【インタビュー】山本知事が描く ぐんまの教育未来図(1)
2020年度は「教育改革の年」と呼ばれた。小学校の2020年度実施を皮切りに、小中高の新指導要領が導入され、学びに向かう力、人間性、知識及び技能、思考力・判断力・表現力の3つの力をバランスよく育成することを主眼に置いたカリキュラムに移行した。小学校では英語の教科化やプログラミング教育が導入され、大学入試ではセンター試験から共通テストに置き換わった。いずれもグローバル化、情報化の面での急速な社会の変化に対応した制度変更だ。
こうした国内の教育環境の大きなうねりの中で、群馬の子どもたちの未来の教育はどうなっていくのか。群馬県が描く教育の未来像を山本一太県知事に聞いた(全3回)。
群馬をクリエイティブの拠点に tsukurunはその一歩
――今年3月、前橋駅前にtsukurunができ、子供たちが身近にICTに触れることができるようになりました。
「tsukurun」(ツクルン)とは 自ら考え創作する活動を通し、新たな価値を生みながら活躍できる人材を育成するため、今年3月、アクエル前橋にオープンしたデジタルクリエイティブに特化した若者人材育成拠点。群馬県内の小中高生を主な対象としている。
【写真】tsukurunホームページから
知事 「前橋の駅ビルにオープンしたtsukurunは知事の大きな野望の第一歩です。(野望というのは)群馬県の近未来のビジョンの一つである『群馬県をクリエイティブの拠点にしたい』という大きな目標です」
――クリエイティブの拠点というと?
知事「クリエイティブの拠点にするということには二つの意味があります。一つは群馬県からクリエイティブ産業に関わるような人材をどんどん生み出したいという点です。(tsukurunの)施設にはプロが使うような機材があるから、子どもたちに楽しみながらクリエイティブな感覚を養ってもらいたい。群馬県在住の小中高生がここに来てプログラミングをやってみたり、アニメを作ってみたりとか・・・。そういうことを通じて、創作意欲をかきたてられ、未来のクリエイターを輩出できるような拠点にしていければと思っています」
――もう一つは何でしょう?
知事「もう一つは、群馬県以外にいる人たちが、『群馬県に来て、ものをつくりたい』という雰囲気を作っていきたいんですよね。群馬に行ったら面白いものが作れるとか。群馬には、映画の世界でも、アニメの世界でも有数のクリエイターがいるのに、みんな県外に出てしまう。それは発表の場がないからですよね。そういう意味でクリエイティブの拠点というのは、やや大げさに言うとハリウッド。ハリウッドってもともと砂漠だったけど、ものすごく気候がいいから映画を撮っていたわけじゃないですか。それが結果的にいまの映画の町になっていったわけですよね。将来的にはクリエイターを育てる、いろんなクリエイターを引きつけられるような、群馬県をそういう場所にしたい。tsukurunはその小さな第一歩だという認識です」
――昨日(3月24日)2ちゃんねる創設者のひろゆきさんと米イェール大学助教授の成田悠輔さんによる小中高生対象の特別授業がtsukurunで行われたと聞きました。
【画像】日経テレ東大学 YouTubeチャンネルから
3月24日、日経テレ東大学の「RE:HACK」(リハック)の企画で2チャンネル創設者のひろゆき氏と米国イェール大学で助教授を務める経済学者の成田悠輔氏が群馬の子供達からの質問なんでも答えてくれるという特別授業が行われた。この模様は日経テレ東大学(YouTubeチャンネル)で4月に配信予定。
知事「そうそう。普通できないよね。定員制で20人くらいが参加しました。成田先生も『(参加した子どもたちは)とっても素直ないい子たちだった』と言ってくれました。この売れっ子の二人が一緒になるって奇跡的なことなんだけど、彼らがtsukurunに来てくれたのは本当にうれしかった。新しい時代のコンセプトリーダーに入っている二人でしょ。こういうところから、いま群馬がおもしろいという認識がクリエイターの間で広がればと思っています。そして、tsukurunに来ていた子供たちから、ゲームを作る人とかアニメを作る人とか映画監督とか映像作家とか・・・そういう未来のクリエイターを輩出するような流れができたらワクワクしますよね」
――現状では前橋1拠点なので遠方の子は身近には利用できないのでは? 前橋以外に拠点を広げていく予定はありますか?
知事「まだ現時点ではハードの部分でほかの地域に広げていくことは考えてはいません。ハードとソフトの両側面から進めていきたいですね。まだまだ実験的な段階なので、まずtsukurunで大きな流れを作り出していき、新しい展開を考えていきたいと思っています。もちろん、その中で必要があれば(他に拠点を作ることなどに)予算をつけていきたいとは考えています」
(つづく)
(取材=峯岸武司/撮影=高橋洋成)