キャベツから生まれる新シルク 樹徳高理科部 学会発表・優秀賞と成果続々
キャベツの未利用部分から作られた「キャベツパウダー」を活用し、生糸の増産につなげる研究に取り組む樹徳高校理科部(顧問 広井勉教諭)が、全国レベルの学会や探究活動コンテストで成果を挙げている。10年以上にわたって受け継がれてきた高付加価値シルク創出の研究は、地域資源の活用と環境負荷の低減を両立する取り組みとして注目を集めている。
◆研究成果を全国の舞台で発表 「SDGs QUESTみらい甲子園(上越エリア大会)」では優秀賞
樹徳高校理科部では、蚕(かいこ)を使った研究を10年以上続けている。現在取り組んでいるのは「キャベツパウダー」を活用して「高付加価値シルク」をつくる研究だ。
今年3月、同部はこの研究で大きな成果をあげた。3月17日・18日に北海道大学農学部で開催された「第96回日本蚕糸学会大会」では大学研究者らに交じって登壇。「学会なので質問なども厳しかったですね」と同部部長で3年生の安田桜太朗さんと副部長の森田結翔さんは振り返った。参加した同部5人はグループでキャベツパウダー由来成分による生糸の増産について発表した。
また同月26日に新潟で開催された「SDGs QUESTみらい甲子園(上越エリア大会)」ではファイナリスト12チームに選ばれ、最優秀賞こそ逃したものの見事「優秀賞」を受賞した。
同大会はSDGsの目標達成に向けた高校生によるアクションアイデアプランを競うもの。同校理科部は「キャベツから生まれる新シルク~未利用資源で伝統を未来へつむぐ」というテーマでプレゼンテーションを行った。未利用資源を活用することで環境負荷の低減と地域産業の振興を同時に実現し、新たな循環の形を構築できると提案した。
「新潟、栃木、群馬の学校が参加した大会でしたが、群馬県の高校は探究活動が熱心で、3校(最優秀賞は高崎高校、群馬銀行賞は伊勢崎商業高校が受賞)が入賞しました」と広井教諭は話す。

【写真】「第96回日本蚕糸学会大会」に参加した樹徳高校理科部の5人(北海道大学農学部で)提供:樹徳高校

【写真】「SDGs QUESTみらい甲子園(上越エリア大会)」の受賞後に撮影(だいしほくえつホールで) 提供:樹徳高校
◆キャベツパウダーで生糸の量が変わる!
高付加価値シルク創出についての研究は、その成果が先輩から後輩へと受け継がれ、まさに「糸」をつむぐようにテーマを深化させてきた。
これまで同部ではこんにゃくの飛粉を使った研究を行ってきたが、「他の食品ではどうか」と検証を進める中で、群馬の特産品でもあるキャベツから作られた「キャベツパウダー」の存在を知ったという。
キャベツパウダーとは芯などの未利用部分を濃縮して粉末状にしたもので、GABAや食物繊維、リンなどの成分が豊富に含まれている。これを桑の葉の餌に混ぜて与えることで蚕の成長や繭層量(けんそうりょう、生糸の量)にどのような違いが生まれるかを検証した。
「結構、匂いが強いですよ」と部長の安田さんがパウダーを見せてくれた。見た目はきな粉に似ているが、袋を開くと濃厚なキャベツの香りが広がる。このパウダーを桑の葉を羊羹(ようかん)状にした餌に練り込んで蚕に与える。

【写真】キャベツパウダー

【写真】飼育中の蚕

【写真】繭
実験の結果、通常の桑の葉を使ったときに比べ、キャベツパウダーを加えたものは繭層量が約20%増加することが分かった。「生糸がタンパク質でできているということはアミノ酸の働きが影響しているのかもしれない」と考えた同部は、さらにパウダーに含まれるアミノ酸に着目。アミノ酸の構成成分である「アルギニン」、「オルニチン」、「シトルリン」に切り分けた対照実験を行った。その結果、アルギニンを含んだ餌で通常の約1.1倍の生糸量になることを突き止めた。また、オルニチンも生糸量に変化を与えたが、シトルリンは影響を及ぼさないことも分かった。
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3年生は部活動の引退を間近に控えている。部長の安田さんは「研究では失敗することも少なくなかったが、仲間と対話を重ねて粘り強く挑み続けた経験は正解のない課題に向き合う力を養ってくれた」と振り返る。
また、副部長の森田さんは「自分は大学でも繊維についての研究を深めていきたい」と語り、高校での探究活動を次のステージでも続けていくと意気込んでいる。
(編集部)
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