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高校生の就職活動について高校の先生に聞いてみた!

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高校生の就職活動について高校の先生に聞いてみた!

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2024.06.17 
tags:前橋工業高校, 高卒採用 情報解禁日, 高校生 就職, 高校生 就職活動 流れ

 昨年、人手不足などを背景に7月時点での高校卒業予定者を対象にした求人倍率は全国で3.52倍と過去最高を記録した。1980年代後半のバブル期を上回る「売り手市場」となっている。群馬県内でも複数の高校関係者が「求人が多く、売り手市場になっている」と口を揃える。高校生の就職市場に企業が熱視線を注ぐ中、意外と知られていないのが高校生の就職活動の流れ。大学の就職活動が何社も応募できるのに対し、高校生の就職活動は「1人1社」など独自のルールがある。求人解禁前に高校生のシューカツ事情を取材した。

 

求人票の解禁日の高校は「行列の出来るラーメン店」?

 7月1日、高卒採用を行う企業の求人情報解禁日だ。

 企業の高卒採用には専用の求人票が必要で、管轄のハローワークに求人の申し込みと登録申請を行うことで発行される。ハローワークでは、6月1日から求人申込受付を開始。発行された求人票を受け取った採用担当者が解禁日以降に直接高校に持参するか郵送する。

 「昨年は初日に150社が来校しました。2日目、3日目も100社以上は来ましたね」。こう語るのは長年、前橋工業高校で進路指導主事をしている植木厚先生だ。例年、訪問企業数が多いため、校内に複数の受付窓口を設けて対応する。昨年は6カ所の窓口が設けられた。郵送された求人票よりも企業から直接持参された求人票の処理を優先する学校が多いため、解禁日当日は企業の採用担当者でごった返す。

 「端から見たら、さながら人気ラーメン店の行列のような光景ですよ」と植木先生は解禁日当日の様子を笑いながら振り返る。

 近年は求人票をPDF化して生徒が自身のパソコンで閲覧できるように整備している学校が多い。

 「昔のように紙でファイリングされていれば、気にも留めなかった企業との出会いもありましたが、デジタル化されたことで、そういう機会も減ったように感じます。小さい企業だとなかなか見てもらえなくなった気がします」とサービス業のある採用担当者は嘆く。

 大量採用の世代が定年退職し、ますます少子化が進む中、慢性的な人手不足に悩む企業も少なくない。そんな中、高卒就職市場には熱視線が注がれる。 

 昨年、前橋工業高校は1,950社から求人があり、過去最多を記録した。求人数は3,700人。対して、同校の就職希望者数は86人だった。「相当な売り手市場になっています」と植木先生は話す。

「最近では高卒の基本給が20万円を超える企業も増えています。少し前の大学卒の水準です。働き方改革で休日が増えたり、手当がついたりと待遇面でも良くなっています」(植木先生)。

 求人数が増加する状況で、求人票自体が埋もれてしまうケースも少なくない。「いかに企業がPRして子どもたちに選んでもらえるか工夫をこらしています」と企業側のアピール合戦にも熱が入っていると植木先生は教えてくれた。求人票は普通は白だが、ピンクだったり緑だったりと目立つような色の紙を使い差別化を図る会社もあるという。

 大手の企業は「ぜひともPRしたい」と学校が主催する企業説明会の機会を逃さない。会社の案内とQRコードが印刷されたポケットティシュを大量に高校に持ってきて生徒に配ってもらうよう依頼してきたり、ロゴ入りボールペンを生徒分用意する企業もある。とはいえ、事業規模が小さく、学校側への企業説明に割けるマンパワーのない企業も少なくない。企業における採用活動にも二極化の波は押し寄せている。

 

高校生の就職活動の流れ

 7月1日の解禁日以降、生徒は求人票をもとに、夏休み中の応募前企業見学に参加したい2社を選び、7月中旬までに高校に申し込む。「本校の場合は2社ですが、1社だけの高校が多いと思います」と植木先生。

 前橋工業高校では8月6日までに生徒が応募前企業見学に参加し、応募する企業を決定。9日に校内での選考が行われる。

 高校生の就職活動は、大学生の就職活動と違い、応募できるのは「1人1社」が原則だ。そのために、解禁日以前の面談や校内選考で応募する企業の調整が図られる。

 校内の選考とは、ある企業の求人数が1人に対して、希望する生徒が複数いた場合に、応募者を1人にしぼり込む場だ。教職員の話し合いで決定される。この校内選考で大きな基準になるのが3年間の内申書(評定平均)や出席状況だ。

 別の高校関係者は「学校推薦として出す以上は、評定が高い順になるという側面はありますよね。評定は進学・就職問わず重要な指標になるので、進路の選択の幅を広げる意味でも入学の段階から少しでも良い評定が取れるよう頑張った方がいい」とアドバイスする。

 応募企業が決まると、8月の中旬以降は応募書類の準備や模擬面接など採用活動に備えた準備が行われる。模擬面接については、企業の担当者が高校に赴いて練習会を開くケースもあるそうだ。

 例年、9月16日から企業による高校卒業予定者の採用試験がスタートする。ここで内定をもらえるケースが多いが、もちろん選考からもれてしまう生徒もいる。不採用になった生徒は10月に行われる2次募集、追加募集に応募する。

 10月からの応募は併願が可能な企業も存在するが、高校側は企業との関係を尊重して、併願させないケースが多い。10月下旬には採用・不採用が決定する。

「本校の場合、この段階でほぼ内定100%になります。ここでも決まらない場合は12月から3次募集があります」と植木先生。

 

 今年5月に群馬県教育委員会が24年3月に公立高校を卒業した生徒の進路状況を公表した。大学進学者が5,955人で全体の52.2%を占め、過去最高となった。短大を含めると55%で5年連続増加している。一方で、就職者については19.5%(2,220人)で前年と比べてやや持ち直したものの、19年の23%をピークに20%割れの状況が続いている。高卒の就職市場が縮小する中で、いかに人材を確保するか。まもなく本格的な高校生の就職活動シーズンが到来する。

(編集部)

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