【シリーズ】校長に聞く(第5回) 前橋育英高校 二渡諭司校長(前編)
前橋育英高校といえば、全国的な活躍を見せるサッカーや野球など、スポーツの名門校として知られています。2024年に着任した二渡諭司校長は、公立高校での長年の経験を生かしながら、新たな育英のカタチを描こうとしています。二渡校長は育英高校を私立高校ならではの絆のある「“港”のような場所」と言います。2年目を迎えた今、二渡校長に「育英の魅力」と「これからの育英高校が目指す姿」について伺いました。

【写真】前橋育英高校の二渡諭司校長(同校・校長室で)
プロフィール
二渡諭司
1963年 群馬県大泉町生まれ。青山学院大学理工学部卒業後、下仁田高校、太田東高校、桐生南高校(現・桐生清桜高校)、前橋高校で物理の教員として教鞭をとる。その後、県教委事務局、県立前橋高校の校長などを経て、2024年4月に前橋育英高校の校長に着任。
――先生は長年、公立高校で教鞭を執られ、最後は前橋高校の校長としてご退職されたと伺っています。育英高校にご着任されたのは、2024年でしたよね?
「はい、昨年の4月に赴任して、今2年目に入ったところです」
――育英高校といえば、サッカーや野球など「スポーツの名門校」として有名ですが、実際に校長として赴任されて、最初の印象はいかがでしたか?
「私もまさにそのイメージを持っていました。でも実際に来てみたら、まず女子生徒の多さに驚きました。半分以上が女子なんです。それと県下最大規模の学校であるにも関わらず校内の雰囲気がとてもアットホームなこと。これは、先生方が生徒と一緒に作り上げてきたものだな、と感じています。生徒と教職員の距離が近くて、良い空気が流れているんです」
――それは、生徒の表情や態度からも伝わってきますね。
「さらに、公立とは違って私立は人事異動がないので、卒業生が頻繁に学校を訪れてくれるんです。進学、就職、結婚、出産など、人生の節目ごとに『母校』に顔を出してくれる。その姿を見て『この学校が本当に好きだったんだな』と感じます。ずっと恩師が残っているから、公立高校に比べて、卒業生たちが日常的に母校を訪れて近況報告をするという文化があります。母校の〝校〟の字が〝港〟のような存在になっているんだと、つくづく思います。
――なるほど、職員の転勤がないというのは大きな要素ですね。
「ええ、それに加えて、先生たちが育英を心から好きでいてくれている。それが教育活動にも現れています」
――公立と私立の両方をご経験されて、違いを感じることはありますか?
「本校には4つのコースがあり、進学からスポーツ、保育系まで、多様な進路目標を持つ生徒が集まっています。これは私にとっても新鮮な経験でした。公立では、例えば前任校の前橋高校などは全員が大学進学希望であるように、比較的同質な集団です。その点、育英は多彩な進路目的を持った生徒が集まっていて、その意味では『異質な集合体』だと言えるでしょう」

【画像】前橋育英高校のコース編成(同校・ホームページより)
――「異質な集まり」。それは確かに私学ならではかもしれませんね。
「どちらが良いというわけではなく、同質な集団には一体感があるし、同じ目標に向かって切磋琢磨できる環境があります。異質な集団は多様な刺激を生み出します。保育士を目指す生徒もいれば、全国レベルのアスリートもいる。そういう多様な環境の中で、生徒たちも刺激を受け合っているのだと思います」
――2年目を迎えて、校長として育英高校をどのような学校にしていきたいとお考えですか?
「『スポーツ強豪校』というブランドは大切にしつつ、同時に、それ以外の進路を目指す生徒たちへのサポートもさらに充実させていきたいです。生徒の多様なニーズに応えられる環境を整える。それが、これからの私の使命だと考えています」
――それはキャリア教育の充実ということにもつながりますか?
「はい、最終的な目標はキャリア教育になってくるかと思いますが、学力の向上だけでなく、人間性を育み、広い視野を持った人材を育てたい。建学の精神の一つに『国際的視野に立った人材の育成』を掲げていますので、国際理解教育には特に力を入れたいと思っています」
――たとえばどんな取り組みを?
「今年度から、夏休みにロサンゼルスへの海外研修を実施します。ドジャースタジアムでの試合観戦も含まれていて、もしかしたら大谷翔平選手のプレーが見られるかもしれません。大谷さんをはじめとする日本人アスリートの海外での活躍を生で見られるプランは、育英高校ならではのものだと思います。楽しみですね」
――夢がありますね。
「ただ、それだけでは限られた生徒だけの体験になってしまうので、今後はすべての生徒が学校にいながら国際理解を深められるような環境づくりも進めたいですね。例えば、留学生を多く招いた英語キャンプのような取り組みも検討中です」
――他にはありますか?
「今年、文科省のDXハイスクール事業の申請が認められたので、それを活用してICT教育にも力を入れていきたいですね。本校は育英大学・短大が系列です。大学にはICTの専門家がいるので、高大連携で取り組めたらと考えています。プログラミングはもちろんですが、高性能パソコンを利用し、からだの仕組みや動き方について、力学的に研究するバイオメカニクスなどが展開できたらいいなと思います」【つづく】
(聞き手・峯岸武司)
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