【ルポ】高校に通えなくなって高校に入学しなおした娘と母の1年間(3学期)最終回
現在、群馬県内のある専門学科の公立高校2年生の奈緒さん(仮名)は、中学卒業後に進学した別の公立高で不登校気味になり、高校1年生の1月に退学した。将来のことを悩んだ末、今の高校に入学し直し、現在は充実した高校生活を送る。奈緒さんが高校入学から中退を経て、現在に至るまでの心境を奈緒さん本人と奈緒さんのお母さんと振り返った。
【写真】教室の様子(本文とは関係ありません) 出典:写真AC
年末。普段は口数が少ない父親が、この状況に一言ぼそっと言った。久美子さんにとっては目から鱗の言葉だった。
「今の奈緒にとっての1年は16分の1だから大きい一年かもしれないけど、この先生きていく中で、その1年なんて40分の1とか50分の1とかになって大したことではなくなるよ」
そして、父親は言った。「人生なんて何度でもやり直せる」。
久美子さんにとっても、奈緒さんにとっても救いの言葉だった。
3学期。初日に1回いってから「やっぱり駄目だった」ということになって、正式に退学を決意した。高校を中退するという決断をしてからの1ヶ月は、「いっぱい寝て、いっぱい食べて、ちょっと出かけてみたり疎遠になっていた幼なじみと連絡をしてみたりという生活をしていました」。つきものが取れたかのように明るい表情を取り戻していくのが手に取るように分かったと久美子さんは言う。
ちょうど気持ちが落ち着いてきた時期、久美子さんの中高時代の友人に状況を相談してみた。小さい頃から奈緒さんもお母さんのお友達とは仲良しだった。
「全日制の高校もう一回入り直したら」。文化祭とか体育祭とか集団で盛り上がれる雰囲気って仕事を抱えながらだと難しいと思うというのがその友人の意見だった。
この意見も含めて、今後の選択肢を久美子さんは奈緒さんに提案した。
「最終的にはあなたが決めればいい。もし駄目だったら、やり直しはできるからね」
この時の心境はどうだったのか。奈緒さんにぶつけてみる。
「私は前の学校の全日制だったところが向いていないのか、課題の出され方や量が向いていないのか、何が嫌だったのか分からなかったため、最初は元々通っていた高校といろんな面で違う部分の多い通信制高校に入ろうと考えていました」。
ただ、久美子さんの友人の意見も響いた。もともとみんなで一緒に何かをやる雰囲気は好きな方だった。「駄目だったらやり直せばいい」こんな母の一言も気持ちに余裕が持てた。
最終的に、家から一番近い、専門学科を学ぶ高校に入学を決意した。
「これは私の個人的な意見ですが、数学や化学などの難しい勉強をなんでこんなスピードでやるのか理解できなったし、普通科のそんな雰囲気が合わなかったんだと思います。もちろん、向き不向きもあります。いま私は専門学科の高校に入り直してとても充実した高校生活を送っています。偏差値や成績とかそういうデータだけではなく、自分の向き不向きをしっかり考えた上で進路を選択してほしいと強く思います」
(取材=峯岸武司)