【紙上実験】AIは学習の敵か味方か 授業ノートからAIで「自分専用問題集」
AI(人工知能)を活用した学習法が広がる中、実際に「授業ノートから問題集を作る」実験を行ってみました。便利さを実感する一方で、子どもの学び方そのものを考えさせられる結果にもなりました。
まずはじめに、学校の授業で書き込んだノートをスマートフォンで撮影します。
【画像】Geminiに読み込ませた授業ノート。AIは直筆の手も正確に読み取り、問題を作成した
撮影した画像をグーグルの生成AI「Gemini(ジェミニ)」にアップロードし、「このノートからテキストを抽出して、問題を作ってください」と指示しました。
するとAIは、ノートの内容をもとにしたクイズ形式の教材を短時間で作成。重要語句を問う問題などが自動生成されました。
ただ、AIが作った問題を解くだけでは主体的な学習にはつながらないので、ここは「スルー」しました。目的はAIの作った問題の真偽を学習者自らが確認する作業を通じて、学習者本人が学びを得ること。
そこで「テキストの問題と解答の形式で出してください」と指示し直しました。
こうして出力された問題をWord(ワード)にコピーして印刷しました。
Geminiの作成した問題
ノートの内容をすべて網羅し、暗記シートやテスト勉強としてそのまま使える「問題・解答形式」のテキストに整理しました。赤シートで隠したり、ノートを隠しながら覚えているかのチェックに使ってみてください。
【問題編】
第1章:日清戦争への道のり
Q1. 1894年、朝鮮半島で「東学」を信仰する団体を中心として起きた、農民の内乱を何といいますか。
Q2. 甲午農民戦争をきっかけに、朝鮮の支配権をめぐって現地へ派兵し、激しく対立することになった二つの国はどこですか。
Q3. 甲午農民戦争から発展し、1894年に勃発した日本と清(中国)との間の戦争を何といいますか。
第2章:下関条約の内容
Q4. 1895年、日清戦争の講和条約として山口県の都市で結ばれた条約は何ですか。
Q5. 下関条約の第1条で定められた、清が認めるべき内容は「何の独立」ですか。
Q6. 下関条約によって、清から日本へ譲り渡される(割譲される)ことになった、主に3つの地域(半島や島々)はどこですか。
Q7. 下関条約で、清が日本に支払うことになった賠償金はいくらですか(単位も含めて)。
Q8. 清から支払われた巨額の賠償金を元手にして、日本がのちに建設した官営の施設は何ですか。
第3章:三国干渉と風刺画
Q9. 日本が遼東半島を獲得したことに対し、ロシア・ドイツ・フランスの3カ国が「清へ返還すること」を要求してきた出来事を何といいますか。また、これによって日本国内ではどの国への対抗心が強まりましたか。
Q10. 当時の風刺画(ビゴー作)で、日本と清が「朝鮮」という魚を釣ろうと競い合っている様子を、橋の上からじっと見つめて機会をうかがっている国はどこですか。
【解答・解説編】
第1章:日清戦争への道のり
A1. 甲午農民戦争(こうごのうみんせんそう)
o 解説: 東学を信仰する農民たちが起こしたため「東学党の乱」とも呼ばれます。
A2. 中国(清)と日本
o 解説: 朝鮮からの要請で清が出兵し、それに対抗して日本も出兵したことで衝突が不可避となりました。
A3. 日清戦争(にっしんせんそう)
o 解説: 1894年に始まり、翌1895年に日本の勝利で終結しました。
第2章:下関条約の内容
A4. 下関条約(しものせきじょうやく)
o 解説: 山口県の下関で、日本の伊藤博文や清の李鴻章らの間で結ばれました。
A5. 朝鮮(ちょうせん)の独立
o 解説: 清が朝鮮に対する宗主権(支配権)を完全に放棄し、独立国と認めさせることが狙いでした。
A6. 遼東(リャオトン)半島、台湾(たいわん)、澎湖(ほうこ)諸島
o 解説: 日本はこの時初めて海外に本格的な領土(植民地)を持つことになります。
A7. 2億両(テール)
o 解説: 当時の日本の国家予算の数倍にあたる、極めて巨額の賠償金でした。
A8. 八幡製鉄所(やはたせいてつしょ)
o 解説: 福岡県に建設され、日本の重工業・近代化の基盤となりました。
第3章:三国干渉と風刺画
A9. 三国干渉(さんごくかんしょう) / ロシアへの対抗心
o 解説: 力の差から日本は要求を受け入れて遼東半島を返還せざるを得ず、「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」を合言葉にロシアへの敵対心を強めました。
A10. ロシア
o 解説: 日清が争っている隙を狙って「漁夫の利」を得ようとするロシアの東アジア進出の野心が描かれています。
AIが作成した問題をうのみにせず、教科書や参考書で検証・確認するのが、この学習法の肝です。こうすることで、批判的な態度でAIと向き合うことが可能になり、調べる過程で学習者が知識を吸収できるはずです。
ところが、実際に確認してみると、AIの出力は想像以上に正確でした。むしろ「間違い探し」をする余地が少ないほどで、学習者にとっては「程よい誤り」があった方が、かえって理解を深めるきっかけになるのではないかとも感じました。
検証・確認が終わったら、仕上げは、AIが作った問題を自分で解き直してインプット。自分のノートから手軽に問題を作成し、復習までを一連で行える点は大きな利点でした。
一方で、この学習法はAIを使うこと自体が目的化してしまう懸念もあります。AIを「学びを深める補助ツール」としてどう使うか。今回の実験は、そのバランスの重要性を考えさせる結果になりました。
◇専門家に聞く AI学習法 柴田教授(群大情報学部)はどう見る学習効果は否定できないが、弊害にも目を向けて
AIを活用した学習には良い面もありますが、一方で、子どもたちがAIを使うこと自体を楽しむようになってしまう懸念があります。これまでは、先生や保護者に見てもらうまで時間があり、その間に自分で考える時間がありました。しかしAIはすぐにフィードバックを返してくれます。その即時性は大きな魅力ですが、常に反応を求めるようになると、自分でじっくり考える力が弱くなってしまいかねません。
特に数学は一つの問題に時間をかけて考え続けることが大切です。フィードバックが次々に返ってくる環境に慣れすぎると、「考え抜く力」が育ちにくくなるのではないかと気になります。効率やタイパばかりを重視する姿勢につながる危険性もあるでしょう。
ただその一方で、これまで勉強に興味を持てなかった子どもが、タブレットやAIをきっかけに学習へ参加するようになるなど、学びへの入り口としての効果も確かにあります。
本来、学びはノートを書き、それを自分の言葉でまとめたり、人に説明したりする中で深まっていくものです。AIを使うこと自体が目的化し、手段と目的が逆転してしまわないようにすることが大切だと思います。

柴田 博仁
群馬大学情報学部教授。専門はインタラクションデザインと認知科学。秋田県出身。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)。富士ゼロックスで研究職を務めた後、2020年より群馬大学社会情報学部(現・情報学部)教授。文部科学省の「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」の委員等も務める。
(本記事はタブロイド判「みんなの学校新聞」(26年7月号)に掲載されたものです)
(編集部)
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