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2020年大学入試改革ー高校の現場は

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2020年大学入試改革ー高校の現場は

大学入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2015.11.24 

国の教育を担う文部科学省

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 馳文科大臣が先送りの可能性も示唆したことで、雲行き不透明になってきた大学入試改革。ただ「スケジュールありきでいいのか」とあくまで工程表に束縛されないという考えを示しただけで、改革そのものを白紙撤回したわけではない。大学入試改革自体は実施される見通しだ。

 馳大臣が時期の問題に触れた背景には、高校教育現場での混乱を避けるという狙いがある。埼玉県の公立高校で社会科を教える教師のHさん(41)は、みんなの学校新聞編集局の取材に対し、「新テストに対して、公立高校ではほぼ対応が取れていない」と話す。新テストがどのような形式になるのか、まだ公表されていない。工程表では「大学入学希望者学力評価テスト」のサンプル問題は2016年以降に発表されるとしている。プレテストの予定は翌17年だ。

 Hさんは「評価テスト」については、「現状の国公立二次を膨らませるイメージ」ではないかと推測するが、まだ読めない部分は多い。

 大学通信の安田賢治情報調査・編集部ゼネラルマネージャーは「評価テスト」について、「大学教育に必要な思考力、判断力、表現力を判定するテスト。当面は『教科型』『合教科・科目型』『総合型』を組み合わせて出題。やがては『教科型』の出題をなくす方向だ」と解説する。2020年に関しては「カリキュラムは変わらず、入試が変わる」ことになるいう。

 前出のHさんは「今回の改革で感じるのは、公立高校より中高一貫の私立の生徒の方が有利に働くのではないかという点だ」と指摘する。私立ならばカリキュラムを早めて、高校2年までに「高校基礎学力テスト」で高いスコアを獲得させ、高校3年で「どっぷり記述対策ができる」からだ。そもそも「基礎学力テスト」を高校2年から受験できることが、公立高校には不利に働くとみられる。

 群馬県内で学習塾を経営するAさんは「たとえば群馬県の進学校で行われている前期選抜の総合問題や、中央中等などの公立中高一貫校の入試問題が、『評価テスト』の目指す方向性と合致しているのではないか。そういう意味では、彼らは早い段階で”相似形”の問題を対策していることになる。特に公立中高一貫校の子はより有利になるのでは」と予想する。

 英語も外部テストでの評価が本格導入されれば、早い段階でTOEFLやTOEICなどの4技能重視の試験対策に力を入れてきた学校にはアドバンテージになる。

 いずれにしても、有利な高校と不利な高校が出てきてしまうのは当面避けられないかもしれない。「この改革自体が、高校の序列を変えてしまう可能性すら持っている」とAさんは指摘する。

 「(いろいろ混乱するとは思うが)知識理解ではなく、思考力を重視するという方向性自体は否定するものではない。自分は社会科の教員だが、(入試改革は)社会科教育の理念とも合致していると思う」とHさんは、その理念自体には賛同する。

 改革にはそれなりの混乱は避けて通れない。「新テスト」自体も問題内容や評価方法に不透明な部分が少なくない。「学校カリキュラム」による有利・不利が起こってしまう可能性もある。そのことが一層、高校現場の不安を増幅しているのではないか。

 現役・浪人、私立・公立、一貫校・普通高校といった生徒の属性による不公平感が制度移行期に出てきてしまうのはやむを得ない。しかし、国には不公平感の揺れを最小限にとどめ、できる限り公平性が担保された形での移行を期待したい。

(編集部=峯岸武司)

 

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