ホーム

»

学校ニュース

»

教科書は本当に“画面でいいのか”  デジタル教科書に対する期待と不安

学校ニュース

一覧はこちら

教科書は本当に“画面でいいのか”  デジタル教科書に対する期待と不安

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2026.04.13 
tags:デジタル教科書, デジタル教科書 文科省, 勉強 デジタル, 勉強 紙, 柴田博仁 群馬大, 紙の良さ

 政府は、紙の教科書と同じ位置づけで扱う「デジタル教科書」の関連法案を閣議決定した。これまで補助的な存在にとどまっていたデジタル教科書は、法案が成立すれば正式な「教科用図書」として認められ、検定や無償配布の対象となる。2028年度の検定を経て、2030年度の小学校から順次導入される見通しであり、教育のあり方そのものが変わる転換点に差し掛かっている。

 

「選べる教科書」がもたらす現場の変化

 今回の制度改正で大きく変わるのは、教科書の「形」を学校側が選べるようになる点だ。これまでは紙が前提だったが、今後は紙だけでなく、紙とデジタルを組み合わせる形、あるいは完全にデジタルへ移行する形も選択肢となる。すでに「GIGAスクール構想」によって端末やネットワークといった環境整備はほぼ完了しており、焦点は「使えるかどうか」から「どう使うか」へと移っている。

 法改正の最大のポイントは、学校や教育委員会が教科書の形態を選べるようになることだ。今後は次の3つから選択できるようになる。

  • 紙のみ
  • 紙とデジタルの併用(ハイブリッド)
  • 完全デジタル

 

デジタル化が変える学びの中身

 デジタル教科書が正式化されることで、学びの中身も変わっていく可能性が高い。これまでは紙の内容をそのまま画面に置き換えたものが中心だったが、今後は音声や動画、双方向の機能など、デジタルの特性を前提とした教材が検定の対象になる。

 文部科学省の実証研究でも、こうした活用が進むことで、学力や学習意欲の向上、さらには教員の負担軽減といった効果が確認されている。特に一人ひとりの理解度に応じた学習や、協働的な学びとの相性の良さは、従来の教科書にはなかった強みと言えるだろう。

 しかし、その一方で課題も浮き彫りになっている。長時間の画面使用による健康面への影響や、操作性への不満、システムトラブルへのストレスなど、現場ならではの問題は少なくない。「タブレットやPCを使った授業はWiFiなどの通信トラブルや子どもたちの端末の不具合など気をつかう場面もある」と太田市内の公立中教諭は打ち明ける。

 また、書き込みや記録のしやすさといった点では、依然として紙に分があるという声も根強い。さらに、デジタル化によって新たに生じる教員の準備や評価の負担も無視できない。

 

「手で読む」紙の強さとは何か

 こうした議論の中で改めて注目されているのが、「紙の強さ」の本質である。

 群馬大学の柴田博仁教授は、人が文章を読むとき、目だけでなく手を使っている点に着目する。紙を少し傾けたり、指でなぞったり、ページを行き来したりする一連の動作が、理解や思考を支えているという指摘だ。実際に複数の資料を読み比べる実験では、紙の方がデジタルよりも速く、正確に作業できる結果が出ている。紙は自由に配置でき、手を使って情報を整理できるため、思考を妨げにくいという特性がある。

 さらに、紙の本には「どこまで読んだか」を厚みで感じ取る感覚がある。デジタルでは数値として進捗が表示されても、同じような実感は得にくい。この違いは単なる好みの問題ではなく、理解や記憶の定着にも関わる重要な要素だと考えられている。人はページをめくる感触や本の重みといった身体的な経験と結びつけて、内容を記憶している可能性があるからだ。

 

これからの教室に求められる視点

 こうして見ていくと、これからの教育に求められるのは、紙かデジタルかを二者択一で選ぶことではないことがわかる。学びの内容や場面に応じて、それぞれの強みを生かすことが重要になる。じっくりと考えを深める場面では紙が力を発揮し、視覚や聴覚を使った理解や共有の場面ではデジタルが効果を発揮する。その使い分けこそが、学習の質を高める鍵となる。

 デジタル教科書の正式化は、単に教科書の形が変わるという話ではない。学びとは何か、理解するとはどういうことかを問い直す契機でもある。紙とデジタルの二択ではなく、両者が補い合う時代へと移行していく。その中で、どのように学びの体験を設計していくのかが、これからの教育の質を左右していくことになる。

(編集部)

広告

編集部より 記事は配信日時点での情報です。

ページトップへ