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多文化共生を目指して Green Peace Kiryu代表の田中千恵子さんに聞く

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多文化共生を目指して Green Peace Kiryu代表の田中千恵子さんに聞く

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2024.11.30 
tags:Green Peace Kiryu, Gコミュニティ 伊勢崎, 外国人 支援, 多文化共生 推進, 桐生市 国際交流協会, 特定技能, 田中千恵子

  今年10月、多文化共生を推進するためGreen Peace Kiryuが活動を開始した。主な活動拠点は桐生市・みどり市。主宰するのは27年間、外国人の日本語指導や生活支援をしてきた田中千恵子さんだ。同団体には現在スタッフが13人在籍し、学校や企業などで外国人のための日本語支援を中心に活動を続けている。将来的には日本人に向けた語学講座や在住就労外国人の生活支援活動、異文化交流活動など活動の幅を広げていく予定だ。

 

働きながら日本語指導のボランティア活動を

 「あまり人がやっていないことに挑戦してみたい」。

 そもそも田中さんが日本語指導を始めたきっかけはこんな好奇心からだった。それまで地元大手企業のエンジニアとしてキャリアを積んできたが、いつしか「仕事以外の何かをやってみたい」と考えるようになった。以前から外国語に興味を持っていたことから、その糸口をつかもうと桐生市役所、国際交流協会に問い合わせてみたところ、桐生市内で開催している日本語教室があり、その指導員の存在を知った。「指導員になるには、日本語講師ボランティア養成講座を受けることが条件ということで、早速その講座にチャレンジしました」と田中さんは当時のことを振り返る。以来27年間、仕事が休みの週末は欠かさず、日本語指導のボランティア活動を続けた。

 

言葉の支援だけではなく

 日本語の指導をしていく中で、言葉を教えるだけではなく、もっと踏み込んだ外国人支援の必要性を感じる出来事があった。

 22年10月、日本語講師になってから交流のある、NPO法人・Gコミュニティ(伊勢崎市の日本に在住している外国人およびその子どもの教育支援などを行う団体)の本堂晴生代表から、スリランカ人の15歳(当時)と17歳(当時)の姉妹の日本語指導の依頼が舞い込んできた。姉妹は、桐生市の高校に入学するため日本語を勉強したいということで、日本語支援をスタートさせたが、日本語が全く話せない状況から、高校への受験に挑むには困難を極めた。言葉の問題もさることながら、受験可能な条件を満たすのも大きな障壁になった。こうしたことを一つひとつ解決しながら、1年3カ月かけて姉妹の日本語支援、受験の申請書類準備などを行った。今年3月、田中さん、そして日本語教室の講師たちのサポートの甲斐もあり、姉妹は桐生市立商業高校(定時制)に見事合格した。

「外国人にとって入試など制度やしくみを理解するのはとても難しいし、(言葉を教えるだけでなく)こういう面でのサポートの必要性を強く感じました。もちろん、受験だけではなく、ごみ出しや交通ルールなど文化や習慣の違いなど、生活に関するアドバイスを行ったり、日本人側の彼らへの偏見をなくしていくことも大切です。少子高齢化社会で外国人との共生は、今後必須のキーワードだと思います」と田中さんは多文化共生の重要性を説く。

なぜ外国人の支援が重要なのか

 群馬県の23年時点での高齢化率は30.9%。とりわけ桐生市は高齢化の深刻な自治体の一つだ。人口減少に歯止めがかからず、「消滅可能性都市」にも指定されている。人口戦略会議によれば、桐生市は50年には現在の人口がほぼ半減し、59,785人になると予測されている。

 一方、県内には現在54,083人(23年12月末)の外国人が生活する。その中で特定技能1号としての在留資格が前年比65.1㌽も増え、存在感を増している。介護職、製造業、宿泊業など12業種の指定に加え、今年から自動車運送業など4業種が加わり、16業種になった。

「特定技能には1号と2号があり、1号の家族帯同はできませんが、2号には条件を満たせば家族帯同も認められます。ハードルは高いですが2号の人も今後増えていくと思います。町の衰退、人口減少に歯止めをかけるには、外国人就労者の力は不可避。インバウンド対策も含め、その受け入れ体制を少しずつ整えていく必要があります。少しでも多くの人にこの現状を把握してもらい、この推進活動を続けていきたいと思います」と田中さんは今後の思いを語った。

 

Green Peace Kiryuの活動

【写真】パキスタンの兄妹の進学支援の様子(昭和公民館で)

 

 田中さんは長年の日本語指導を通じて、もっと幅の広い支援の必要性を感じ、3月に国際交流協会を辞め、個人的に支援活動を開始した。依頼が増えていき、一人での活動には限界を感じる中、国際交流協会に所属するボランティアスタッフに声をかけると、活動趣旨に賛同してくれ、メンバーが13人に増えた。そして、10月にGreen Peace Kiryuを立ち上げた。

 現在、大間々東中のスリランカ人と中国人の生徒2人を週2回、放課後の時間を活用して日本語指導したり、大間々中のスリランカ人の生徒を国語の時間を使って別室指導したりしている。企業内での外国人就労者への日本語指導も請け負っている。Green Peace Kiryuの活動の幅は着実に広がっている。

 同団体は将来的にはNPOなどの法人としての運営を目指しているが、現状では任意団体だ。そのため活動資金はほぼない。当面、持ち出しや寄付を募りながら活動を継続していく予定だ。

(編集部)

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