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OECD生徒教師サミットの参加が自分の糧に 主体性身についた 伊勢崎高校の参加した生徒に聞く

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OECD生徒教師サミットの参加が自分の糧に 主体性身についた 伊勢崎高校の参加した生徒に聞く

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2025.04.03 
tags:iTanQ"X" 伊勢崎高校, OECD 群馬, OECD 非認知能力, 上野千鶴子 東大, 伊勢崎高校, 伊高 SAH, 伊高 探究

伊勢崎高校で行われたiTanQ"X"(クロス)でOECDの生徒教師サミットに参加した生徒3人は経験をもとに発表した(3月29日、伊勢崎高校で)

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 3月29日、伊勢崎高校で行われたiTanQ”X”(クロス)。第二部の講演会の中で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏は、自分にとって当たり前の領域をどんどん減らして、疎遠な領域を増やしていくことが探究だと定義した上で、「手間暇かかるが、外国へ行けば簡単にその環境は手に入る」と一例を挙げた。異なるシステムに足をかけて、その落差が大きいほど、「はて?」「どうして?」という疑問がたくさん生まれる。そこが学びの起点だと語った。昨年12月、伊勢崎高校の生徒は、その「落差」を体験する貴重な機会を持つことができた。

 

OECDと群馬県の縁で「生徒教師サミット」に参加
 群馬県では県内すべての高校が全国で唯一OECD(経済開発協力機構)の社会情動的スキル調査(SSES)に参加している。非認知能力の向上に積極的な県の取り組みがOECDから評価され、昨年10月には「2030年の教育と技能の未来に向けたグローバルフォーラム」の開催会場の一つに群馬県が選ばれた。
 こうした一連の流れの中で、昨年12月9日から11日にパリのOECD本部で開催された「生徒教師サミット」に群馬県の学校も招かれ、伊勢崎高校の生徒たちが派遣された。
 同サミットはOECD「Education2030」の取り組みの一つに位置づけられ、日本からは12校、約60名の生徒・教師が出席した。オンラインを含めると18カ国、約500人が参加する大規模なイベントになった。サミットでは生徒と教師が、異なる視点を持ち寄り、対等な立場で対話を行い、「Well-being(幸福)あふれる学校」に向けて話し合いが行われた。

 

【写真】伊勢崎高校で行われたiTanQ”X”(クロス)でOECDの生徒教師サミットについて報告する生徒

 

【写真】OECDの生徒教師サミットに参加した島田さん、大籏さん、原田さんと3人の友人のニキルさん

 

初日は絶望、涙しかない

 このサミットに参加した伊勢崎高校2年(当時)の原田志帆さんは同校のグローバルコミュニケーション科(GC科)で学んでいる。「GC科にいるからには国際交流して外国の人たちと関わってみたい」と手を挙げた。普通科(理系)2年(当時)の島田空跳さんは英語が得意科目。「外国の人の意見や見方を知りたい」というのが参加した理由だ。
 ある程度英語には自信を持って参加した島田さんだったが、言葉やコミュニケーションの壁にぶち当たり初日から自信喪失してしまったそうだ。「1日目の夜は泣きました」と島田さんは笑う。同校GC科2年(当時)の大籏こころさんも発表がうまくいかず、「悔し泣きした」と振り返る。
 一方、同じ東アジアの中国や台湾の生徒たちが堂々と英語でコミュニケーションを取っている様子を目の当たりにした。
「彼らの英語は決して正確ではなかったけれど、自信をもって話すんです。自分は奇麗な英語を話さなければという気持ちが邪魔をしていたかもしれません」と島田さん。そのことに気づき、単語だけでもいいから話してみようという意識に変化していったと3人は口を揃える。

 

勇気を出して手を挙げてみた

 3日目のディスカッションの日。日本人の入る隙がないくらいに速いテンポで会話が進んでいき、「日本人(の生徒)は『今、何言っている? 何言ってる?』みたいになって、日本人同士でまとまっちゃってみたいな雰囲気がありましたね」と原田さん。そんな中で、なんとか参加したいという思いで島田さんは「今何の話してる?」と思いきって英語で隣の人に話しかけたという。ところが、「自分の話す速さの倍くらいのスピードで返事が返ってきて、それも聞き取れないんです」。相手が説明してくれているのに理解できない悔しさを抱えながらも、加わりたいという思いはあった。議論のテーマは決まっていたので、自分の意見をまとめ、手を挙げた。
「話すスピードは遅いし、(英語が)合ってるのかなと不安になったり、怖かった」と発言したときの心境を打ち明けてくれた。でも、発言した後は「みんなが褒めてくれて、それが嬉しかったですね」と島田さん。

 

帰国後、成長を実感
 帰国後、コミュニケーションに対する意識が明らかに変わったと原田さんと大籏さんは話す。
 GC科で行われている英語だけの授業で、先生から「どう思う?」と質問されたら、以前より抵抗なく自分の意見が言えるようになったそうだ。
「自分の中で英語を使うことの難易度が下がったよね」と原田さんが大籏さんに投げかけると、「そう思います。海外で主体性が学べました」と大籏さんは同意した。
 島田さんも「行ってから自主性がものすごく高まったと思う」と話す。授業中、積極的に質問したり発表するようになったそうだ。

 

五感を使って社会を知ろう
 探究部長の山口将史教諭は同校の探究のコンセプトの一つに「五感を使って社会を知ること」を挙げる。机上の知識ではなく、「においや手触りなど現場でしか体感できないものを大切にしてほしい」と考えている。

 海外にホームステイし、外国人と話せず悔しい思いをしたというストーリーは高校入試の英語の長文では定番だ。彼ら3人の経験は、活字にしてしまえば、その英語の長文と同じような内容だ。だが、彼らが涙し、悔しさを感じ、そして勇気を出してコミュニケーションしようとした体験は、五感を総動員した点で長文問題とは大きく異なる。感情を伴う体験が間違いなく彼らを成長へと導いている。

(編集部)

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