【全国学力調査】中学生理科で全国を大きく上回る 子どもたちの意欲・自己肯定感も高水準ー群馬県
群馬県教育委員会(平田郁美教育長)は31日、今年4月に実施された全国学力・学習状況調査の結果を公表した。結果から群馬県内の小中学校で学ぶ児童生徒が、国語や理科を中心に全国平均と同等かそれを上回る学力を示したことが明らかになった。子どもたちの学習意欲や自己肯定感も全国平均を上回るなど、県内の教育の着実な成果がうかがえる一方、算数・数学を中心に課題も浮き彫りとなった。
■全国水準に並ぶ、あるいは上回る学力の定着
文部科学省が毎年実施している「全国学力・学習状況調査」。今年度は、群馬県内の小学校298校と中学校158校、合わせて約2万8千人が対象となった。調査は国語、算数・数学、理科の3教科を中心に行われ、子どもたちの基礎学力や思考力、学習への意欲などを多面的に測るものとなっている。
小学6年生では、国語の平均正答率が66%と、全国平均の66.8%とほぼ同水準を示し、理科においては全国平均の57.1%をやや上回る58%という結果だった。特に「読むこと」の設問では、文章と図表を結びつけて情報を読み取る力において全国平均を上回る成果が見られた。一方で、「話すこと・聞くこと」の領域では、インタビューの進め方を考える設問や話し手の意図を読み取る設問において「課題が残されている」と県教委は分析する。


中学3年生でも、国語の平均正答率は全国平均の54.3%に対して本県は55%と上回り、とりわけ「読むこと」「書くこと」の領域で高い正答率を示した。読み手の立場に立って文章を整える設問では、全国平均を5ポイント近く上回る結果となっている。正答率の高い順に学力層をA~Dの四分位に分類すると、群馬県は全国に比べ、学力層はA層の生徒が多く、D層の生徒が少なかったという。

また、今年度から中学校理科は一人一台端末を活用しCBTによる調査が導入された。結果は基準値を500とするIRTスコアで示され群馬県が524を記録し、全国平均の503を大きく上回った(※)。植物の構造を表現する力を問う設問では顕著な成果が見られ、学力層においても上位層の割合が全国より高いという結果だった。
※)IRTとは「Item Response Theory:項目反応理論」のことで、国際的な学力調査(PISA、TIMSSなど)や英語資格・検定試験(TOEIC・TOEFLなど)で採用されているテスト理論。この理論を使うと、異なる問題から構成される試験・調査の結果を、同じものさし(尺度)で比較できる。
■算数・数学に残る課題
一方で、算数および数学の分野では、全国平均を下回る傾向が見られた。
小学校では、平均正答率が56%で、全国の58.0%を下回った。中学校の数学も全国平均とほぼ同水準にとどまったものの、変化の割合を基にした一次関数の設問や、確率に関する基礎知識を問う設問で正答率が低く、知識や技能を活用した応用的な学力に課題が残った。ただし、数学の一部の設問では全国平均を上回る成果も見られた。素数の理解や、誤った証明を修正する発展的思考を問う問題では健闘が光った。


■子どもたちの学ぶ意欲と自己肯定感に手応え 家庭学習は全国に比べ少なめ
学習状況や意識に関する調査結果でも、群馬県の子どもたちの内面に着実な育ちが見られた。「自分の考えを発表する機会で資料や文章、話の組み立てを工夫している」と答えた児童生徒の割合は小学生75.9%(全国比+7.3㌽)、中学生70.1%(同+7.1㌽)と全国に比べ高い数値になった。また「将来の夢や目標を持っている」児童生徒の割合は小学生87%(全国比+3.9㌽)、中学生71.5%(同+4㌽)と高かった。また、「自分には良いところがある」と自己肯定感を持つ児童生徒も、小中学生ともに全国より高い比率で回答しており、学びの基盤となる心の成長がうかがえる。
授業でのICT機器の活用状況も全国に比して進んでおり、中学生の83.8%が授業の中で週3回以上PCやタブレットを使っているという結果が出た。ICT機器を活用してプレゼンテーション資料を作れると答えた児童・生徒も小学生が78.4%、中学生が86.5%と共に全国平均を上回った。授業内でICT機器を活用する機会が増えていることがうかがえる。
一方で学校の授業時間以外に平日「1日2時間以上勉強している」児童生徒の割合は小学生21%(同-3.9㌽)、中学生29.5%(同-1.3㌽)と全国に比べ低く、週末(土・日曜日)に「1日あたり3時間以上勉強している」児童生徒の割合も同様の傾向を示した。
■今後に向けた授業改善と支援の取組
調査結果を受けて、群馬県教育委員会はさらなる授業改善と生徒支援に向けた取り組みを推進する方針を示している。「エージェンシーを発揮する自律した学習者」の育成を掲げる県教育ビジョンのもと、モデル校を中心とした授業改善プロジェクトを展開し、公開授業やハイライト動画の作成・共有を通して、県内全体への浸透を図るという。
また、調査結果の詳細な分析に基づいた「授業改善説明会」をオンラインで開催し、各教科の課題や改善の方向性を教員間で共有する機会も設けられる。学力データを一過性のものとせず、継続的に子どもたちの学びに生かすための体制整備を進める方針だ。
(編集部)
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