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樹徳中の協力で検証実験  AIは手書き答案を採点できるのか

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樹徳中の協力で検証実験  AIは手書き答案を採点できるのか

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2026.07.21 
tags:AI テスト, AI ノート, AI 学習法, AI 採点, AI 活用, Gemini, 樹徳中

 AIは直筆で書かれた記述問題を採点できるのか。今回、編集部では樹徳中学校(桐生市)の協力を得て、社会科の記述問題の小テストを使ったAI採点(AIはGeminiを使用)を試みた。担当の岡村祐一先生に採点基準を示してもらい、AIに学習させたうえで採点を実施。果たして、AIは正確に採点することができたのか。

 

まずは採点基準を学習

 樹徳中から預かった答案は42枚。まず、岡村先生の作成した採点基準の画像をプロンプトに読み込ませ、「これはある中学校の学年3年生の歴史の小テストです。添付した画像はその解答と採点基準です(大問1=5点、大問2=5点で10点満点)。この画像からテキストを抽出してください」と指示を出した。

 その後、「記載されている採点基準を参考に採点をお願いできますか。答案を一枚ずつ写真で送るので、読み取って採点してください。読み取った解答も確認用で表示し、採点の内訳と添削コメントも付けてください」と指示を出し、採点をスタートした。(個人情報保護のため、AIには個人名は読み込ませていない)

 スマートフォンで答案を一枚ずつ撮影し、AIに採点させる作業を繰り返した。最初のうちは非常に丁寧に採点していたが、20枚を超えたあたりから「休憩しましょう」のメッセージが表示され、処理速度も徐々に低下。そのまま続けると、最後は得点だけを返すようになったため、休憩をはさみながら続けた。

 

驚きのスキャニング精度

 さて、採点結果はどうだったのか。まず、直筆文字のスキャニング精度について検証した。42枚×大問2題の計84件を対象に、①答案とスキャン内容が完全一致したもの②AIが文字を補正したが、採点に影響がなかったもの(例:「普きゅう」→「普及」)③AIが文字を補正し、採点に影響を与えたもの(例:「改党」→「政党」)④文字を判別できず、AIが独自に解釈したものの4つに分類した。

 結果(グラフ)は、①が76.2%、②が4.8%で、合わせて約81%の解答を正確に読み取っていた。 一方、③は13%、④は6%だった。

 

AIの読み取った表現と生徒の答案に差異があったもの

△=採点に影響の少ないもの  ▲=採点に影響を与えるもの(編集部で判断)

 

【大問1】

生徒が書いた表現

AIが読み取った表現

普きゅう

普及(△)

改党

政党(▲)

意見

意思(▲)

発育

教育(▲)

が(▲)

政統

政党(▲)

政とう

政党(△)

布きゅう

普及(▲)

普きゅう

普及(△)

民主主義

民本主義(▲)

政じ

政治(△)

発展(展の下部にノの払い)

発展(▲)

 

【大問2】

経済園

経済圏(▲)

改策

政策(▲)

恐慌(荒のかんむりなし)

恐慌(▲)

進る

進める(▲)

始まり

強まり(▲)

 

 AIが完全に判読できずにAI自体が判断して解釈した答案は4件あった。

 特徴としては、字が乱雑だったり、字間が狭すぎたりするものは判読できていなかった。一方、文字の薄さの精度は非常に高く、白紙の答案用紙に透けて見える次の答案用紙を読み取ったり、消した跡(うっすら見える)ものも正確に読み取っているケースもあった。

 今回の答案はコピーしたもので実験したが、コピー独特のかすれなど当初心配したが、問題なく読み取っていた。

 

 

先生の採点と比較・検証

 また、同時に岡村先生に採点してもらった答案とAI採点の結果を比較した。岡村先生とAIの採点が大問1・2とも完全一致したのは8人分。合計得点のみ一致したのは2人分だった。さらに、岡村先生よりAIの方が高い点数を付けた答案(AIの方が甘めの採点)は27人分、反対にAIの方が低い点数を付けた答案(AIの方が辛めの採点)は5人分だった。

