【学校探訪記】伊勢崎興陽高校ってどんなことを学ぶの?(後編)
「伊勢崎興陽高校って人気あるんですね」。太田市在住で中学2年生の子どもを持つ母親は入試の倍率を眺めていて、興陽高校の倍率が印象に残ったそうだ。「(伊勢崎)市内じゃないので、清明高校と興陽高校の違いがよく分からない」と疑問を口にした。かつて農業高校、いま総合学科。では総合学科ってどんなことを学ぶのか。実はしっかりイメージできる保護者や受験生はそう多くないのでは? 校名からだけでは掴めない学校の実像に迫るべく、取材を申し込んだ。(前後編の後編)
「STEAM教育」のモデル校としての取り組み
伊勢崎興陽高校は県の推進する「STEAM教育」のモデル校(吾妻中央高、伊勢崎興陽高、長野原高、嬬恋高)に指定された。
STEAM教育とは 科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Art)・数学(Mathematics)の5つ語の頭文字を組み合わせた造語で、知る(探究)と創る(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な新しい学びのかたちだ。
同校では、モデル校として「6次産業化プロジェクト推進委員会」を立ち上げ、農作物の生産・加工・販売を一本化する「6次産業化」の研究に取り組んできた。
具体的には校内の「6つの系列」が連携し、6次産業化を完結させる試みとしてピクルスづくりに挑戦した。
さまざまな種類のピクルスづくりに挑戦した
販売時に使われた包装袋も生徒の手づくり
「いままで『6つの系列』が連携して学習の取り組みをしたことがなかったんです。連携することでそれぞれの系列の強みを出し合い、面白いことができるんじゃないかという話になりました」と同校・農場長の齋藤先生は話す。出来上がったピクルスは「高校生がここまでできるとは思っていなかった」と漬物加工大手の新進の担当者も驚かせた。
STEAM教育の取り組みを通して、子どもたちが学習へのモチベーションを向上させ、やりがい、達成感を得ることにもつながったと手応えを感じている。
【動画】「STEAM探究発表会」の様子 興陽高校のパートは4:54。(リンク元:県の動画サイトtsulunos)
卒業後の進路ー進む高大連携
「卒業後の進路は就職が2割、大学が2割、短大が1割強くらいです。大学・短大あわせて70名くらい(定員200名中)、残りが専門学校に進学です。専門学校には農業大学校も含まれます」(齋藤校長)
最近は就職が減って、進学が増えている傾向にあるそうだ。
今年3月16日、高崎健康福祉大学農学部と高大連携協定を結んだ。「高校生が自らの視野を広げ、進路に対する意識や学習意欲を高める」ことが協定の目的の一つだ。4月に入り、少しずつ具体的な取り組みも動きはじめている。
同校農場長の齋藤先生の話によると「(興陽生が)大学を見学したり、講義を受けさせてもらったり、逆に大学の先生に本校に出向いてもらって授業をしていただいたり、一緒に研究したりという取り組みも始めています。大学生が本校の圃場で作業したりもしています」とのことだ。
「大学生との交流で大学のイメージが湧き、生徒にとっても良い刺激になるのでは」と齋藤校長も連携に期待を寄せる。
新島学園短期大学、共愛学園前橋国際大学短期大学部とも高大連携の取り組みをスタートさせている。
受験生向けの学校説明会
8月4日(木)、5日(金)に中学3年生を対象にした体験入学を予定している。保護者も参加可能だ。詳細は各中学校を通じて案内されるが、今年は各自がインターネットで直接申し込める形になる。
「9割近くが佐波・伊勢崎地区からの通学者ですが、伊勢崎駅からそんなに遠くないので桐生・みどり地区の受験生にも目を向けてほしいですね。想像していたのとは『いい意味で』違っていたという高校生活が送れる学校だと思います。外からはなかなかどんな学校か分かりにくい部分もあるので、ぜひ学校見学に来てほしいですね」(齋藤校長)
写真でみる興陽高校 #2
校内には広大な圃場がある こんな光景も農業の専門科がある学校ならでは 三角屋根はビニールハウス
(編集部=峯岸武司)