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脱ゆとり こどもたちの学びはどう変わった?

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脱ゆとり こどもたちの学びはどう変わった?

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2016.12.01 
tags:TIMSS, ベネッセ教育総研, 学習基本調査, 学習時間, 教育, 脱ゆとり

脱ゆとり世代の学習意欲は?

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 国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ)が11月29日、小学4年と中学2年が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)※記事下用語欄を参照」の2015年の結果を発表した。
 これによると日本は全4教科の平均点でいずれも1995年の調査開始以来、過去最高を記録。中2理科の国際順位は前回から2つ上げて2位となるなど、全教科で5位以内に入った。
 テストを受けた小4は小1から「脱ゆとり教育」で授業時間が増えた新学習指導要領世代。中2も先行実施された新指導要領を小3から学んでいる世代だ。
 学力低下が叫ばれつづけ、文科省は「脱ゆとりシフト」に舵を切った。その教育改革は実を結びつつあるのか。

■ベネッセ教育総研の「学習基本調査」の結果から見えること
 ベネッセ教育総合研究所が今年1月に発表した「学習基本調査 2015版」でも、子供たちの学習に関する意欲が高まったことが指摘されている。同総研では小5、中2、高2を対象に全国3地域(高校生は4地域)で複数年にわたり定点観測を行っている。
 
 これによると、学校外での平日の学習時間は学力低下が叫ばれた2001年から比べ、どの学年とも大幅に増えている(下記グラフ)。週当たりの学習日数も、右肩上がりに増えてきている。
平日学習時間の推移    (ベネッセ教育総研「学習基本調査 2015」により作成)
 
     週当たりの学習回数の推移
勉強する日数    (ベネッセ教育総研「学習基本調査 2015」により引用)

 これに関して、ベネッセ教育総研・副所長(主席研究員)の木村治生氏は「このデータは塾などの時間も含んでいるが、学校で出される宿題自体が増えてきている」と分析する。 
 定期テストなどのテスト勉強の開始時期も、10日~2週間くらい前から始める層が、01年段階で中学生で43%、高校生で28.3%だったものが、15年では中学生で60.7%、高校生で40.8%と増加している。
 「毎日コツコツ勉強する派の割合は増え、試験前にまとめて勉強派が減少しています(下記グラフ)。学習態度は真面目になってきているとも言えます」(前出・木村氏)
テスト勉強の開始時期
 
 一方で、難しい問題をじっくり考える派とやさしい問題を数多く解く派の割合はやさしい問題を数多く解く派が優勢であり、経年でも割合も大きく変わっていない。できるだけ暗記しようとする派とできるだけ考えようとする派の割合も、できるだけ暗記しようとする派が優勢だ。
 
■ 学習意欲は高まったものの・・・
 数字で見る限り、子どもたちの学力・学習意欲はゆとり世代に比べて高まっているのは事実だ。文科省はTIMSSの結果を受けて、「理科の実験などを重視した現行指導要領下での学びや、07年度に始めた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)による指導改善が奏功した」と自信をのぞかせるが、「これが新指導要領の成果かどうかは今後の動向を見ていかないと分からない」と指摘する学習塾関係者もいる。
 ベネッセ教育総研の木村氏も「進研ゼミなどでも、自分で○つけできる子が少なくなっている印象があります。上手な勉強の仕方が分からないと思っている中高生は90年からの経年調査でも横ばいのままです。示されたものをこなす力は高まったが主体的に学ぶ力は高まったのか」と問題提起する。

 国が目指すのはアクティブラーニングなどを通じて、主体的に考え、課題を解決していく能力を高めていくことだ。今回のTIMSSの結果は「脱ゆとり」政策で学力の底上げに一定の成果をあげたことを裏付ける。その一方で、子どもたちの考える力が以前に増して育ってきているかは未知数だ。日経新聞によれば「トップ層は他の上位の国・地域に比べて薄く、記述力が問われる問題が苦手な」傾向は相変わらずだ。
 子どもたちの間に能動的な学びの習慣をいかに根付かせるか。日本の教育改革はまさにこれからが勝負どころと言えそうだ。 
(編集部=峯岸武司)
 
● ベネッセ教育総合研究所「学習基本調査2015
 
《用 語》TIMSS1958年に設立され、67カ国・地域の教育研究機関で構成する国際教育到達度評価学会(IEA)が4年に1回実施する国際学力テスト。小学4年生と中学2年生が算数・数学と理科の問題を筆記型で受ける。主に学校で学んだ内容について、「知識」「技能」「問題解決能力」の習得状況を評価する。3年に1回行われる経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)は高校1年生が対象で、知識や技能を実生活の場面でどう活用できるかを評価している。
                                           (日経新聞記事より引用)

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