【公立後期入試】塾の先生はこう見るー講評と分析(国・数・社)
後期入試も初日が終わり、いよいよ2日目だ。初日の教科について、太田高校・太田女子高校など地元進学校に数多くの合格実績をもつTOP進学教室の先生方に分析してもらった。
名門進学塾の講師が分析する2017年入試
■国語の講評 塾長 森部 和行先生
「出題にあたっては、文章を的確に読み取る能力や、読み取った内容に基づいて自分の考えを適切に表現する能力などについて、国語科の各領域を考慮して受検者の国語力を総合的に問うことができるように配慮した」
この内容はここ数年の群馬県教育委員会が発表した出題のねらいだが、今年も同様の出題傾向だったといえるだろう。
試験から戻ってきた子供たちの反応や実際に問題を眺めての印象で、やや平均点は上がるのではないか。問題全体を俯瞰すると、選択肢を選ぶものは比較的簡単だが、記述の割合が高く、また、よく考えられた問いも多い。記述問題は特に小説を中心に高い学力が求められている。
大問5番はかつては部首や文法の問題が定番だったが、数年前から文脈に沿って自らの言葉を使って適切に表現させる問題に変わった。知識偏重を脱却し、思考力・表現力を見たいという出題者の意思の表れとも言える。
進学校を中心に記述問題は採点基準が高い傾向もあり、例年の得点分布を分析すると80点以上の高得点者は少ない。ここが模擬テストと公立入試の違いだ。制限時間内でのしっかりした答案作成は容易ではなく、普段からの受検者の高い意識と、指導者の力量が問われるだろう。
● 設問数19問 想定平均:約55点(県教委発表)
■数学の講評 数学科 菊地 佳意先生
大問は例年の5題から6題に増えたが、問題数そのものは25問と例年並みになっている。数学は一昔前より易化傾向にあり、ここ2年間は県平均も50点台前半となっている。今年の入試も問題のレベル的には同程度であるといえる。
群馬県教育委員が発表しているとおり、問題は学校における平素の学習の成果が生かせるように配慮されている。つまり、上位校でも教科書内容がきちんと理解できていれば合格点には達するつくりとなっている。そのきちんとした理解とは、「解き方」を覚えることはもちろんだが、「なぜそうなるのか」を根本的に理解しているかどうかということだ。
その辺りの理解の深さを問う問題として、本年度も解答がなぜ導かれたのか、その導出過程を記述で問われる問題が2題ほど出題されている。これはあまり他県では見られない群馬県の特徴である。
塾・学校ともに数学教育において、指導者の側にも、問題を解かせるだけでなく、「なぜ解き方がそれでいいのか」を子どもに問いかけていく姿勢が大切であり、子どもたちにおいても「なぜそれでいいのか」を意識しながら数学に触れていくことが大切であると思われる。
● 設問数25問 想定平均:50~55点(県教委発表)
■社会の講評 社会科 沢口 知久先生
大問数は7問で例年通り。地方の抱える人口減問題や日本の農業の課題など、今日的なテーマも盛り込まれている。特に大問1の(5)は資料をただ読み取らせるだけでなく、その課題解決を自ら考えさせる形式で、知識詰め込みではなく、その活用能力まで踏み込んだ設問だといえるだろう。
全般通して、教科書レベルの基本的な内容を踏まえて作問されている。しかしながら、資料を読み取らせたり、記述させる問題が多いため、用語をただ意味も分からず暗記したり、知識の活用能力に乏しい受験生には厳しい問題だ。
子どもたちの反応と実際に問題を分析した結果、例年に比べると平均点が下がるのではないだろうか。とりわけ、大問1の(3)の問題と5の(3)高村光雲の「老猿」の問題は戸惑った受験生が多いのではないか。これらの問題は正答率が低いと予想される。2の(4)と7の(2)の記述問題は採点基準次第だろう。記述問題については16題で配点も全体の35~40%程度ある。決して少ないボリュームではない。慣れていないと大きく差がついてしまう。
採点基準については各高校の裁量により違うことが予想される。模範解答通りでなくても完全に×になるわけではない。
資料問題は与えられたものをすみずみまで読み取り、必要な情報を選択する力が求められる。語句を答えさせる問題では、基本的なレベルのものが中心だが、資料を見て答えさせる形式や文章中の空欄を補充させる形式があり、語句の深い理解がないと解答できない問題も少なくない。
これは新3年生向けの話だが、普段の学習方法として、暗記の徹底を図ることももちろん大切だが、教科書などをベースに知識の整理をしながら理解を深めることに重点を置いてほしい。
● 設問数40問 想定平均:55点前後(県教委発表)
《今回取材に協力してくださった学習塾》
●TOP進学教室(太田市)