いまさら聞けない「部活動の地域移行」って何
13日、Gメッセ(高崎市)で「ぐんま中高校生のための部活動改革ワークショップ」行われた。 部活動の地域移行が議論される中、その主役である中高生から、よりよい地域スポーツや文化芸術活動のあり方などについて意見を語ってもらおうという試みだ。そもそもどういう背景で部活動の地域移行が議論されるようになったのか。その経緯を振り返る。
■「部活動の地域移行」の議論のこれまで
学校部活動の地域移行の議論は2018年3月にスポーツ庁が発表した「運動部活動のあり方に関する総合的なガイドライン」が始まりだ。以降、文部科学省や経済産業省なども巻き込みながら、理想的な形を模索してきた。
22年12月、スポーツ庁は「学校部活動および新たな地域クラブ活動の在り方などに関する総合的なガイドライン」を公表。国としての今後の部活動運営に関する方向性を示した。
これを受けて、群馬県は昨年7月に「学校部活動の地域連携および地域クラブ活動への移行に向けた推進計画」を策定した。
■なぜ「部活動の地域移行」なのか?
①少子化の中でも、生徒がスポーツや文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を保障するため
地域移行の大きな柱の一つは、少子化の中でも生徒がスポーツや文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保することだ。
昨年10月時点での群馬県の15歳人口は17,280人。これに対して1歳人口は11,477人だった(グラフ)。これは14年後には15歳の人口が約35%減少することを意味する。経済産業省「未来ブカツ最終提言」によると、群馬県は2030年に中学生人口が41,197人になると予測されている。21年と比較すると19%減で、秋田県、奈良県に次いで全国3位の減少率だ。
(出典:ぐんま中高校生のための部活動改革ワークショップ内の資料より)
少子化の進行で生徒数や教職員数が減少すれば、学校内にやりたい部活動がなくなってしまう事態が起こりうる。こうした事態を回避し、子どもたちのスポーツ・文化芸術活動を保障するのが地域移行の目的の一つだ。
②子どもたちの多様化するスポーツニーズへ対応するため
また、子どものスポーツニーズも多様化している。たとえばオリンピック種目であるスケートボード、サーフィン、BMXなどの競技をやりたい場合、中体連(20競技)、高体連(34競技)の中にはない。
スポーツ庁が平成29年度に発表した報告書によれば、運動部に所属していない男子の42.9%、女子の59.1%が、「好きだったり、興味のあるスポーツができれば運動部に参加したい」と答えている。こうした潜在的なニーズに応えようという側面も部活動改革に含まれている。
③教員の働き方改革を進め、学校教育の質を向上させるため
地域移行のもう一つの柱は学校の働き方改革を推進し、学校教育の質を向上させることだ。
休日の部活動は教員の献身的な勤務によって支えられ、これが教員の長時間勤務の要因の一つになっている。また、担当する競技の指導経験がない教員にとって、心身ともに大きな負担となっている現状があり、生徒からは「専門的な指導が受けられない」という声もあがる。地域移行を推進することで、こうした課題の解決を図るというねらいもある。
④地域のさまざまな世代との交流で地域コミュニティーの充実を図るため
室伏広治スポーツ庁長官が「(地域移行が進めば)学校以外のコミュニティーで社会性を身につけられる」と言っているように、地域の子どもたちは、学校を含めた地域で育てるという意識が進めば、スポーツや文化芸術活動を通じてさまざまな世代交流が生まれる。こうした交流の中で地域コミュニティーの充実を図ることも期待されている。
■群馬県の今後の動き
県教委総括コーディネーターの小出利一氏は、「グンマ未来地域クラブ活動レター(第1号)」の中で、「戦後、学校教育として発展し、日本スポーツ界を下支えしてきた学校部活動を地域に移行するというのはスポーツ界にとっても大改革」と述べている。解決しなければならない問題は山積しているが、「できない理由をいくつ並べても前に進むことはない」(同氏)と部活動改革の必要性を強く訴える。
今後、県では地域移行についての各市町村の意見を集約しながら、12月にワーキンググループで話し合いを行う。第2回の「群馬県地域クラブ活動体制整備検討委員会」が来年2月に開催される予定。県教委ではこれらの会議を通じて26年度以降の方向性を示していくとしている。
(編集部)