【緊急特集】どうなる定員減 伝統校の入試への影響は?
本日付の上毛新聞の朝刊で「前橋・前橋女子・高崎・高崎女子」の学級減が検討されていることが報道された。学級減を検討している背景は何か、また実現された場合、高校入試にはどのように影響していくのか。編集部では過去の資料を基に分析をこころみた。
■今回の学級減は「高校教育改革推進計画」の中での位置づけ
群馬県の中学校卒業者数は、平成元年をピークに、大幅に減少。公立高校全日制の1学年学級数は、平成元年度に506学級、1校平均約7学級であったのが、現在は328学級、1校平均5学級になっている。「今後、中学校卒業者数は一段と減少し、平成43年には1万5千人を切る見込みだ」(グラフ)と県教委は説明する。
県教委ではこれらの実情を踏まえ、「高校教育改革推進計画」(計画期間:平成24年度~平成33年度)を策定した。教育環境の変化や少子化の進行に対応し、教育水準の維持・向上を図るのがねらいだ。
県教委ではこの計画により、特色ある高校教育と県立高校の再編整備を推進し、時代を切り開いていくことのできる人材育成につなげたいとしている。
今回、前橋・前橋女子・高崎・高崎女子の伝統校4校の学級減が検討されているとの報道もその流れの一部と位置付けることもできる。
県内のある進学校の教諭も「県の教育広報誌『教育ぐんま』でも、人口減少にともなう学級減は不可避であることが示唆されていた。こういう話が上がってくることはやむを得ない」と話す。
■前橋・高崎地区は緩やかな人口減少 それでも学級減に踏み切る背景
上毛新聞の報道によれば、県教委は平成30年度以降、現在320人定員の前橋、前橋女子、高崎、高崎女子で1学級(40人)ずつ削減することなどが議論されているという。県教委は6月中にも30年度の削減案をまとめ、公表する見通しだ。
とはいえ、前橋・高崎両市の子供の人口減少率は全県の減少率から比較すればまだ緩やかだ。群馬県が公表している「学校基本統計速報(学校基本調査の結果速報)」で市域別の生徒数で分析すると、全県での現高1を100とした場合の現小2の人口は85.5%だ。これに対し、前橋市は90.1%、高崎市では97.4%にとどまる。仮に、高崎高校・高崎女子高校に関していえば、定員減が実現されたとすると、競争が激化するのではないか。
(グラフ)前橋・高崎地区の生徒数推移
これについて、上毛新聞は県教委関係者の話として、2市の伝統進学校の定員削減は、生徒の学力水準を維持するとともに、他校のレベル向上を図る狙いもあると報じている。
実際、進学校指導経験のある元県立高教諭の話によれば「1学級分くらいはかつての伝統校の求めるレベルより低い学力の生徒が入ってきている」という。 「伝統校の倍率を維持することで、大学入試での競争力を失速させたくないのではないか」と指摘する塾関係者もいる。
前橋、高崎両市の4校は県立高のうち大規模校の分類だ。仮に今回削減が実現すれば平成9年度に9学級から8学級になって以来の定員減となる。
■21年前の大規模改革を振り返る
では、平成9年度(1997年度)の入試は前年度入試に対して、どのような変化があったのだろうか。
編集部は当時の最終志願状況を入手し、比較表の作成を試みた。入試形態は、現制度の前期・後期入試ではなく、当時は推薦入試制が敷かれていた。したがって、本表では定員を推薦内定者を除いた人数で示している。
(表)平成8年度(1996年度)-平成9年度(97年度)の4校の定員と倍率の変化
(クリックすると画像は拡大します)
人口減を見越したうえでの定員数削減だけに、急激な倍率増にはなっていないが、軒並み前年に比べて競争は激化していることが分かる。
数値を見る上で留意が必要なのは、現在と公立高校の入試制度が若干異なるという点だ。当時は学区制の敷かれていた時代だ。現在のように全県一学区制ではないため、学区外(市域外)からの流入受験者は今より少ない。
この表をみて、ある塾関係者は「現在の全県学区の状況だと、市域外の受験者もいる。前橋・高崎の伝統校4校は人気校だけに、当時より競争が激化する可能性はあるのではないか」と分析する。高崎地区では生徒数自体大きな減少傾向にはないことを考慮に入れれば、「高崎高校の倍率が跳ね上がるかもしれない」(前出)と予測する。
いずれにしても6月には県教委から詳細が公表される。押し寄せる人口減少の波。それに加えて、2020年は大学入試も大きく変わる。日本の教育界は今、大きなうねりの中にある。群馬県も例外ではなく、その渦中にある。
(編集部=峯岸武司)