【全国学力調査】「成績より学校生活の楽しさ」重視の親が増加 高校受験塾〝冬の時代〟を裏付ける
文部科学省が7月31日に公表した「令和6年度全国学力・学習状況調査」の経年変化分析と保護者調査の結果から、「学校が楽しければ、子どもが良い成績を取ることにはこだわらない」とする保護者が年々増加している傾向が明らかになった。コロナ禍を経て保護者の教育観が変化し、地方の高校受験を中心とした学習塾の経営にも影響が広がっている。
■子どもの学習に対する保護者の関心が低下傾向
この調査は、家庭の状況と学力などの関係について経年の変化を分析し、今後の教育施策に役立てる目的で実施されている。今回は全国から抽出された小学6年生と中学3年生の保護者、約10万人が対象となった。
「普段(学校のある日)に子どもと学校の勉強について話をするか」という問いに対して、「いつもしている」「よくしている」と回答した小学6年生の保護者は40.0%で、前回調査より2.1ポイント減少。一方、「まったくしていない」「あまりしていない」と答えた保護者は17.1%に上り、こちらは2.2ポイント増加した。文科省では、中学生の保護者でも同様の傾向が見られたとしている。子どもの学習に対する保護者の関心が薄れつつあることが読み取れる。

■学校が楽しければ良い成績を取ることにはこだわらないーコロナ禍で変わる親の教育観
また「学校が楽しければ良い成績を取ることにはこだわらないと考えるか」という質問に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えた中学3年生の保護者は52.4%にも上った。2013年からの調査でこうした保護者の価値観は増加の一途をたどっている。一方で、成績重視の保護者の割合は年々減少しており、2021年の調査で親の価値観が逆転している。
文科省によると、小学校でも同様の傾向があったという。


ー●ー「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合算
ー●ー「あてはまらない」と「どちらかといえばあてはまらない」の合算
グラフの「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」、「あてはまらない」と「どちらかといえばあてはまらない」をそれぞれ合算し、折れ線グラフで経年を分析した。縦軸の単位は%。
■親の教育観の変化で苦境が続く学習塾の「高校受験市場」
桐生市内の学習塾関係者は「コロナ禍を機に『学校=毎日通わなくてもよいもの』という認識が広がった」と述べ、価値観の転換に拍車をかけたと見る。コロナ禍が保護者の意識に強い影響を与えた可能性が高い。
こうした親の意識変化は、地方の高校受験を対象とした学習塾の経営にも深刻な影響を及ぼしている。
太田市内の塾関係者は「以前は講習会の案内を出せば一定数の申し込みがあったが、今は広告費をかけても集客が難しい」と現状を語る。
現在の「学習塾業界の苦境」について、前出の桐生市の塾関係者は「少子化による高校入試の倍率低下で、合格しやすくなってきたことに加え、家庭の経済状況の悪化や物価上昇など複数の要因が絡んでいる」と分析。「かつては“聖域”とされた教育費すら削減する家庭が増えている実感がある」と話した。現場で感じていた保護者の意識の変化が、今回の文科省の調査で裏付けられたことで、「これから一体どうすればいいのか」と危機感をにじませた。
(編集部)
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