【インタビュー】山本知事が描く ぐんまの教育未来図(3:最終回)
2020年度は「教育改革の年」と呼ばれた。小学校の2020年度実施を皮切りに、小中高の新指導要領が導入され、学びに向かう力、人間性、知識及び技能、思考力・判断力・表現力の3つの力をバランスよく育成することを主眼に置いたカリキュラムに移行した。小学校では英語の教科化やプログラミング教育が導入され、大学入試ではセンター試験から共通テストに置き換わった。いずれもグローバル化、情報化の面での急速な社会の変化に対応した制度変更だ。
こうした国内の教育環境の大きなうねりの中で、群馬の子どもたちの未来の教育はどうなっていくのか。群馬県が描く教育の未来像を山本一太県知事に聞いた(全3回)。
SDGsの理念を踏まえつつも 丁寧に慎重に進めるー男女共学化
【写真】共学化に関して地域の実情と別学校の文化的側面の尊重も大切だと語る山本一太知事(県庁にて)
――県の「高校教育改革推進計画」でSDGsの観点から男女共学化の推進を掲げています。この共学化については例外なく進められるものでしょうか?
【画像】群馬県 「第2期高校教育改革推進計画」リーフレットより
知事「まず、ジェンダーの平等などいろいろなことを考え合わせると、共学化は時代の流れだと思います。群馬県の場合は、(全国的に見ても)男女別学の公立高校が多い地域です。公立高校の別学校が男子校、女子校含め現在12校あります(下記の全国の公立男女別学高校マップを参照)。
世界的な動きを見ても、大きな流れとしては共学化に行くんだと思います。だけど、共学化について言うと、丁寧にやりたいし、慎重にやらなければいけないと思っています。男子校の文化とか、女子校の文化とかそれぞれあるので、一律に一気に共学化してしまうといった乱暴で強引なやり方ではなくて、大きな時代の流れを踏まえつつも、地域の実情も考えながら進めていくという方向性です。柔軟に考えていきたいといったところでしょうか」
(みんなの学校新聞編集局作成)
――「柔軟に」とおっしゃいましたが、知事の考える統合・再編の大枠の方向性についてお聞かせください。
知事「人口が少なくなったりとか、過疎化が進行したりとかで定員が充足できなくてという流れで高校の統廃合や再編って話になるんだけど、統廃合や再編はあくまで手段じゃないですか。再編されたことで地域の人たちを引きつける魅力のある学校を創らなきゃいけないわけです。その地域の子供たちが外に出ていくよりは、地元の高校に行こうと思えるような形にしていきたい。人が少なくなってきたから統合するという既存の発想ではない視点から捉えていくことも大切だと思います」
――すでに男女別学校で共学になった事例もあります。
知事「昨年4月に桐生高校と桐生女子高校が統合されました。新設の桐生高校はとても評判がいいと聞いています。最近で言うと、沼田高校と沼田女子高校。こちらは昨年末に方向性が決まり、最終的に私が決断しましたが、この2校が再編されて共学校になります。これも、すでに効果がでていて、関心がかなり高まっていると聞いています。こういった先行事例でベストプラクティスを出していきながら、丁寧に進めていきたい。沼田高校と沼田女子高校の統合はその意味で試金石だと思うし、知事としてもしっかり後押ししていきたいと思っています」
(おわり)
(取材=峯岸武司/撮影=高橋洋成)