高校無償化で「公立志向の強い北関東でも私立に流れる」約7割ー私立高校教員は悲観的
25年度、「高校生等臨時支援金」(1年限定)が設けられ、公立高校・私立高校ともに授業料支援の所得制限が事実上撤廃される。26年度からは私立に進学した生徒への支援が大幅に拡充する見通しだ。こうした中、私立高校に進学する際の保護者負担が大幅に軽減されることで、「設備の整った私立に生徒が流れるのではないか」と分析する報道も一部なされている。ただ、首都圏と比べ北関東では公立高校志向が強く、「無償化」によって風向きが変わるかは未知数だ。
【関連記事】定員割れの学校数は過去最大でも群馬県の中3は公立志向 通信制高校の成長も裏付ける 群馬・栃木・埼玉3県の進路希望調査を分析ー(弊紙25年1月13日配信)
実際、「無償化」の影響はあるのか、ないのか。みんなの学校新聞編集部では4月26日~5月4日の期間、「高校無償化の影響」について、インターネットを通じたアンケート調査を行った。アンケートはみんなの学校新聞のメールマガジンに登録している教育関係者、LINE公式アカウントなどに登録している保護者に配信され、31件の回答が得られた。
アンケートでは「25年度、公立・私立ともに授業料支援の所得制限を撤廃し、26年度からは私立に進学した生徒への支援を大幅に拡充。私立に進学する際の保護者負担が大幅に軽減され、設備の整った私立に生徒が流れる懸念が生じていると言われていますが、これについてどう思うか」と質問し、これに対して、「公立信仰の強い北関東では制度の改変で私立に生徒が流れることはないと思う」「公立信仰の強い北関東でも制度の改変で私立に生徒に流れると思う」「分からない」の3つの選択肢から選ぶ形式で回答を得た。
全体としては、約7割が「私立に生徒が流れる」と予想しており、制度改革が進学動向に一定の影響を与えると考えている。
この回答を学習塾講師に限定すると、私立高校に生徒が流れる可能性を現実的に捉えている意見が優勢(約78%)になる。塾の講師が日常的に「受験生と保護者の志望校決定プロセス」に関わっており、潜在的な保護者や生徒の私立高校への関心度を肌感覚で捉えているからではないかと思われる。「本当は私立高校に進学したかったが、経済的な事情でやむを得ず公立高校にしたという数字では表れない本音を三者面談などを通じて聞く機会もある」と話す塾関係者もいた。
一方で、私立高校教員に限ると、全体よりも「流れない」派の比率が高く(約43%)、制度変化に対して現実的・慎重な姿勢が垣間見える。実際の高校入試で、依然北関東が「公立志向」の強い土地柄であることを経験しているため、「制度の変化で流れは変わらないだろう」という悲観的なマインドが回答に影響したと考えられる。
(編集部)