こどもと健康 受験前のエナジードリンクに注意
福岡県でカフェインの多量摂取による中毒死が発生した。死亡したのは去年。九州に住む20代の男性で24時間営業の店舗に勤務していたという。眠気を覚ますため、男性は日常的にカフェイン入り清涼飲料水(エナジードリンク)を飲んでいたという。国内での「カフェイン中毒死」は初めて。
テレビ朝日の報道に答えた福岡大学の法医学教室の久保真一教授は「薬物にさらされた経験の少ない若者は、それほどたくさん飲んでいなくても、致死中毒濃度に達する場合がある」と指摘する。
学習塾の教室でも、ここ数年、受験シーズン前にエナジードリンクを飲む中高生の姿を目にするようになった。睡眠時間を削って勉強しなければならないこの時期に、カフェインを多く含むエナジードリンクは眠気覚ましのうってつけのアイテムなのだろう。
国内のエナジー系ドリンク市場もここ数年、右肩上がりに売り上げを伸ばしている。富士経済の調べでは2011年に100億円程度だった市場規模は2013年の段階で355億円と3倍以上に膨らんだ。
コンビニの店頭にも並び、中高生が手軽に手に入れられる。パッケージも若者受けするようなデザインになっている。ジュース感覚で飲んでいる中高生もいるが、含まれているカフェイン量は1本につき80~140mgとされる。コーヒー1杯に相当する量だ。
日本にはカフェイン摂取量に関する規制はないが、カナダでは成人が1日あたりにとってよいとされるカフェイン摂取量は400mg、幼児では45mg。この基準で考えると中高生であれば1日1本の摂取は許容の範囲内と推測されるが、別の方面から子どものエナジードリンクの服用を指摘する声もある。
2015年2月、アメリカのエール大学のCAREプロジェクトの研究グループが小児科分野の雑誌「アカデミック・ペディアトリクス」でエナジードリンクを大量に飲む子供は注意欠如・多動症(ADHD)のリスクが7割高まると報告した。
研究グループは2011年、コネチカット州の27地区の中学校を対象とした調査データから、12校1649人の生徒を無作為に抽出して分析した。平均年齢は12.4歳。
それによると、加糖のソフトドリンクを飲む本数が1本増えるごとに、ADHDのリスクは14%増加した。中でもエナジードリンクはADHDのリスク増加に強くかかわっていたそうだ。飲むとリスクは66%高まっていたと報告している。
ADHDの子供は、学校の成績が悪かったり、友達との関係がうまく築けなかったり、けがをしやすい傾向があることが、研究から分かっている。
研究グループは、子供たちが飲む加糖ドリンクは減らし、エナジードリンクを飲むのは控えるように提言している。
厚労省は過去10年、カフェイン中毒による死亡例はなかったとしている。またエナジードリンクのカフェイン含有量にも国内規制はないという。
受験シーズン前。もうひと頑張りのための1本と思って、つい手にしてしまいがちなエナジーンドリンク。あえて頼らず、適度な睡眠を心がけ、計画的に学習することのほうが、合格にも健康にもよさそうだ。
(編集部=峯岸武司)
※一部、インターネットの記事を引用して構成しています。
引用先:www.mededge.jp/a/pedi/9007