お前はまだグンマの交通安全条例を知らない❷ 自転車ヘルメット努力義務化編
今年の4月1日から群馬県交通安全条例が改正された。改正の柱は①自転車保険の加入義務化と②自転車用のヘルメット着用の努力義務化だ。
今回は自転車用ヘルメットの着用の努力義務化について、条例改正の背景とポイントを群馬県道路管理課交通安全対策室に聞いた。
お前はまだグンマの交通安全条例を知らない❶ 自転車保険加入義務化編
🚴 ヘルメットが救う命ー着用努力義務化の背景
今年6月、伊勢崎市内の中学校に通う中学2年生のタカヤさん(仮名)は部活の練習で学校から華蔵寺公園への移動中に自転車で事故を起こした。交差点での出あい頭で自動車と衝突し、救急車で病院に搬送される事態になった。
「幸い、手を怪我した程度で済んで、本当に良かったです」とタカヤさんの母親は事故当時を振り返る。
タカヤさんが自動車との激しい衝突にも関わらず重傷にならずに済んだのは、「ヘルメット」を着用していたことと、背負っていたカバンがクッションになってくれたことが大きい。
警察庁の統計では2018年に発生した全ての交通事故のうち、自転車乗車中の負傷者数は年間約8万人で事故全体の16%、死者数は年間453人で13%を占める。命を落とすかどうか。そのカギを握るのはヘルメットの着用の有無だ。2020年に警察庁が行った調査がそのことを裏付ける。この調査によると、自転車乗用中の死者の致命傷部位は頭部が63%で圧倒的だ。致死率はヘルメット非着用者に比べて着用者は約3分の1だ(下グラフ参照)。ヘルメットをかぶることは確実に命を守ることにつながる。
(警察庁の資料から作成)
🚴 ヘルメット着用率向上にむけての県の取り組み
県道路管理課交通安全対策室の木内室長は「改正前の条例ではヘルメット着用の規定がありませんでした。改正で、自転車利用者はヘルメットを着用するよう努めなければならなくなりました」と変更のポイントを説明する。
「小学生や中学生は学校からヘルメット着用を指導しているが、高校生になると着用者は少ない。自転車事故に占める高校生の割合は3割以上と高い」(同室長)
条例改正に伴い、今年4月、県教委の取り組みで、高崎高校と伊勢崎興陽高校の2校がモデル校として指定された。自転車通学をする生徒全員にヘルメットを配布。現在90%ほど着用しているという。
別の県立高校でも1学期中にヘルメットの共同購入の募集を実施。1学期中に配布を完了した結果、2学期からの着用率があがった。しかし、まだ学校間の着用率に差があり、条例が改正されたことを周知していくことが課題だという。
県道路管理課交通安全対策室では県教委を通じてチラシを配布したり、県職員が「GMET」(ジーメット)と呼ばれる自転車活用推進啓発チームを組織し、駅や高校に出向き、ヘルメットの着用を促すための啓発活動も行っている。12月からは県内の一部スーパーマーケットで条例改正を周知する店内放送も始まっている。
動画 自転車ヘルメット着用を促す山本知事のメッセージ
「朝の出勤時、車を運転していると、自転車のマナーを守れていない中高生をよく見かけていたので、無謀な運転をしないように息子には普段から言って聞かせていたんですが…。さすがに事故にあって身に染みたようです」。こう話すのはタカヤさんの母親だ。
自転車は気軽に利用できるため、意外と見落とされがちだが、その運転には自動車と同様、法令上の責任が伴う。ヘルメットの着用ももちろんだが、交通事故のリスクを回避するためには、まず自転車そもそもの「乗り方」を見直す必要がある。
(編集部=峯岸武司)
(参考)内閣府が発行している中高生向け「自転車安全講座」冊子(表紙画像をクリックするとpdfで内容を閲覧できます)