中高生の自転車事故、群馬が全国1位
自転車の危険運転や整備不良などによる事故が多発していることから、昨年 6 月、道路交通法が改正され、中学生から対象となる14 歳以上の危険運転常習者には罰則が導入された。
登下校だけでなく日常の手軽な移動手段として、生徒が自転車を利用する機会は多く、自転車通学中の中高生が被害者になる事故、また、加害者になる事故について目にする機会が増加している。
そんな状況を受けて、「自転車の安全利用促進委員会」は、委員会メンバーの古倉宗治氏(三井住友トラスト基礎研究所研究理事)と、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)の 協力の元、中高生の自転車事故実態について調査した。
■自転車事故の割合が高いのは「シニア」ではなく「中高生」
ITARDA の資料によると、自転車事故が比較的多いイメージを持たれているシニア層と比べ、中学生および高校生の事故頻度が約4~5倍高いことが分かった。
また、調査の結果、そのうちの約7割が自転車側の法令違反によるものだというデータも明らかとなった。「学校などでの交通ルールマナーの講習などを充実する必要がある」と報告書はまとめている。
■中高生の自転車事故率ナンバー1はなんと「群馬県」!
また委員会は、全国の中高生の事故状況を調べるため、都道府県別の中高生の事故件数・生徒数をもとに1万人あたりの事故率を算出した。その結果、中学生と高校生の両方で群馬県が事故の割合が高いことが明らかになった。中学生では、1万人あたり、41.1人、高校生では97.7人という結果になった。中学生の全国平均9.7人、高校生の全国平均28.0人と比べるとかなり高いことがうかがえる。
一方、大都市圏では、交通事故件数は多いものの、通学に自転車を利用する機会が少ないこともあり、中高生1万人あたりの事故数では比較的割合の低い結果となった。
■なぜ群馬が全国1位になってしまったのか?
群馬県は自家用乗用車数(千人あたり)が、673.8台と全国1位だ。また道路実延長(総面積1㎢あたり)も5.47kmと全国9位であり、全国平均を大幅に上回っている。群馬県警の資料では免許の保有率も全国1位。全国的にも自動車交通の盛んな地域だ。
そのため、自動車による交通事故が多く、交通事故発生件数人口10万人あたり全国5位という状況だ。自転車の事故は「自動車との事故」が84.4%を占めることから、「自動車事故が多いために、結果的に自転車の事故件数も多くなっているのでは」と報告書では分析している。
可住地100㎢あたりの中学校数は7.65校(全国31位/全国平均は8.7校)、高校数は3.56校(同28位/同4.08校)と全国平均を下回っている。このため通学距離が長く、その交通手段として自転車を利用している生徒が多い。中高生の自転車通学が盛んであれば、交通事故に巻き込まれる可能性も必然的に高くなる。特に高校生は全県一学区になってから、自宅からの距離が遠い学校に通う生徒も増えた。
この結果を見て、太田市に住む42歳の女性は「桐生まで自動車で通勤しているけれど、通勤時間帯はこっちも焦って運転しています。また、登校時間ギリギリの生徒も突然、道路をつっきたりと結構、無謀な自転車の乗り方をしています。だから、この結果は恥ずかしいけれど、納得してしまいました。自分も気を付けなければいけませんね」と話した。
自動車のドライバーの意識ももちろんだが、中高生も自転車の運転には危険が潜んでいることをしっかり認識し、汚名を返上したいところだ。
(編集部=峯岸武司)
※記事中の資料は、「自転車の安全利用促進委員会」の許諾を得て使用しています。
学校や塾などで啓発用に→調査の詳細