高校生の就職活動について経験者に聞いてみた!
昨年、人手不足などを背景に7月時点での高校卒業予定者を対象にした求人倍率は全国で3.52倍と過去最高を記録した。1980年代後半のバブル期を上回る「売り手市場」となっている。群馬県内でも複数の高校関係者が「求人が多く、売り手市場になっている」と口を揃える。高校生の就職市場に企業が熱視線を注ぐ中、意外と知られていないのが高校生の就職活動の流れ。大学の就職活動が何社も応募できるのに対し、高校生の就職活動は「1人1社」など独自のルールがある。求人解禁前に高校生のシューカツ事情を取材した。今回は高校生の就職活動を経験した2人に聞いた。
ナナオさん(仮名) 商業高校を卒業後、県内の大手製造業に事務職として勤務。22歳。
ゆうたさん(仮名) 工業高校を卒業後、県内の建設会社で現場監督の仕事をしている。22歳。
――二人はもともと高校卒業後、就職を考えていましたか?
ナナオ「私は高1から就職を考えていました」
ゆうた「あまり最初の頃は考えていませんでしたが、自分は勉強それほど好きじゃないし、親の経済的負担を考えたら就職かなと思っていました」
――7月1日に求人票の情報が解禁されたと思いますが、その後の流れを教えてください。
ナナオ「求人票が出されたら、自分の通っていた高校は5社くらい候補を出しました。基本的に夏休みに企業訪問があります。その企業訪問に行かないと応募できないという校内のルールがありました」
ゆうた「ナナオさんと違って、自分の通っていた高校は夏休みの企業訪問は1社しか見学に行けなくて…」
ナナオ「そうなんですか! うちの学校では実際に企業訪問に行って、ちょっと違うなと思うこともあるから複数行くように言われました」
――高校によっても訪問数は違うみたいですね。でも1社しかいけないとなると、絞り込むのは大変じゃないですか?
ゆうた「通っていた学校で学んだことが生かせる現場監督か大工さんかなぁって思っていたので、まず職種で絞りました。監督は大工に比べ会社での雇用が多いと聞いていて、会社員になりたかったので監督にしようと思いました。あと、両親ともよく相談しました」
――求人票はどういうところを見るの?
ゆうた「自分は基本給、休日日数、福利厚生、離職率を見ました。離職率を見ればその会社の人の出入りが分かるので、離職率の低い会社をチェックしました」
ナナオ「私は事務職がしたかったので、まず職種でしぼりました。その後、会社の規模ですかね。安定しているし、休日や福利厚生などの制度がしっかりしているので、大きい会社に入りたかったですね。だから、資本金を重視しました。あ、あとボーナスですね(笑)」
【写真】高校生向けの求人票(企業が特定されないよう処理してあります)
【写真】ハローワークから配布された求人票の見方の資料
――二人とも資本金とか離職率とかかなり細かいところを見ていますが、高校ではそういう指導はありましたか?
ナナオ「7月上旬くらいだったかな? 求人票についての説明会はあったと思います。でも、特にこの項目を見なさいと言った話はなかったと記憶しています」
ゆうた「うちの高校は専門学科なので、もともと社会人をしていた先生も結構いました。業界事情に明るい先生もいて、『この会社どうですか?』と聞くと求人票には書いていない裏情報も教えてもらえました」
――実際、9月からの応募は「一人一社」が原則だから、行きたい会社があっても応募できないとかありますか?
ゆうた「そうなんです。企業がその高校に出している募集人数があって、いいところには複数希望者が集まります。だから応募前に校内選考があるんですが、ここを通らないと応募できません」
――校内選考は評定平均や出席状況が重要だって聞くけど。
ゆうた「はい。当然、評定が高い方が有利です。進学するにしても工業高校は推薦で大学に行く人が多いから評定が悪いとこちらも不利です」
――ゆうたさんは評定はどうでしたか?
ゆうた「僕は3前半しかなかったんです。だから、いざ進路を考えるときに、めっちゃ焦りました」
ナナオ「そうなんだよね。私には兄がいて、評定が大事だというのは見てきました。それで高校に入学した時から、絶対だれにも負けないという気持ちで勉強しました! 3年生になって自分の好きな企業を選べるように頑張りました。」
――ナナオさんは評定はどうでしたか?
ナナオ「4.9です!」
ゆうた「すごい! 評定リッチだね(笑)。自分なんか評定プアだな」
――就職活動なんて初めての体験ですが、高校のサポートはあるんですか?
ナナオ「夏休み中は毎日登校していました。午前中だったと思いますが、履歴書の書き方や面接練習などしてもらった気がします。自分の時は市内の高校で合同の面接練習会もありました。いずれにしても夏休みは重要です」
ゆうた「高校には過去の就職の情報もあるし、個別に先生も相談に乗ってくれます」
ナナオ「でも、就職試験は定期テストとちがってどこが出るかわからないし、自分の場合、受けた会社に自分の職種で入社した前例がなかったので、過去の面接の質問が分からず苦労しました。結果的に第一希望だった会社から内定がもらえて嬉しかったです」
【写真】学校での面接練習で使われたシート
【写真】就職ガイダンスの日程
【写真】ナナオさん(仮名)の内定証(個人情報を配慮して写真を加工しています)
■高校生の就職活動の流れ
(編集部)