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非認知能力育成の研究校 玉村南中の取り組み① 「縦割り活動」

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非認知能力育成の研究校 玉村南中の取り組み① 「縦割り活動」

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2024.09.25 
tags:玉村南中, 玉村南中 全校学活, 非認知能力 育成, SAH

【写真】非認知能力の評価・育成事業の研究校としての取り組みを説明する吉田校長(同校・校長室で)

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 群馬県では2023年度から非認知能力の評価・育成事業に着手している。その研究校の一つが玉村町立玉村南中学校(吉田知宏校長)だ。

 研究校の指定を受け、様々な試みを続ける同校だが、吉田校長は「非認知能力の定義とか、そういう難しいことは考えず、どんな力をつければ生徒が伸びるのかという視点で実践しています」と話す。教員間で話し合いの場をつくり、非認知能力の育成について、①自分で気がついて、考え、正しく判断して実践する「自律する力」、②様々な人とつながったり相談したりして発信できる「つなぐ力」、③粘り強く最後までやり遂げる力である「グリット」の三つにしぼり込んだ。

 具体的に同校がどのような実践を行っているのか、2回に分けて報告する。

 

多様な価値観に触れるチャンス

 同校の取り組みの一つに「全校学活」がある。各クラスに1年生から3年生までが混ざり、1班5~6人のグループをつくって「縦割り」の学級活動を行っている。

 この「全校学活」は、昨年度の生徒会の「校則を変えたい」という熱い思いから生まれたものであり、今年度は「縦割り」でも実施している。「全校共通したテーマで学活を行う学校があっても、縦割りで実施しているところはほぼないのではないでしょうか」と吉田校長は説明する。

 3年違うと考え方も異なるため、多様な価値観に触れる機会にもなるし、部活以外で関わりを持つことのない先輩や後輩と知り合うきっかけにもなり、生徒にも好評だという。

【写真】全校学活の様子(玉村南中ホームページより)

 

縦割りの学級活動で生徒の成長を実感

 全校学活での主なテーマは「理想の玉村南中をつくるためにはどうればいいか?」ということ。学活を通じて、生徒たちから様々な意見を吸い上げ「全員が笑顔」というスローガンも決めた。「今までのような難しい言葉ではなく、シンプルな5文字でみんなが覚えられるスローガンになったと思います」(吉田校長)。

 このスローガンを実現するために、生徒会が「学校のどこを変えればよいか」というアンケートを実施。集約した意見を生徒会本部が委員会や部活動に投げかけて実践している。

 10月の体育祭では生徒会で種目を作り、それを「縦割り」で競うそうだ。この種目づくりも「全員が笑顔」になるためにはどんな種目をすればよいかという視点で生徒主体で動いている。

【写真】体育祭での生徒会種目の説明をする生徒会(玉村南中ホームページより)

 

「縦割り」の全校学活はすでに3回行われた。この学活を行うためには各クラスの司会者が必要で、班の中にもリーダー役がいないと話し合いがうまく進まない。生徒たちがこういう経験をする中で、吉田校長は子どもたちの成長を実感している。「(外部のイベントや行事で)物怖じせず、手を上げて答えるのは、うちの学校の生徒が多い気がします。積極的に発言する様子を見ていると本当に変わってきていると思います」。

 

生徒の手で〝第二の校歌〟を作ろう!

 4月、生徒会のメンバーから合唱コンクールなどの場で「全校みんなで歌える歌がほしい」という声があがった。こうして「第二の校歌」づくりプロジェクトは生徒主体で始動した。夏休み中にGoogleフォームを活用して、歌詞作りを全校生徒に投げかけると約150名の生徒が応じた。これをもとに生徒会と音楽の教員が協働で歌詞を練り上げた。

 曲については将来作曲家を目指しているという生徒が曲の一部を作った。この生徒が作曲したものをベースに地元で音楽の仕事をしている玉村中の卒業生が曲として仕上げたそうだ。この「第二の校歌」は秋の合唱コンクール(玉陵祭)などの場で披露することを検討している。

 

非認知能力育成の鍵は「全校一体」の挑戦

 こうした学校活動は生徒にただ自由にやらせているわけではない。「生徒が活躍できる場を教員が意識的に設定し、裏側でサポートするしくみが必要」と吉田校長は話す。生徒、教員を巻き込んでトライアンドエラーを繰り返す中で、「自律」「つなぐ」「グリット」の3つの力が培われていく。非認知能力の育成の鍵は慣例や前例にとらわれずに全校が一体となって挑戦しようとする実践力にかかっているといえる。

【つづく】

(編集部)

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