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英語の平均点が大幅に下がったワケー群馬県公立高校入試

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英語の平均点が大幅に下がったワケー群馬県公立高校入試

高校入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2024.05.13 
tags:心水塾, 群馬県 英語 平均点, 群馬県 高校入試, 群馬県 高校入試 英語, 群馬県教育委員会 入試制度, 群馬県教育委員会 公立入試

今年の公立入試でひと際平均点が低かった英語。その原因を探った。

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「英語は得意教科で普段の模試などでは時間が余る方だったが、本番の入試では時間ギリギリだった。過去問に比べ絶対的に難しかった」

 高崎高校1年の石井然くんは今年の公立高入試の英語をこう振り返る。

 今年の英語の平均点は44.9点。昨年より13.9点も下がった。40点台になったのは2016年以来だ。

 リスニングの一部に「1回読み」が導入された点が例年との大きな変更点。大問数も小問数も若干減ったが、ほぼ例年並みのボリュームだ。要求される解答の分量も昨年度とは大きく変わらず、問題構成もほぼ昨年と同様になっている。

 

 心水塾(本部・前橋市)の大井泉教務部次長は「大枠で見ると出題の枠組みは例年を踏襲しているが、細部を見ると内容や出題の仕方で思考力・表現力を要求されるものが増え、難しくなっている」と分析する。

 実際、リスニング問題の「1回読み」はどう影響したのか。

 試験を受けた石井くんは「空港の問題が難しかった。1回しか読まれないのに、とても長く、情報が整理できなかった」と印象を語る。

<問題>

これから,ABC 空港のフライト情報に関するアナウンスが流れます。あなたは成田空港に帰るところです。流れてくるアナウンスを聞き、あなたの行くべき搭乗ゲートを、ア〜エの中から選びなさい。英文は1度だけ放送されます。では、始めます。

<放送された英文>

Hello, this is ABC airport. Because the weather is bad, we will change some of our flights.  Flight 123 to London was going to leave from Gate A, but it has changed to Gate D. The flight time hasn’t changed. Flight 130 to Narita was going to leave from Gate B, but now it has changed to Gate C. Finally, Flight 152 to Sydney is going to leave from Gate A and the time has changed, too. Flight 152 is going to leave two hours from now. Please check your gate and please enjoy your flight, thank you.

 問題を眺めるとボリュームのある英文の中にゲート名や便名、行き先が複数登場しているのが分かる。

「一回しか読まれないことでハードルが上がったが、さらに聞こえた内容を理解した上で答えなければいけない点で難化している。リスニングも含め、設問に対してしっかり考えないとできない問題が増えている」と大井次長は分析する。

 たとえば、大問5の対話文の問題。「(1)の時系列で並べ替える問題は昨年も出ているが、しっかりと内容を捉えていないとできない。(2)、(3)の選択肢の問題についても前後の文を表面的に見れば容易に答えを選べるという問題ではなく、文脈をしっかり追う必要がある。こういう部分で時間がかかった受験生も少なくなかったのではないか」(大井次長)

 実際、大問別の正答率を見ると、大問を追うごとに正答率が下がっている(グラフ)。「後半の問題が難しかったという要因もあるが、頭を使う問題がちりばめられた結果、時間不足に陥った可能性がある」と大井氏は推測する。

【グラフ】県教委の発表をもとに編集部で作成

 県教委は「指導要領の変化に対応し、知識・技能を活用し、課題解決するために必要な思考力・判断力・表現力をより重視して作成した」と出題意図を説明する。そのねらい通り、全体的に書く分量が増え、思考力や表現力を求められる問題が増えている。

 受験した石井くんも「問題の出され方が変わった。ただ見つけて書き抜くだけであれば、上位の子は簡単にできてしまうと思うが、条件に沿うようにアレンジする要素が増えたと思う」と振り返った。

 たとえば大問6の長文問題の(3)の手紙を書く問題はthat節につながるように言い換えたり、語数に合わせて書き換えたりが要求されており、文法力や表現力がないと太刀打ちができない。

 大問7の英作文の問題も語数が20~30語と多い上、「自分のアイデアを書く必要があり、in these waysにつなげて書くので、アイデアを複数書く必要に気づかなければいけない」(大井氏)。

 

 思考力や表現力が求められる出題が増えた結果、得点分布にも“地殻変動”が起きている。単純に平均点が下がったわけではないと大井氏は説明する。

「印象的だったのは、分布の形の変化。英語の得点分布は長らく『M字型の分布』で鮮明な二極化グラフだった。それが今年は大きく崩れた形になっている。低得点層の山が30点台から20点台に下がり、80点以上の高得点層がごっそりいなくなった」と指摘。英語が得意な層でも「考える力」のふるいにかけられた。

【グラフ】県教委の発表をもとに編集部で作成

「英語4技能(話す・聞く・読む・書く)のバランスの取れた指導と言われているが、『書く』ことが不足している印象はある。一方で入試問題では書かせることにウエイトが置かれている。4技能を均等にやっていくのは前提だが、普段から英語で表現することを意識して学習していく必要がある」と大井氏は今年の中3生にアドバイスする。

(編集部)

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