【学校探訪記】伝統校の精神を継承し、新たな学びを創出するー新・沼田高校 開校8か月
県立沼田高校と沼田女子高校が統合し、2025年4月に開校した新・沼田高校(本多勝校長)。教育目標からカリキュラムまで両校の伝統を継承しつつ、新たに再構築した“新設校”としてスタートを切った。少子化が進む利根・沼田地域で、未来のリーダーを育成する拠点校としての期待が高まっている。
■ 少子化が進む地域で魅力ある高校づくり
利根・沼田地区の25年3月の中学卒業予定者数は565人。急速に進む少子化により、2040年には262人へと半減すると予測されている。子どもの減少に合わせて学校規模を縮小するのではなく、地域に魅力ある高校をつくり、地域のリーダーとして活躍できる人材を育てる――同校のカリキュラムは、こうしたコンセプトをもとにデザインされた。

【写真】新・沼田高校について語る本多校長(同校・校長室で)
旧沼田高校出身の生徒が4クラス(うち数理科学コース1クラス)、沼田女子高校出身の生徒による3クラス(うち英数コース1クラス)で構成され、2年生も同様だ。25年度に入学した1年生は男女共学として新カリキュラムでスタートを切った。「2、3年生は男子校と女子校の文化が違うので、互いに意識しあう雰囲気もありますが、1年生にはそうした隔たりがありません」と本多校長は話す。
生徒会も開校当初は旧2校の会長が並立する体制だったが、2学期からは1人体制となった。
3年かけて新・沼田高校へと移行していく過渡期で、いまは新旧混ざり合う「汽水域」にある。来春には新武道館やカフェテリアの建設も予定されている。
■ 進学重視型単位制 沼田高校のコース編成
沼田高校の定員は全日制普通科200人(5クラス)、定時制普通科40人。全日制は普通コース(160人)と文理探究コース(40人)の2コースで構成され、進学重視型の単位制高校として、生徒が自ら時間割を作成できる仕組みを採用している。そのため個々の進路や学びに合わせたカリキュラム編成が可能だ。
難関大学や医学部を志望する生徒、音楽・美術などの芸術系を学びたい生徒など、学びのニーズはさまざま。同校は1つの高校で多様なニーズに応えられるカリキュラムになっているのが特色だ。その意味で、少子化時代の新しい高校の在り方を模索する「旗艦校」でもある。
特徴的なのが、3年次に設けた「マイタイム」。選択科目の中にあえて「選択しない」という選択肢を設けることで、「自学自習や探究活動を深めるために使うことができます」と阿左見教頭は説明する。
さらに学校設定科目として、教職を目指す生徒向けの「教職基礎」(2・3年次)を設置。県内初の取り組みで、群馬大学など外部機関とも連携した授業を計画している。
同校の卒業生が大学などで専門性を高め、地域に戻って活躍する――そんな好循環の実現を見据える。
■ 校内全体が「探究空間」に
教育目標に「主体的に真理を探究する精神を養い」と掲げるように、探究学習にも力を入れている。
金曜6限の総合的な探究の時間になると、校内のあちこちで話し合いや文献調査、ICTを使った情報収集が始まる。学校全体を探究のスペースとして活用できるように設計されているのも特徴だ。
その目玉の一つが、生徒玄関を入ってすぐの「メディアラーニングセンター」。同心円状に書棚が並び、芝生を模したスペースは開放的で、居心地よく学べる工夫が凝らされている。VRゴーグルや3Dプリンターもあり、高度なICT活用もできるそうだ。

【写真】メディアラーニングセンターは生徒の探究活動をサポートする環境が整備されている

【写真】3Dプリンタ

【写真】メディアラーニングセンター

【写真】VRゴーグル
奥にはプレゼンエリアがあり、探究発表や自習に利用できる。夜8時まで開放され、放課後の自習場所として人気だ。
その近くにある階段状になったコミュニケーションエリアは座り込んでグループでの話し合いをしやすいつくり。「生徒にも大好評です」と教頭先生は説明してくれた。
普通教室は廊下側の壁がスライド式になっており、すべての教室に電子黒板を設置。木目調の温かみのある内装で、ホワイトボード仕様なのが目を引く。

【写真】メディアラーニングセンター奥のプレゼンエリア

【写真】この階段はグループワークや生徒同士の談話スペースとして大人気

【写真】教室棟

【写真】みんな熱心に授業を受けています(1年教室)

【写真】教室の廊下側の壁はスライド式で開放的なつくり

【写真】大学のキャンパスのようなつくり
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2校の統合に伴い、学校行事も再編された。文化祭「沼高祭」は毎年開催へ変更。体育祭は「乙巳祭(きのとみさい)」として団別対抗戦になり、ボッチャやモルックなど、運動が得意・不得意にかかわらず楽しめる競技も取り入れられている。「生徒が主体となって企画・運営しています」と教頭先生。

【写真】盛り上がった「沼高祭」
■ 歴史的建造物をリノベ 新旧が調和する校舎が同校を象徴
沼田高校の管理棟は国の重要文化財に指定されている。玄関の重厚な造りは歴史を感じさせるが、内装は令和の学校にふさわしくリノベーションを施した。
それぞれが100年を超える伝統ある両校が新・沼田高校へその歴史を継承しつつ、新しい高校像を切り開くパイオニアとして動き出した姿を象徴しているかのようだ。
今年2月の入試選抜では文理探究コースが1.83倍と県内の高校トップの倍率となった。高倍率になった要因を本多校長は「利根・沼田以外の他地域から通学してくれる生徒もいますが、なにより地元の子が他地域に出ずに地元の沼高を選んでくれたことが大きいのではないでしょうか」と分析する。
ハード・ソフト面ともバージョンアップした新・沼田高校。地元の将来を担う人材育成の拠点として、地域からの期待も大きい。

【写真】文化財に指定されている同校管理棟の重厚な玄関
(編集部)
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