フランスのモダングラフィックに迫る特別展、館林美術館で開催
群馬県立館林美術館は、4月26日から6月29日まで、特別展「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展 -20世紀初頭の風刺画からアール・デコ挿絵本、1930年代グラフィック雑誌まで」を開催する。フランスのモダングラフィックが生み出した多彩な表現を一堂に集めた本展は、時代とともに変遷するグラフィックデザインの魅力を体感できる貴重な機会となるだろう。
本展では、フランス文学者であり膨大な古書コレクターとして知られる鹿島茂氏のコレクションから、20世紀前半フランスの書籍や雑誌に掲載されたグラフィック・イラストレーションや写真図版を紹介し、時代を映す「モダン」の表現を探る。
20世紀初頭のフランスでは、風刺雑誌を中心に、ブルジョワ社会や政治の混乱を皮肉る新しい表現が登場した。若いイラストレーターたちは、モード(ファッション)や舞台芸術と結びつき、華やかな色彩表現を生み出し、フランス・モダンの開花を促した。
第一次世界大戦後には、細い線描や余白を活かしたイラストレーションが都市生活の躍動感を伝え、豪華な挿絵本や美術雑誌が多く出版された。また、1925年の現代装飾美術・産業美術国際博覧会の報告書などを通じて、アール・デコ様式の工芸や都市デザインが紹介された。
その後、写真や印刷技術の発展により、グラフィック表現の主流は次第に写真へと移行した。1920年代末には、グラフィック雑誌「アール・ゼ・メティエ・グラフィック」や写真報道雑誌「ヴュ」が登場し、モダンなタイポグラフィやエディトリアルデザインを確立した。
本展では、当時の敏腕編集者リュシアン・ヴォージェルや、時代の生活感覚を反映するデパートの出版物にも注目し、鹿島コレクションならではの視点から「モダン」の魅力を深掘りする。
開館時間は午前9時30分から午後5時(最終入館は午後4時30分)まで。休館日は基本月曜日だが、4月28日と5月5日は開館する。5月7日は休館となる。
観覧料は一般が830円、大高生は410円で、団体割引も適用される。中学生以下や障害者手帳等を持つ人とその介護者1名は無料となり、群馬県在住の65歳以上の人は平日のみ2割引の優待がある。
鹿島茂氏プロフィル
1949(昭和 24)年、横浜に生まれる。73 年東京大学仏文科卒業。78 年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。作家、フランス文学者、明治大学名誉教授。専門は、19世紀のフランスの社会生活と文学。91 年『馬車が買いたい』でサントリー学芸賞、96 年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞を受賞するなど、多くの受賞歴がある。膨大な稀覯書コレクションがあり、展覧会を多数開催。練馬区立美術館にて「グランヴィル展」(2011 年)、「バルビエ×ラブルール展」(2012 年)、「パリ、モダンの装い展」(2013 年)他、日比谷図書文化館にて「アール・デコの造本芸術」(2019年)、「『稀書探訪』の旅」(2022年)を開催。当館では「バルビエ×ラブルール展」(2013年)、「フランス絵本の世界展」(2017年)を開催している。
(館林美術館・提供資料から)
(編集部)