 この結果から、AI(Gemini)は全体的にやや甘めに採点する傾向があると言えそうだ。 実際、岡村先生の採点では大問1が3点だった答案を、AIは4点と採点していた。「吉野作造」を「吉野さん」と表現した採点の扱いで違いがでたとみられる。ちなみにAIは別の答案の「吉野たくぞう」という表記でも正解として扱っていた。 平均点を見ると、AIによる採点は10点満点中6.12点、岡村先生による採点は4.88点で、その差は1.24点だった。

補助ツールとしての可能性

 無料版を使用した影響もあると思われるが、膨大な枚数の処理にはまだ向いていない印象だ。ただ、直筆文字のスキャニング精度はかなり高く、それぞれの答案に対して採点根拠やコメントまで示してくれる点は大きな強みと言える。教育にとっては採点補助ツールとして十分活用できそうだ。 また、生徒自身が自習で記述問題に取り組む際、「ここまで正確なのか」の判断に迷った際には、セカンドオピニオンとして活用できる可能性も感じられた。

 

出力した採点結果の例

テスト問題

  1. 大正デモクラシーについて簡潔に説明しなさい。その際、大正デモクラシーの背景や理論的支えとなった人物とその主張の名称も書きなさい。

  2. 世界恐慌のころの、ブロック経済について簡潔に説明せよ。その際、ブロック経済を採った代表的な国を2カ国挙げで述べよ。

Geminiの採点の一例

*組 *番 の採点結果

【大問1】大正デモクラシー

読み取った解答: 「大正デモクラシーとは、民衆がさまざまな社会運動に参加した大正時代の風潮であり、吉野さんが民本主義という形で支えた。」

採点内訳:

  • 背景(教育・マスメディア等):0点 / 1点(記述なし)

  • 行動(普通選挙・社会運動等):2点 / 2点(「さまざまな社会運動に参加した」が該当)

  • 人物・主張(吉野作造・民本主義):2点 / 2点(「吉野さん」「民本主義」等正解と判断)

  • 文章の成立度:減点なし ◆ 大問1 得点:4点 / 5点

【大問2】ブロック経済

読み取った解答: 「ブロック経済とは、植民地との貿易を強化し、自国が他国の経済難を防ぐことをいい、イギリス、フランスなどがブロック経済を採った。」

採点内訳:

  • 国名(イギリス・フランス・アメリカ):2点 / 2点(「イギリス」「フランス」が正しく入っています)

  • 貿易強化(自国と植民地等):2点 / 2点(「植民地との貿易を強化」が該当)

  • 簡潔(他国への高関税):0点 / 1点(他国への高い関税についての記述がないため)

  • 文章の成立度:減点なし ◆ 大問2 得点:4点 / 5点合計点数:8点 / 10点満点

添削・アドバイスコメント

  • 大問1について全体的にとてもすっきりと、要点を押さえてまとめられています。「吉野作造」が「吉野さん」と親しみを込めた(?)書き方になっていますが、人物の特定としては間違いないため、優しく丸にして良いかと思います。満点(5点)にするための唯一の不足は、問題文で指示されている「背景」の部分です。背景に「教育の普及やマスメディアの発達によって、政治への関心が高まったことで…」というニュアンスを付け加えれば完璧でした。

  • 大問2についてもこちらも文章の構成が非常に上手です。「イギリス、フランス」という代表国を挙げ、「植民地との貿易強化」「経済難への防ぐつもり」という重要な要素をきれいにつなげています。あと1点プラスして満点にするためには、経済圏をブロックする(他国を排除する)ための具体的な手段である「それ以外の国からの輸入商品には高い関税をかける」という障壁の部分を記述に組み込めるとバッチリでした。

(本記事はタブロイド判「みんなの学校新聞」(26年7月号)に掲載されたものです)

(編集部)

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編集部より 記事は配信日時点での情報です。

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