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「スタプラ」の積極活用で学習の個別最適化を図る農大二高の取り組み

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「スタプラ」の積極活用で学習の個別最適化を図る農大二高の取り組み

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2022.05.25 
tags:Studyplus, Studyplus for School, スタプラ, 学習管理 アプリ, 東京農業大学第二高等学校, 農大二高, 農大二高 スタディプラス, 農大二高 進学実績

紙の「学習記録」をデジタルに切り替え、より個別最適化された学習指導に取り組む農大二高

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 コロナ禍以後、学校現場でのICT活用が急速に進んでいる。学習管理アプリ「Studyplus」を取り入れ、学校全体の取り組みとして運用している東京農業大学第二高等学校(群馬県高崎市)は同アプリを積極的に活用している学校の一つだ。今年、運営会社主催の「Studyplus for School Award 2022」を受賞し、その取り組みが紹介された。農大二高がアプリを使ってどのような取り組みを行っているかを取材した。

 

 拡大する「教育デジタル市場」

 EdTech(教育とテクノロジーを融合させて新しいイノベーションを起こすビジネス領域)市場は右肩上がりに市場規模を拡大させ、野村総研の調査によれば、2022年には2888億円(前年比113%)を見込む。3000億円の大台の背中も見えてきた。

(出典:野村総研「ITナビゲーター2020年版」)

 

 2017年に政府が掲げた「Society5.0」を契機に、文科省の「GIGAスクール構想」など教育分野へのデジタル環境の整備が積極的に進められている。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大も教育デジタル市場には追い風になった。

 EdTechの受益者は学ぶ側(生徒)だけではない点も重要なポイントだ。教える側(先生)にも利益をもたらしてきている。

 教職員の厳しい労働条件が社会問題化している中、教員の働き方改革も声高に叫ばれるようになった。いかに業務を効率化し教員の負担を軽減するかも大きな課題になっている。慢性的な教員志望者の減少や教員不足が続けば、日本の教育の未来にも影響を及ぼしかねない。教育現場を魅力的で活気のある仕事にしていくことは急務でもある。EdTech市場が熱気を帯びているのは、このような背景も一因しているといえる。

 

 「学習記録」をデジタル化した先駆者「Studyplus」

 こうした中、学習管理プラットフォームとして急成長を遂げているのが「Studyplus」だ。

 「Studyplus」は日々の学習を記録することで、学習者本人の学習履歴が可視化でき、ユーザー同士シェアすることでお互いに励ましながら受験勉強に取り組める学習管理アプリとして開発された。2012年からサービスをスタートさせ、同サービスを運営しているスタディプラス株式会社(東京都千代田区)によれば、会員数は 700万人以上(2022年時点)、大学受験生の2人に1人が利用している。

 2016年には「Studyplus」のユーザーと学習塾の先生をつなぐ「Studyplus for School」をリリース。これによって学習塾が、通塾する生徒の自宅での学習をサポートすることが可能になった。さらに「Studyplus for School」のサービスは公教育の分野にも普及し、学校の先生が生徒の日々の学習状況を把握するツールとして活用されはじめている。現在では文科省の学習eポータル標準モデルにも対応している。

 5月17日、「Studyplus for School Award 2022」がオンラインで開催された。同サービスを有効活用している教育機関を表彰するイベントで、今年で5回目となる。この学校部門で 東京農業大学第二高等学校(群馬県高崎市)が表彰された。

 

 「学習記録」が伝統の農大二高、「Studyplus」と出会う

 農大二高は教育方針として「何事にも主体的に取り組める人材の育成」を掲げている。学習においてもただ授業を受けているだけでなく主体的に取り組める、つまり「自学」できる生徒を育てることに注力してきた。そのツールが「学習記録」をつける冊子だ。

 「生徒自身が記録をつけていくことで計画的に学習に取り組めますし、担任とのやりとりで生徒一人一人にきめ細かい学習サポートもできます」と同校の根岸秀典先生は説明する。

 ただ、このアナログの「学習記録」のやり取りは教員にとっての負担も少なくなかったそうだ。

 風向きが変わったのが2020年。新入生から段階的に「一人一台iPadを導入する」ことが決まったことが契機になった。それに併せて、「従来の『学習記録』をデジタル化し、紙のときよりもよいものにしたらどうか」という声があがった。 

