【特集】公立高 定員割れ6割超を読み解く
18日に群馬県教育委員会が発表した第2回進路希望調査によると、公立高校63校中38校が定員割れを起こし、その割合は60.3%で過去最高を記録した。県全体の倍率は1.00倍で昨年同期と同じ倍率だが、割合で見ると5.6㌽も上昇してしまった。
この現象をどうとらえるか。データを交えながら検証を試みた。
ーー折れ線:定員割れの割合 ■学校数
(第2回進路希望調査をもとに編集部が作成)
この現象を「公立離れが進み、私立志向が高まった」と結論づけられるかというとそう単純な話ではない。昨年同期、県内の公立高校(全日制)を希望した割合は67.55%。100人の中学生のうち約68人が公立の全日制を志願した計算だ。今年は68.16%で微増ながら公立志願者の割合が増えている。県内の私立高校の志願割合は昨年で16.25%、今年は15.25%でやや減らしている。数字で見れば、公立離れが進んでいるとは言いがたい。
進路希望調査を見ると、県外の国・公・私立高校の進学者が前年に比べ57人増えたが比率で言えば5.17%と微々たるもの。広域通信制高校も前年より54人増やしたが、4.09%とまだまだ少ない。生徒募集に携わる私立の高校関係者の中には広域通信制高校に対して警戒心を寄せる声も漏れてくるが、まだ影響力としてはさほど大きくはない。
では、この数字をどう見ればいいか。「都市部とそれ以外の地域での倍率格差が広がっているのが原因の一つ」と県教委の担当者は説明する。
※全日制高校のデータ
■前橋エリアに分類した高校
前橋、前橋南、前橋西、前橋女子、前橋東、勢多農林、前橋工業、前橋商業、前橋清陵、市立前橋
■高崎エリアに分類した高校
高崎、高崎東、高崎北、榛名、高崎女子、吉井、高崎工業、高崎商業、松井田、安中総合学園、高崎経済大学附属
■太田エリアに分類した高校
太田、太田東、太田女子、新田暁、太田工業、太田フレックス、市立太田
■伊勢崎エリアに分類した高校
伊勢崎、伊勢崎清明、伊勢崎興陽、伊勢崎工業、伊勢崎商業、玉村
■桐生エリアに分類した高校
桐生、桐生清桜、桐生工業、大間々、桐生市立商業
■館林エリアに分類した高校
館林、館林女子、板倉、館林商工、西邑楽、大泉
■渋川エリアに分類した高校
渋川、渋川女子、渋川青翠、渋川工業、吾妻中央、長野原、嬬恋
■藤岡・富岡エリアに分類した高校
藤岡中央、藤岡北、藤岡工業、万場、富岡、富岡実業
■沼田エリアに分類した高校
沼田(新設)、尾瀬、利根実業、利根商業
※分類は群馬県のハイスクールガイドのくくりを参考にした。
(第2回進路希望調査をもとに編集部が作成)
実際、高校を市部のブロック別に分類し、算出してみると、高崎市、前橋市などの都市部ではエリア全体の倍率はそれなりの数字を維持している。
一方で北部地域の渋川市はエリア全体で0.76倍と低く、藤岡などでも0.87倍と低い数字だった。これらのエリアで大きく下回っている理由として、東毛地域のある学習塾関係者は「渋川も藤岡も鉄道で高崎・前橋に出やすいからではないか」と分析する。流出組が数字を押し下げているという見立てだ。人口減少が深刻な桐生市で1.03倍と堅調な倍率だったのも、「両毛線や東武線などの乗り入れがあり、周辺から通いやすいからでは」と前出の塾関係者。
この状況で高校再編といった話がまたあがってくるのか。この点については「計画に基づいて進めている。来年度以降どうなるかということについては何も決まっていない」と県教委の担当者は話す。前出の塾関係者は「(定員割れの学校が6割を超えたとなると)再編や定員削減など何らかの手は打たざるを得ないのではないか」と予測する。
とはいいながら、受験生には勘違いしてほしくないのは、倍率が高校の良さや人気を示す指標ではないこと。「あくまでその地域の子どもの人口の移り変わりで影響されるものでしかありません。だから、最後まで自分が行きたいと思った高校に合格できるよう万全な準備を進めてほしい」と前出の塾関係者は受験生にエールを送る。
(編集部)