関東学園大学がいま「6次産業化」に熱心に取り組むわけー地方創生研の中村教授らに聞く
2月15日、関東学園大学(太田市)で、産学官連携による地域活性化をテーマに「第8回地方創生フォーラム」が開催される。同大学が地方創生研究所を立ち上げてから今年で10年目。ここ3年は「太田6次産業化Lab」を発足させ、学生たちと共に農業を軸とした地域活性化に取り組んできた。同研究所の中心メンバーである中村正明教授と山根聡之准教授に「6次産業化」に注力する背景などを聞いた。
■地方創生研究所の発足
安倍政権で地方創生の機運が高まる中、2014年に関東学園大学は地方創生研究所を開設した。
研究員の一人、中村正明教授(経済学部)は「(地方創生の流れの中で)学生教育に生かすことができないかというところからスタートしました」と設立の経緯を説明する。
同大学の学長が所長を務め、研究員は所長も入れて10人ほど。中村教授と山根聡之准教授(経済学部)が中心となってプロジェクトを動かしている。
【写真】地域創生について語る中村教授㊧と山根准教授㊨
あわせて、経済学部の中に地域経済デザインコースを設けた。同コースは山根准教授がコース長を務める。「食と農」に観光業や地場産業をからませて、専門のカリキュラムを作り、地域をフィールドにした実践的な学びを行っているそうだ。
■農業の6次産業化は持続可能な地域作りに不可欠
地方創生のテーマをより具現化するために同大学が3年前に立ち上げたのが「太田6次産業化Lab」だ。「太田と名前が付いていますが、基本群馬県を一つの地域として活動を行っています」と中村教授は説明する。
6次産業化とは、1次産業(農林水産業)に2次産業(製造・加工業)、3次産業(流通・販売業)を組み合わせることで、付加価値を高める取り組みだ。研究所では、6次産業化が地方創生の鍵を握っているという考えの下、学生とともにさまざまな取り組みを行っている。
中村教授が「6次産業」に着目したのは、日本の農業の厳しい現状を目の当たりにしたからだった。「高齢化と進む就業人口減。農家の平均年齢が68歳って異常ですよね。日本を活性化させるためには、各地域の基幹産業である1次産業を進化させて盛り上げていかなきゃいけないという問題意識がありました」と中村教授は話す。
東京農大出身の中村教授は国が推進する6次産業化プランナーに自ら登録し、商品開発やプロモーションといった生産者の支援に関わってきた。支援を通じて、傷の付いたB品の野菜だから半額で卸すという従来型の「下請けモデル」ではなく、生産者と加工・販売者が対等なパートナーシップを組めるかどうかが6次化を進めていく上での要だと痛感したという。農業を単なる生産活動としてではなく、観光や体験と結びつけることで、持続可能な地域づくりにもつながっていくと中村教授たちは考えている。
■「6次産業化Lab」発足3年
1次産業を活性化させていくためには、若い世代がもっと関心を持ち、ビジネスとして成り立つような仕組みを作る必要がある。大学の教育と現場の連携を強化し、いかに実践的な学びを提供できるか。こうした問題意識が「太田6次産業化Lab」の発足につながった。
発足から3年。所属する学生たちは座学に加え、実際に現場を訪れて、生産者といっしょに商品開発をおこなったり、ツーリズムなどのサービスの企画を行ってきた。
2月15日に開催される同大学主催の「第8回地方創生フォーラム」では、「太田6次産業化Lab」が取り組んできた活動報告が行われる予定だ。
地元農家と地元企業と一緒に取り組んだ「大学芋風さつまいもジェラートの開発」や東武鉄道とのフードツーリズムの企画など、座学だけではなく現場と関わり合いながら取り組んだ知見が報告される。
(編集部)