どうなる 高校入試の追試実施
高校入試の際にインフルエンザなどで体調を崩した生徒が無理して受験することがないよう、文部科学省が全国の教育委員会などに追検査の実施などを求めていたことが分かった。
今回、このような形で通知が出された背景には、昨年2月に起きた母子心中事件があった。
事件は昨年2月18日、神奈川県相模原市で起こった。当時中3生だった少年が、高校受験がうまくいかなかったことを苦に自殺した。試験当日、少年はインフルエンザに罹患していたため、受験で十分力が発揮できなかったという。その後、母親も追って自殺を図り、痛ましい母子心中としてメディアに取り上げられた。
事件後、この件については国会でも取り上げられ、審議された。実際にこの質疑を行ったのは浮島智子議員(公明党)。浮島議員は昨年3月の衆院文部科学委員会で「(相模原の事件を受けて)高等学校の入学者選抜の際の対応を、都道府県だけでなく文部科学省においても検討する必要性がある」(文部科学委員会ニュース)と文科大臣に見解を求めた。
それを受けて、文科省は昨年の5月~6月にかけて66都道府県市を対象に実態調査に乗り出す。調査の結果、現在の対応が十分なものとはいえないと判断、昨年10月14 日に全国の教育委員会などにあてて通知を出した。
現状、インフルエンザなどに罹患した場合、試験の同一日に別室での受験で対応するケースが多い。文科省が行った調査では、66都道府県市のうち64都道府県市で同様の対応をしていることが明らかになった。
群馬県では、前期選抜・後期選抜で同一校を複数回受験できることになっている。その意味で、別の機会が保障されているともいえる。万が一、後期選抜の検査日にインフルエンザなどに罹患してしまった場合には、「(後期選抜の検査の同一日に)保健室などでの別室受験で対応している」と県教委は説明する。
インフルエンザにかかり、後期選抜で別室での受験を経験したことのある伊勢崎市内の男性(23)は「正直、のぼせたような状態できつかった。その日しか受験できないと聞いて受験したけど、別日の追試験とかあったほうがいいと思った」と受験当時を振り返る。
では、高校入試に追検査を設けられないものなのか。
文科省の調査に対し、別日での追検査を実施していない自治体の多くが「日程的な余裕がなく実施が困難」(43%)、「試験当日の別室受験で受験機会が確保できる」「本検査と追試の難易度に違いが生じ、公平性の確保が難しい」(22%)とその理由を挙げる。
公立高入試を行う66都道府県市のうち、別日程で追試などを実施するのはわずか11府県市にとどまる。これらの自治体では独自の追検査を実施したり、2次募集と同じ日程や問題で追検査を行ったりしている。
今回出された文科省の通知は、先行する自治体の取り組みを参考に他の自治体にもインフルエンザなどに罹患した受験生に対して、追検査などの受験機会を確保するよう特段の配慮を求めたものだ。
この通知を受けて、各教育委員会がどのような対応をしていくのか、今後の対応が注目される。
(取材 編集部=峯岸 武司)