命の価値ってなんだろう? 模擬医療カンファに挑戦ー樹徳中イブニングスクール
桐生市稲荷町の樹徳中学校(辻村好一校長)で10~12日夕、小学校5、6年生と保護者を対象にした恒例のイブニングスクールを開いた。10日は「医療倫理・医系進学講座」の公開講座があり、参加者は医師になったつもりで医療現場で起きた事件の対処法を話し合う〝模擬カンファレンス〟に挑戦。「命の価値とは何か」について考えを深めた。
小学生28人と在校生(中高一貫1~4年36人)が数人ずつ9班に分かれて参加。同講座1期生で群馬大学医学部付属病院小児科の西澤拓哉医師(36)を迎え、同校の福田肇教諭の司会で講座が始まった。
テーマは「お医者さんになったつもりで医療現場で起きた事件を解決してみよう」。仮死状態で生まれた水頭症の女の子の赤ちゃんが、脳圧を下げる緊急手術で一命を取り留めたところから始まる。
赤ちゃんには心奇形があり、手術しなければ死亡する。育てられるか不安がる母親と、重い障害を抱える負担から手術見合わせを求める父親。「みなさんが医師ならどうしますか」と参加者に問いかけた。
「せっかく生まれた命。手術したほうがいい」「障害があったとしても(状況や受け止め方は)人によって違うので手術すべき」「両親の負担を考えると手術しないほうがいい」「もう少し(将来に)希望がある赤ちゃんを助けるほうがいい」などさまざまな意見が出た。
小児科医として医療現場を知り、2児の親でもある西澤医師は「親と一緒に悩むと思う。『育てられるか不安』と言う母親には、実は『育てたい』という意思があるのでは。できれば両親、祖父母そろってお話をさせてもらう。上のお子さんにも『どう思う?』と聞く思う」との見解を述べた。
福田教諭は「この世に生まれてきたということは、それなりの意味があるのでは。生きているだけでも意味があるのでは。社会のみんなで助け合って、その子を最大限生かそうという社会にしたい。かけがえのない命そのものに価値を見い出せる社会にしていきたいなと考える」と講座を締めくくった。
参加した前橋市立桂萱東小5年の新井結大(ゆいと)さんは講座終了後、桐生タイムスの取材に「生まれた命は大切で、命を救うのが第一。両親が育てるのが大変なら、子育てをしたい人たちの力を借りて、たくさんの人にかかわってもらえばいい」と持論を語った。
そのうえで「将来なりたい職業はいろいろあったが、今回の講座を聞いてお医者さんという職業に興味をもった。きょうの話に心を揺さぶられた」と目を輝かせていた。