どう変わる? 日本の小・中学校の英語教育課程
いよいよ日本の英語教育が大きく変わる。実際の小学校・中学校の教育課程はどのように変わるのか。まとめてみた。
新学習指導要領2020年度から段階的に実施される。全面実施になるのは、小学校では2020年度から、中学校では2021年度からだ。これに対応するため、小学校では2年間、中学校では3年間の移行措置が設けられている。
今回の改訂の目玉の一つといえば、小学校英語の教科化(小学5・6年生)と英語活動(小学3・4年生)の導入だろう。高学年で教科化されることにより、国語や算数などの科目と同じように通知票の評価対象となる。学習する内容も中学内容が前倒しされる。中学年で導入される英語活動は高学年での英語学習の橋渡しになるように英語に親しむことに力点が置かれる。現行の高学年での英語活動が前倒しされるイメージだ。
文科省では2020年度の小学校の新指導要領移行に向け、来年度から全小学校で移行期間に入る(下図)。
文科省は移行措置期間中に必ず扱う事項として、小学3・4年生では、
❶ 英語の音声やリズムなどに慣れ親しむ。
❷ 日本語との違いを知り、言葉の面白さや豊かさに気づく。
❸ 聞くことおよび話すことの言語活動の一部。
の3点を挙げ、活動を通して、英語への慣れ親しみを図るとしている。内容的には現行高学年で取り扱ってきたものだ。
高学年の小学5・6年生では、現行の英語活動の規定事項に加え、
❶ 音声、活字体の大文字小文字の学習
❷ 文および文構造の一部の学習
❸ 読むことおよび書くことの言語活動の一部の学習
の3点を必ず取り扱う事項として挙げている。文および文構造の一部では「代名詞」、「動名詞」、「過去形」などの文法事項も取り扱うことになっている。
文科省によると、これらはあくまで下限規定で、これ以上の事項を学習してもかまわないとしている。
高学年の英語指導の大きなポイントは、「文字指導」が加わることだろう。文科省では、文字指導の目標として、大文字と小文字を「識別でき」「読め(発音でき)」「4線上にきちんと書ける」の3つを掲げている。
文字指導を取り入れた背景として、中学入学後、英語学習のつまずきのポイントとして、音と文字が一致しないという事情がある。また、単語と単語にスペースを空けて表記するスペーシングができない生徒もいる。こうした中学からの英語学習のつまづきを取り除くのが狙いだ。
現行の中学英語では、あまり手を付けられなかったこうした領域を、小学校の英語指導で引き受け、中学入学後の英語学習を円滑に行える素地をつくる役割を担っている。
中学校の新指導要領では、語彙数が現行の1,200語から1,600語~1,800語に大幅に増加する。指導内容的には、高校で習う「仮定法」や「現在完了進行形」、「感嘆文」などの単元も中学校に組み入れられる。
現在の小学5年生から移行期間に入り、いまの年長の世代からは完全に新課程に移行することになる。大学入試改革でも英語は大きく舵を切ることになるが、初等教育でも英語の指導が始まり、上からも下からも日本の英語教育制度が塗り替えられていく。
グローバル化、国際競争力をにらんだ制度改革が、どのような成果を上げていくのか。今後の成り行きが注目される。
(編集部=峯岸武司)