【特集】「1学期の中間テスト」、なぜ、廃止? 背景に変わる「学力観」
5月の連休明け、編集部に「1学期の中間テストがなくなっているが、これは先生にしかメリットがないのではないか」という声が寄せられた。「うちの学校、今年から1学期の中間テストがなくなったそうで、期末テスト1回勝負になるのが不安だ」――。桐生市内の公立中学校に子どもを通わせる別の保護者も、1学期の中間テスト廃止に戸惑いを見せる。
実はいま、全国的に1学期の中間テストを見直す動きが広がっている。群馬県も例外ではない。
■約8割が1学期の中間テスト廃止ー編集部の独自調査
みんなの学校新聞編集部が、複数の学習塾関係者(前橋市、太田市、桐生市、伊勢崎市、館林市、みどり市の10塾)を通じて調査したところ、群馬県内の国公私立中学校157校(2025年度学校基本調査)のうち、約4割にあたる67校(中等教育学校含む)の実施状況を確認できた。このうち約8割にあたる52校が、1学期の中間テストを実施していなかった。全学年で実施している学校は14校、中学2・3年のみ実施している学校は1校だった。
ただ、県の方針として中間テスト廃止を進めているわけではなく、「実施の有無は各学校長の判断に委ねられている」と県教委義務教育課では説明する。実際、今回の調査の内訳をみても、同じ市内であっても実施する学校と実施しない学校が混在していた。
■増加する教科書ページ数
1学期中間テスト廃止の背景の一つには、2017年告示の学習指導要領改訂に伴う学習内容の増加がある。教育情報サイト「リセマム」の調査によると、2018年度時点での中学1~3年の教科書ページ数(各社平均)は4,430ページだったが、中学校で完全実施になった2021年度以降、5,460ページ(2024年度)となり、約23%増加した。
限られた授業時数の中でカリキュラムを消化することが学校現場では求められている。1学期は修学旅行や部活動の大会など学校行事も多く、テスト日程の確保が難しくなっているのが実情だ。
部活動の大会でいえば、中体連の春季大会は20、21年度はコロナ禍で中止。以降、22、23年度は実施されたが、24年度からは廃止になった。1学期の大会は現状で夏季大会のみの実施となっている。ここ2年は、多くの競技でそれまで7月下旬の開催だったものが、7月上旬に前倒しになっている。大会時期の前倒しの理由について群馬県中学校体育連盟では「暑さ対策」を挙げる。
「夏の大会の時期と期末テストの実施時期が重なるため、期末テストの実施時期も動いた。そうなると、中間テスト自体実施する意義が薄れたのではないか」と推測する学習塾関係者もいた。
指導要領、学校行事や大会日程の変化によって、従来の年間スケジュール自体が成り立ちにくくなっている実態も浮かぶ。
■「点数だけで評価しない」ー 学力観そのものが変容している
一方で、県教委義務教育課は、中間テスト廃止の背景には「学力観の変化」もあると指摘する。
新学習指導要領では、「知識・技能」だけでなく、「主体的に学ぶ力」や「学びに向かう力」など、これからの社会で必要となる資質・能力を育てることが重視されるようになった。
保護者からは「中間テストがなくなった=期末テスト一発勝負になったのではないか」と懸念する声も上がるが、県教委は「(そうではなく)ペーパーテストの点数だけで評価する構造からの脱却が進んでいる」と説明する。
定期テストの点数だけで学力を測るのではなく、授業中の発言、レポート、ワークシート、提出物、単元ごとの確認テストなどを含め、生徒を多面的・総合的に評価する方向へ変わってきているという。「結果だけでなく、学びのプロセスそのものを見ていくことが大切になっている」と話す。
■「一夜漬け型」から日常学習へ
中間テストを廃止した学校では、多くが単元ごとの小テストなどを実施している。県教委は「一夜漬け型の学習から、日常的な学習習慣への転換を目指す流れがある」と説明する。
一方で、保護者の間では「定期テストが減ることで学力低下につながるのでは」と不安視する声も根強い。特に単元テストは授業進度に合わせて実施されるため、従来の定期テストのように範囲表や日程が共有されにくく、「(単元テストを)やっているかどうか分からない」との指摘もある。
だが、範囲の広い定期テストは、生徒にとって大きな精神的プレッシャーになりやすく、短期集中型の詰め込み学習になりやすい側面も否定できない。単元テストは挑戦の機会を複数設けやすく、「失敗しても次の単元で頑張ろうと気持ちを切り替えやすい」というメリットもあるという。教員側も単元テストの実施によって、生徒のつまずきを早期に把握しやすくなる。
昨年から1学期の中間テストを廃止した邑楽・大泉地区のある中学校では「各教科の進度がそれほど進んでいないことが多いため、試みに一斉テストではなく教科ごとの単元テストを実施することにした」という。中学校によると、来年以降、どうするかは未定で、現場での手探りの様子が垣間見える。
■教員の働き方改革の側面も
定期テストの実施は、問題作成から採点、成績処理まで教員の負担も少なくない。ただ、中間テストを見直すことは単純な負担軽減が目的ではなく、生まれた時間を教材研究や生徒一人ひとりへの個別支援に充てられる利点もある。
県教委は「子どもたちと向き合う時間が増えることで、結果的に教育の質の向上につながるのではないか」としている。
(編集部)
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