の中3は2002年の生まれだ。奇しくも生まれた年にゆとり教育がスタートし、彼らが小学校に入学した頃から、OECDの学習到達度調査の結果を受けてゆとり教育の見直しが行われた。学習指導要領の改定が実施されたのは小学入学直後、「脱ゆとり」教育のスタートと軌を一にする。そして、待ち構える大学入試でも大きな変革が行われる。日本の教育改革の実施第一世代にあたる02世代。迎える高校入試でもそのうねりに巻き込まれる。

 

■倍率上昇で受験生はどう動く?

 定員を削減すれば、間違いなくトップ校は底上げされる。ある進学校の校長経験者は「人口が減少してきて、1クラス分くらいは学校の学力に見合わない生徒が入学してきていたのは事実」と話す。
 仮に320人定員の学校に1.2倍の倍率にあたる384名の受験者があったケースを考えてみる。1.2倍の倍率時には64人が不合格になる計算だ。これが280人定員に同じ384人の受験者がいた場合、倍率は1.37倍に跳ね上がる。

 

定員減が行われた場合のシミュレーション(受験者数が同一のケース)

定員減 シミュレーション


 競争倍率1.2倍から1.37倍の変化は大した数字でないような印象を受ける。だが、不合格人数で見ると64人の不合格者が104名になる勘定だ。
 この数字を見て、受験生がどう動くかだ。
 不合格になる可能性が高くなるから、ボーダーライン上の受験生が敬遠して志望校を準トップ校に下げるケースも想定される。準トップ校とは高崎・前橋地区でいえば、高崎北、前橋南、前橋東などの学校群だ。
 だが、長年、高崎高校・高崎女子高校などのトップ校を指導してきたうすい学園(本部・高崎市)の柴崎龍吾代表は「トップ校を狙う層で受験校を下げる生徒は少ないんじゃないかなと思うね」と話す。大学受験を前提に考えた場合、高校によって授業カリキュラムの格差が歴然としてあるからだ。将来、難関大を目指している受験生からすれば、是が非でもタカタカやマエタカに入学したいと思う層は一定数いるはずだと見る。

   図でも明らかなように、定員が削減されれば、トップ校のレベルは上がる。これによって、「(トップ校が)より高いレベルの授業を行うと、準トップ校がよほど頑張らないとますます差が開いてしまう恐れがある」と柴崎氏は今後の群馬の「高校地図」を予測する。

 

IMG_2688

うすい学園・柴崎龍吾代表


 トップ校の定員削減は特進コースを持つ私立高校には「追い風」に映る。ある私学関係者は「高崎高校などの競争率が厳しくなった分、ぜひ私立の特進コースに目を向けてもらいたい。(卒業後の進路で)同等の結果を出せる自負はある」と意気込む。  

 柴崎代表が予想するように公立トップ校から公立準トップ校への切り替えが起こらなかったとしても、実績を持つ私立高校の特進クラスへのスライドは十分考えられる。


 本紙では、再三にわたり今回の定員減は人口減少に対する措置だけではない側面があることを指摘してきた。トップ校の再編・強化の意味合いもはらんでいる。2020年に控えた大学入試改革まで見据えた対応だとするならば、単なる「数字合わせ」だけではなく、質的な意味での変化もあるうると予測する塾関係者もいる。
 うすい学園の柴崎代表も「新大学入試に備え、問題傾向も大幅に変わる可能性はあるよね。その対策も塾として取り組まなければならない。トップ校の合格最低点も20点近く上がると仮定して従来以上に得点の底上げを行う方策をとるよう現場に指示を出している」と危機感を募らせる。

 

■受験生は自覚をもって臨もう
 制度の変更により入試の競争率が上がることで、学習塾への需要は増えると予測する向きもある。学習塾ではこれから夏期講習を迎える。その意味で、今回の制度変更は通塾を呼びかける好機でもある。
 私立高校でも、これから本格的な「オープンスクール」「学校説明会」のシーズンに突入する。今回の制度変更により、学力の高い層の取り込みが期待できる。進学実績を上げたい私学からすれば、トップ校受験層は「金の卵」だ。
 一方で、受験生を抱えた保護者の不安も渦巻く。

 

 トップ校の定員減の衝撃はあらゆる現場に波及し始めている。
 ただ一つ言えること。それは受験生一人一人が早い段階でこの状況に危機感を抱き、自分自身の納得いく「受験生活」を送ることにほかならない。本格的な受験シーズンを前に、「今年の入試は厳しくなる」という自覚をもって夏休みを迎えてもらいたい。

(編集部=峯岸武司)

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