【徹底解剖】図書館でも教室でもない、第3の学び空間「SANICHIコモンズ」始動ー佐野日大
生徒が自然と集まり、語り、学び合う――そんな場を学校の中に。
今年4月、佐野日本大学高等学校・中等教育学校に誕生した「SANICHIコモンズ」は、生徒たちの学びと交流を深めるために設計された新しい多目的空間だ。木のぬくもりに包まれたピラミッド型の開放的な空間には、ランチや自習、グループワーク、プレゼンテーション、そして気軽なおしゃべりまでも受け入れる多彩なエリアが広がる。生徒たちの「こんな場所が欲しかった」を形にしたこの施設は、学校の新たな魅力となりつつある。
■開かれた学びの場「SANICHIコモンズ」誕生
「SANICHIコモンズ」は佐野日本大学学園の創立60周年記念事業のひとつとして佐野日大高校、佐野日大中等教育学校の生徒が集い、学び、交流する場として建設された。
最大17mの梁でピラミッド型に設計された大規模空間は開放的で、ランチや学習スペース、保護者を含めた説明会や交流会などに利用できる多目的空間だ。栃木県産の檜を使用しているため、入るとほのかな木の心地よい香りが漂う。
■用途に応じた7つのゾーニングエリア
【A】
【B】
【C】ここの壁に220インチモノターが設置される
【写真】各席についているコンセントはUSB端子やUSB Type-C端子にも対応している。
241の座席は7つのエリアにゾーニングされている。
114席のメインエリア【写真A】はランチをしたり自習や交流のスペース。グループワークエリア【写真B】はキャスター付きのテーブルを目的に応じて組み合わせることができる。プレゼンテーションエリア【写真C】はグループワークの発表会など用途はさまざま。「近いうちに壁に220インチのモニターが設置される予定です」とは同校・入試室の鵜沢亜希子先生。
気軽に仲間との談話を楽しめるスツールエリアや組み合わせテープルエリアでは施設に出店しているコンビニでおやつを買って、教室とは違った雰囲気でコミュニケーションをとれるスペースだ。
【写真】施設内のコンビニ
【写真】コンビニで使えるプリペードカード。チャージも可能。
■“ファミレス席”が人気 一人でも集中できるカウンター席も完備
【写真】生徒に大人気のファミレス席
【写真】1人で集中したい生徒はこちら。
【写真】パーテーション兼用のホワイトボード
友達同士で教えあい、励ましあいながら勉強したい生徒にはファミレス席エリアが人気。高い背もたれがポイントで隣の席の様子が見えないつくりになっている。実際に座ってみると分かるが、開放的ながら個室のような居心地の良さがある。「このスペースは取り合いで、大人気です」と鵜沢先生。「カフェやファミレスで勉強する子も増えていると聞きますが、同じような機能を学校が持つことで、生徒同士が親交を深めることもできます。図書館のように静まり返った雰囲気ではなく、適度なノイズがあった方が勉強がはかどる子も少なくないですしね」
もちろん一人で静かに集中したい生徒には1人用カウンタエリアも用意されている。
同校の始業時間は午前9時だが、埼玉県から通学しているという1年生の女子生徒は朝早く学校に到着する。「朝8時には開いているので助かります」。
■放課後の交流が生まれる「ちょうどいい」場所
取材当日、コモンズで放課後のおしゃべりを楽しんでいた3年生の男子4人組に声をかけてみた。実際、利用してみての感想をたずねると「いままで図書館で勉強していたが私語禁止、飲食もダメだったので、ちょっと息苦しさがありました。ここは雰囲気が柔らかいというか、居心地がいい。これから勉強するのが楽しみです」とにこやかに答えてくれた。
「ここにいる生徒はみんな笑顔なんです。険しい顔した子や沈んだ表情の子がいないんです。みんな楽しそうにしています。その表情を見ているだけで、教員として嬉しいし、コモンズができてよかったと思います」と鵜澤先生。
■階段はステージに。演奏会も開かれる多目的スペース
注目してほしいと鵜澤先生に案内されたのが、2階へ移動する階段。大きい階段はステージとしても活用され、すでに吹奏楽部や和太鼓部などが演奏会を行ったそうだ。
SANICHIコモンズはカフェやファミレスなど放課後の生徒の過ごす場所を学校に集約させたことで、学校としての付加価値になっている。仲間同士がより親密なコミュニケーションをとれたり、探究的な学びを深めていく場所として、同校の新しい武器となっていくはずだ。
(編集部)