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立命館、通信制高校を構想 「偏差値モデル」転換の号砲となるか

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立命館、通信制高校を構想 「偏差値モデル」転換の号砲となるか

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2026.05.17 
tags:AI 東大 入試, N高, 立命館 宇宙, 立命館 通信制高校, 立命館大学, 角川ドワンゴ学園

 学校法人立命館は2028年度の開設を目指し、広域通信制高校「立命館未来探究高校(仮称)」の設置構想を進めている。日本経済新聞によると、探究学習を軸に、AIを活用した個別最適化学習などを取り入れ、全国から生徒を集める構想だという。少子化が進み、大学入試や学力観そのものが変わりつつある中、今回の動きは、通信制高校ブームへの対応だけでなく、将来の大学経営を見据えた戦略との見方もある。

 

 通信制高校を再定義した角川ドワンゴ学園

 通信制高校は長らく、不登校や中退経験者らの「受け皿」というイメージが強かった。そうしたイメージを大きく変えたのが、角川ドワンゴ学園のN高だった。学校設立に関わったKADOKAWA取締役で同学園の理事を務める川上量生は著書「教育ZEN問答」(中公新書)の中で、「これまでは『全日制に行けない生徒のための学校』というイメージがあった通信制高校」のイメージを変え、「ネット時代の最先端の学校にする」と開校段階の想いを打ち明けている。

 実際、ドワンゴのIT技術を活用し、オンライン授業や双方向型の学習システムを導入。一斉授業中心だった従来型教育の弱点を補い、「時間や場所に縛られず学ぶ学校」として通信制高校を再定義した。

 コロナ禍によるオンライン教育の浸透も追い風となり、N高、S高は急速に生徒数を伸ばした。2025年には群馬県桐生市にR高も開校。同年12月末時点の学園全体の生徒数は35,744人に上る。

 群馬県内のある私立高関係者は、こうした動きに危機感を募らせる。「全日制に合わなくなった生徒が、そのまま学校を辞めてしまうケースもある。高校に通信制課程があれば、その受け皿になるのでは」としながらも、「学校法人の経営陣には通信制へのアレルギーも根強い」と実情を打ち明ける。

 埼玉県では、全日制私立高が通信制課程を新設する動きも出始めている。25年4月、本庄第一高は埼玉県北部地域の私立高校としては初の通信制課程をスタートさせた。少子化と学びの多様化が進む中、伊勢崎市内の塾経営者は「(群馬県内でも)今後同様の流れが広がる可能性があるのではないか」と話す。

 

 AIがもたらした教育現場の地殻変動

 学力観そのものがAIの台頭で地殻変動を起こしている。ビジネスや教育現場ではAI活用が急速に進む。今年は、対話型AI「ChatGPT」が東京大の入試問題で高得点を記録したというニュースも話題を集めた。これまで「記述式中心の難関大入試はAIには難しい」との見方もあったが、数年で状況は大きく変わった。

 従来の5教科中心の学力観だけでは測れない力が重視され始めている。大学入試でも、知識量を問う一般選抜から、探究活動や主体性を見る「総合型選抜」へ軸足を移す動きが私大だけではなく国公立大にも広がっている。今後は「何を知っているか」だけでなく、「どんな問いを立てられるか」が、より重要になる可能性がある。そうした中で、私立上位校の一つである立命館大が通信制高校の開設に乗り出す意味は大きい。

 

 少子化時代の大学経営への先行投資

 通信制高校であれば、地域を超えて全国から生徒を集めることができる。特定分野を深く探究したい生徒にとっては、従来型の偏差値競争よりも魅力的な選択肢になりうる。大学受験という「壁」がなくなることは何かを極めたい生徒にとっては大きな利点だ。大学側にとっても、高校段階から育てた探究型人材を、そのまま大学へ接続できるメリットがある。

 立命館大は3月、28年4月に宇宙分野の大学院としては国内最大級の規模になる「宇宙地球フロンティア研究科」を開設することを発表した。同大によれば、研究科長には、東京大の中須賀真一氏が就任予定となっており、英語のみで学位取得が可能なカリキュラムを整備するなどして留学生を半数程度受け入れ、関西地域に宇宙開発・産業の拠点を形成していきたいとしている。今回の通信制高校構想は、通信制ブームの「相乗り」ではなく、そうした将来戦略の延長線上にあると見るべきだろう。

 学校法人立命館は2000年、別府市に立命館アジア太平洋大(APU)を開学した。当時は「九州の山奥で成功するはずがない」と学内外から懐疑的な声も少なくなかった。しかし現在では、世界中から学生が集まるグローバルな大学へと成長している。

 通信制高校への参入もまた、現在の教育の常識を書き換える一手となるのか。立命館の動きは、少子化時代の高校再編と大学選抜のあり方に、大きな影響を与える可能性がある。

(編集部)

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編集部より 記事は配信日時点での情報です。

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