教科書改訂で英語の入試問題はどう変わった? 公立入試の「地殻変動」の背景を探る
新学習指導要領が改訂され、昨年の春から英語も新しい教科書に切り替わった。今年度の入試問題は「教科書改訂1期」にあたる。とりわけ英語の教科書が大幅に変わったことがクローズアップされたが、実際に全国の公立入試の英語の出題傾向に〝地殻変動〟があったのか。入試分析に定評のある株式会社エデュケーショナルネットワーク(東京都千代田区)のアナリストに聞いた。
「原形不定詞と現在完了進行形と仮定法といった新出単元は予想以上に出題されています。間違いなく教科書改訂の影響はあったと言っていいと思います」
こう話すのは株式会社エデュケーショナルネットワーク R&Dセンター チーフアナリストの上野伸二氏だ。
実際にほぼ8~9割の都道府県で英語の新出単元の出題が見られた。英文中に潜ませる程度のところもあれば、語順整序や空所補充で出題したところもあった。
同社R&Dセンター アナリストの向井菜穂子氏は「(教科書が改訂されてから)初年度の入試なので問題によってはかなり正答率は低くなったことが予想されます」と話す。
たとえば、岩手県で出題された原形不定詞(help)の語順整序の問題の正答率は7%だった。新出単元なので、過去問などの既存の問題集には載っていない。なじみが薄く、経験値が低かったのが正答率を押し下げた原因だろう。この原形不定詞のhelpやletは多くの県で出題された。
岩手県 大問9(2) 正答率 7%
A: Are you free now?
B: Yes.
A: Will you help ( carry / to / me / this desk ) our classroom?
B: OK, but I think it is too heavy.
神奈川県で出題された仮定法の問題は正答率が22%程度だった。
仮定法は中3の2・3学期に学習する単元だ。そのため教科書の出現順では後ろの方に配置されている。コロナ禍による学級閉鎖や学年閉鎖などの影響で授業進度が遅れがちだった昨年に関しては仮定法は出題しにくいのではないかと見る向きもあった。ところが実際に蓋を開けてみると、仮定法は15都道府県で出題された。3割以上の都道府県で出題された計算だ。
では、来年度以降も英語の教科書改訂の影響はあるのか。
「入試問題はここまでの学力を身につけてほしいという目安になります。10年前の学習指導要領の改訂の時も入試問題が難化傾向にありました。その意味で言うと、ここ数年しばらく英語の難化傾向が続く可能性がありますね」と上野氏は予想する。
(編集部=峯岸武司)