 しかしながら、大規模な組織でやり方を変えるとすると、様々な意見が噴出し、決定までに時間がかかることが多い。農大二高の先生たちがICTツールの導入に前向きに向き合えたのはなぜか。

「すでに教職員がiPadを活用して業務の効率化を進めていたので、(ICTツールを受け入れる)下地があったんだと思います」と根岸先生。加えて、少子化が進行する中でより魅力ある学校づくりをしていかなければいけないという危機感もあったようだ。「(学校の学科を再編し)コース制を導入した辺りから、(校内の)意識が変わってきていると思います」。現場の先生の雰囲気の変化を根岸先生も感じている。

 従来の紙の「学習記録」は夏休みなどの長期休暇の間は生徒の学習状況が把握できず、冊子自体を生徒がなくしてしまうなどの欠点があった。また朝のSHRで回収してしまうと、生徒が自身の記録を見返す機会を損失することも課題だった。

 同校は「デジタル化」がその解決のカギになると判断した。

 「学習時間を把握するだけなら様々な(デジタル化の)方法があります。(数多くあるサービスの中で)Studyplusを導入したのは本校の今までの『学習記録』のやり方に近く、(このアプリの利用が)生徒自身のためになると判断したからです」と根岸先生。

 まずiPadが配布された当時の1年生から導入された。最初は「Studyplus」だけでスタートしたが、導入2年目からは「Studyplus for School」も追加した。

「実はStudyplus for Schoolでできることの多くは、Studyplusだけでもできるんです。ただ、教員が生徒一人一人の学習状況を把握しようとすると、ものすごく手間がかかり、面倒です。教員の負担が大きくなると、活用する先生としない先生の格差が大きくなり、(生徒の間で)『学習記録』が習慣化されず、結果的に生徒自身のためになりません」(根岸先生)

 すでに全学年で「Studyplus」は導入され、「学習記録」をつける取り組みは、全校の中で徹底されている。

 

Studyplus for School の管理画面(提供:スタディプラス株式会社 画面はサンプル)

管理画面では誰がどれくらい学習したかだけでなく、どのような教材に取り組んでいるかも可視化される。学習時間が少ない生徒を抽出して、教師がダイレクトにメッセージをいれることもできる。

※ サムネイルをタップ(クリック)すると画像を拡大できます。

 「Studyplus for School」の導入に生徒、先生の反応は?

 では、実際取り組んでいる側はどう受け止めているのか。

 Studyplusの導入は生徒からも評判は上々だ。根岸先生は何人かの生徒の声を紹介してくれた。

「やる気の出ないとき、友達のやっている様子を見て自分もやらなきゃと思えた」

「記録を見ることで『この教科に偏って勉強しすぎていた』などに気がつけた」

「他の学校の人たちがどんな参考書をつかっているのかを知ることができるのでよい」

 

 先生側にとっても紙の「学習記録」の時に比べ、大幅な業務効率化が進んだ。それだけでなく、デジタルだからこそのメリットも生み出している。

 根岸先生によれば、「今まで担任だけしか生徒個別の学習状況が把握できなかったが、学年主任など他の先生たちも個別の学習記録を共有できるようになった」そうだ。

 生徒や保護者の面談の時により具体的なアドバイスが可能になっただけでなく、日常の生徒との接し方にも変化のきざしが見られている。「生徒がStudyplusのコメント欄に書き込んだコメント見て、落ち込んだりモチベーションが落ちている生徒を早期に発見できるので、生徒対応しやすくなったという声もあがっている」(根岸先生)

 

 コース制導入以来、農大二高は大学進学の実績を着実に伸ばしてきている。

「個別指導体制を充実させ、高校2年段階からある程度進路への目標をしっかり持たせ、こまめに面談を行うなどして、大学受験へのモチベーションを維持できるようなフォロー体制ができあがったのも(実績に)貢献していると思う」と学校側は説明する。

 同校の個別フォロー体制に「Studyplus for School」が加わったことで、より個別最適化されたきめ細やかな進路指導が実現されていくにちがいない。

(編集部=峯岸武司)

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