【ルポ】高校に通えなくなって高校に入学しなおした娘と母の1年間(2学期)
現在、群馬県内のある専門学科の公立高校2年生の奈緒さん(仮名)は、中学卒業後に進学した別の公立高で不登校気味になり、高校1年生の1月に退学した。将来のことを悩んだ末、今の高校に入学し直し、現在は充実した高校生活を送る。奈緒さんが高校入学から中退を経て、現在に至るまでの心境を奈緒さん本人と奈緒さんのお母さんと振り返った。
2学期に入り、リフレッシュして臨んだつもりだったが、学校行きたくないという日が増えた。登校しても保健室で過ごしたり、電車が嫌だったので自宅から車で送迎してもらったりした。
家での奈緒さんの様子はいたっていつも通りだった。それだけに、久美子さんは学校にいけないという状況が理解できなかった。いじめられたりしているのか。先生との間で何かあったのか。友人関係のこじれ? 久美子さんの胸中にさまざまな疑問が去来する。その思いを奈緒さんに問いかけたとき、いずれも該当しないと返ってきた。
「何が嫌なのか分からない」。
気持ちの中に確信めいたものがあったわけではない。入学当初からくすぶっていたのは「自分の居場所はここじゃない気がする」という違和感。
「親としてはそれを聞いて、そうかそういうことがあるのかという受け止め方をするしかなかった」。受け入れるまでには時間はかかったが、嘘をついているようには思えなかったので、「そんな気持ちになることがあるんだ」と本人の気持ちに寄り添えるように久美子さんは努めた。
※写真はイメージです。(出典:写真AC)
秋口、奈緒さんの口からはじめて、「消えてしまいたい」という言葉が出てきた。久美子さんは今の環境から「脱出」する手段として奈緒さんが最悪の選択を考えているのではないかと狼狽した。「今の子は安易にそういう選択をしてしまうかもしれない」という気持ちがあって、暗闇の中に葬られた暗澹とした心境になった。
「娘の異変を感じたときに、私は前に進んでほしい、前に進んでほしいと思っていて、それも結果的に本人を追い込んでしまったのかなと今は反省しています」
はっきり言葉に出したつもりはない。でも、「学校に行くことが正しい」という久美子さんの気持ちがどこかで奈緒さんに透けて見えていたのかもしれない。
この出来事を機に久美子さんも向き合い方を改めた。どんな状況でもいいから、せっかく入った高校を卒業してほしいとどこかで望んでいたが、奈緒さんの抱えている問題はそんなシンプルなものではなかった。自己の存在を否定するような状況まで追い込まれていることを久美子さんは理解した。
11月。奈緒さんは久美子さんに「高校をやめたい」と言い出した。辞めて働くか、働きながら通信制の高校に行く。「とにかくここから脱出したい」というのは奈緒さんの正直な思いだった。
今後のことをしっかり家族で向き合っていかなければと辞めてからのことを奈緒さんといっしょに話すようになった。それでも、久美子さんにとっては娘が高校を辞めるという選択は正しいことなのか懊悩する期間となった。【つづく】
(取材=峯岸武司)