【シリーズ】校長に聞く(第4回) 県立伊勢崎高校 高橋みゆき校長(前編)
県立伊勢崎高校は自ら考え、判断し、行動できる生徒の育成を図るモデル実践校として、県教委から「SAH(スチューデント・エージェンシー・ハイスクール)」の指定を受けています。県内外の高校と一緒に探究に取り組むなど、活動の幅を広げ、個性ある学校づくりを進めています。高橋みゆき校長に「伊勢崎高校はどんな学校を目指しているのか」を軸にインタビューしました。
【写真】伊勢崎高校の高橋みゆき校長(同校・校長室で)
――伊勢崎高校は自ら考え、判断し、行動できる生徒の育成を図るモデル実践校として、県教委から「SAH(スチューデント・エージェンシー・ハイスクール)」の指定を受けています。
「昨年はSAHの協力校でした。今年から指定校になりましたが、特に変わったっていうことはなくて、昨年度の取り組みを発展させた感じです。本校のSAHは『探究』が核になっていて、探究を手段としてエージェンシー(注)を発揮しようと活動しています」
(注)変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力
――探究に力を入れているんですね。
「昨年度は『伊高の探究が学びを変える』。これをキャッチコピーとして、『教わる』ではなくて、生徒が『自分で学ぶ学びに変えよう』と動いてきました。自ら課題を見つけて解決策を模索していく学びを積極的に取り入れました」
――8月の探究発表会「iTanQ X(クロス)」には他校の生徒も参加していましたが。
「昨年、伊高の探究をリニューアルして、iTanQと名付け、より課題解決的にしました。その際にいろんな学校にも参加してもらうスタイルにしました。東京大学名誉教授の上野千鶴子先生のゼミは今年からですが、昨年12月開催の第2回iTanQクロスでも上野先生には講演をやって頂きました」
【写真】境総合文化センターで開催された「iTanQ X(クロス)」
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――上野先生はどういった経緯で関わることになったんですか?
「上野先生とは6年前から知り合いになりまして。それから毎年、お世話になっています。当時、館林女子高校の教頭をやっていたんですけど、『女の子だからこうでいいや』っていうような意識が生徒にあって、生徒が大きく成長していくことを妨げてるんじゃないかなっていうのを課題に感じていた頃でした。そんな折、上野先生の東大入学式の祝辞を聞いたんです。この話を生徒に聞かせたいと思い、ダメ元でメールしたら、何と『面白いからやりましょう』とお返事をいただきました」
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――そういうご縁だったんですね。
「その年の10月に館林の市民文化会館で先生の講演会をやりまして、会場がいっぱいになるくらい人が集まりました。前任校の大間々高校でも生徒とズームで上野先生と話をしたり、講演をやっていただいたり。ずっとお世話になっています」
――先生は伊勢崎高校をどんな学校にしたいと思っていますか?
「外に出て、いろんな人と出会う体験は考え方や価値観を変えてくれます。自分を成長させたいと思ったら、人と出会うことが大切だと思うんです。だから、生徒にはどんどん外に出ていかないとダメだっていうことを言っています。総合的な探求の時間としてiTanQがありますが、もっとやりたいって言う生徒のためにスタディーツアーなど様々な場を設けています。今年の夏休みは社会課題を感じてもらおうと日本一高齢化が進んでいる南牧村にスタディーツアーとして行きました。大学の訪問にしても、以前は長期休みに行っていたのですが、大学生と一緒に過ごして大学の日常を感じられるように、公欠にして平日に行ってもらうことにしました。探究発表の場「iTanQ X(クロス)」も上野ゼミも全員対象の希望制です。希望すればもっとできるという体制を整えています。生徒全員がエージェンシーを発揮できる学校になるといいなと思っています」
――取り組みの中で変化は感じていますか。
「スタディーツアーに参加する生徒も増えています。今年の1年生には入学前からもうやりたいと思って入ってきている子もいます。そういう生徒がいることによって、良い意味で他の生徒に波及していきますよね」【つづく】
(聞き手・峯岸武司)